トヨタがアニメのコスプレで人工知能のベンチャー投資って、いったいなに?
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
いきなり登場したアニメ理論
米アニメキャラの「TheThing」が自動車研究開発の実情。そこに、ロサンゼルスで開催されるアニメ・エキスポでコスプレに興じる人々が融合。その結果は、スーパーマンになる___。
日本で新型カムリが発表された2日後、アメリカ西海岸時間の7月11日。サンフランシスコで注目の講演があった。
壇上には、ギル・プラット氏。米名門のMIT(マサチューセッツ工科大学)のロボット工学の研究者から、DARPA(米国防総省・先進研究企画局)で災害ロボットのコンテストのプロジェクトマネージャーを経て、2015年後半にトヨタに移籍。2016年1月に設立された、TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の初代社長に就任した。
TRIは、AI(人工知能)など、次世代の自動車産業との関わりを持つ先端技術について、基礎研究を行う機関。米西海岸にはスタンフォード大学の近く、米東海岸ではハーバード大学とMITとの近く、そして自動車メーカー各社が量産車の研究開発を置くデトロイト近郊のミシガン大学の近くにTRIの拠点があり、2017年7月時点で総勢約200人のスタッフを抱えている。
今回の講演は、AUVSIオートメイテッド・ヴィークル・シンポジウム2017での基調講演だ。AUVSIは、米政権によるTRB(米国交通運輸調査委員会)が主体である団体で、自動運転や自動飛行など、移動体の自動化について産学官の関係者が議論する場である。
今年で6回目となった同シンポジウムには世界中から1400人が集まり、プラット氏の講演に聞き入った。そこで登場したのが、アメコミだった。
”カイゼン”のためには、新しい仲間がすぐに必要
では、プラット氏がアメコミを使って説明をしたかったこととは、いったい何か?
それは、斬新なアイディアを持つ”新しい仲間”を見つける、ということ。具体的には、ベンチャーキャピタルとしての投資ファンドとして、TRIの完全子会社・トヨタAIベンチャーを設立した。トヨタ本社でも、新規事業開発として様々なベンチャー企業への投資を行っているが、トヨタグループとしてベンチャーキャピタルを内製化したのは、今回が初めてだ。
投資規模は1億ドル(約113億円)。これを単純に比較すると、TRIが2016年1月から10年間に渡る予算である10億ドルの1割に相当する金額だ。主な投資対象は、データ/クラウド、マシーンラーニングなどのAI、ロボティクス、またMaas(モビリティ・アズ・ア・サービス/新しいモビリティビジネス)。
今回の発表を受けて、アメリカ、イギリス、そしてイスラエルのベンチャー企業への投資を決めている。
【関連記事:米Toyota Research Institute、ベンチャー投資を行うベンチャーキャピタルファンドを設立】
また、プラット氏は講演のなかで、”カイゼン(改善)”という言葉を何度も発した。そして、カイゼンのためには、市場や社会環境の変化を先読みして研究開発にあたる必要があるが、自動運転などの分野では、現在のトヨタのリソースだけでは対応しきれない場合があると説明。こうした状況は他の自動車メーカーも同様に直面しており、その結果として、2015年~2016年には大きな動きがあった。
フォードがARGOなどに1920億円、GMがクルーズオートメーションやライドシェアリング大手のLyftに1700億円、ホンダがシンガポールのライドシェアリング大手のGRABに850億円、そしてダイムラー・BMW・アウディが地図情報サービスのHereを3500億円で買収するなど、自動車産業界による大型投資が続いている現状も紹介した。
こうした数千億円規模の超大型投資と比べると、今回トヨタが発表した100億円規模の投資額はかなり小さく感じてしまう。
ディシションメイキングに新しい手法
プラット氏の講演後、別室で行われた10人程度の米国人記者とTRIとのラウンドテーブルミーティングに筆者も出席した。
そこでTRI側は、1億ドルの投資の使い道について、投資をいつまでに何社に対して行うかといった目標は現在立てておらず、何事にも臨機応変で行う。また、投資ラウンドとして初期段階であり、投資金額が比較的少ないシリーズAなどを主体とすると説明。
そして、投資後にIPO(株式公開)といった”エクジット(出口戦略)”については、一般的に考えると5年程度という考えを示した。 投資対象を見つける方法としては、有望な企業を集めてプレゼンテーションしてもらい、そこからふるいにかける方法に加えて、トヨタ側から積極的にリサーチした上で相手に直接コンタクトする一本釣りも行う。
その上で、最も重要なことは投資を決めるまでの時間だ。トヨタ本社の財務責任者も直接関わることで、かなり早い対応が可能になるという。
なお、投資企業のある地域は限定していないということで、日本からのトヨタAIベンチャーへ直接オファーすることも可能である。
[Text:桃田健史]
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