トヨタ ハリアーハイブリッド & クルーガーハイブリッド 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:松下宏
世界のトヨタが送り出すハブリッドSUV
ハイブリッドカーで世界をリードするトヨタが、SUVのハリアーとクルーガーにハイブリッドカーを設定した。セダンのプリウス、ミニバンのエスティマとアルファードに続き、SUVにもハイブリッドカーが設定されたことで、ハイブリッド技術がどんなタイプのクルマにも適用できることを証明したともいえる。
ハリアーはアメリカで人気のSUVだが、アメリカではハイブリッドカーもプリウスが大人気を博しており、人気者同士の組み合わせとなる。発売前から大量の受注が殺到したために、混乱を避けて発売を延期したというのもうなづける。
ハリアーとクルーガーのハイブリッドカーには、標準車に比べて排気量アップされた3.3LのV型6気筒エンジンを搭載した上で、前輪用のモーターと後輪用のモーターを搭載している。システムとして発生できるパワーは200kW(272ps)で、5LのV型8気筒にも相当するパワフルな走りを実現する。単にエコ性能を高めただけのハイブリッドではなく、走りの性能も高めたのが今回のモデルの特徴だ。
THS-IIは従来よりも高い650Vのシステムを採用
ハリアー/クルーガーとも、既存車に対してハイブリッド技術を追加したため、内外装などは基本的に従来のモデルを踏襲している。特に外装についてはハイブリッドカーらしいエンブレムが装着されるほか、グリルとランプ回りのデザインを多少変更した程度。ハイブリッドカーとしての存在感は表現されるが、比較的小幅な変更にとどめられている。
インテリアではメーター回りの変更がポイントで、タコメーターを廃止してパワーメーターを備えたのが大きな特徴。ハイブリッドカーならではの仕様だ。装備関係はハリアーのほうがやや充実したものが用意され、スマートエントリー&スタートシステムなどが標準で装備される。
ハイブリッドシステムそのものは、THS-Ⅱを採用する点ではプリウスと同じで、後輪用のモーターによってE-FOURとした点ではエスティマなどと同じだが、昇圧回路を設けて従来よりも高い650Vのシステムとしたほか、リダクションギアを設定したことなどが特徴。これによって軽量コンパクトで高出力を発生するシステムになった。またクルマの挙動を安定させるVDIMもエスティマハイブリッドに続いて採用されている。
重量を感じさせない崩壊な走りを実現
軽量コンパクトなハイブリッドシステムを作ったとはいえ、モーターが追加されることなどによって車両重量はベース車に対してざっと200kgくらい重くなっている。ともに2t級の重量ボディとなったが、ハリアーとクルーガーのハイブリッドはこれまでにないような豪快な走りを実現する。
3.3Lエンジンが155kW、フロントモーターが123kW、リヤモーターが50kWと、単純に合計すれば300kW以上(400ps以上)の動力性能を持つ。システムとして発生できるのは前述のように200kWにとどまるが、それでも圧倒的な動力性能であるのは確かで、豪快な加速フィールを味わわせてくれる。5LのV型8気筒エンジンにも匹敵する動力性能であると言うのも素直にうなづける実力だ。特に発進直後からモーターのトルクが直線的に立ち上がるので、気持ち良い加速フィールが味わえる。
クルーガーでは17インチタイヤが標準で、ハリアーは17インチもあるが18インチタイヤの装着車を中心としたラインナップとなる。操縦安定性に関してはVDIMが自然な働きを見せることもあってどちらも変わらない高い水準にあるが、乗り心地も含めた総合的な足回りの実力では、モデルの新しいハリアーのほうが上回っている印象だ。
走りも燃費も高水準のハイブリッドシナジードライブ
これだけ鋭い走りを実現しながら、燃費性能は17.8km/Lというからカローラ並みの水準に達している。ハイブリッドカーでは走りの良いクルマを作ると燃費も良くなる。従来の常識とは異なる新しい次元が切り開かれるのだ。単なるエコにどどまらない新しい魅力を実現したのがハイブリッドシナジードライブである。
ただし、価格はベースのガソリン車に比べると大幅に上昇している。クルーガーでも60万円くらい、ハリアーでは装備の違いもあって80万円くらい高くなる計算だ。最新のハイブリッドシステムの魅力とそれが発生する圧倒的な動力性能を考えたら、決して割高なクルマではないのだが、絶対的な価格帯が大幅に高くなったのは確か。それを踏まえて購入作戦を考える必要がある。
低公害車に対してはいろいろな補助金などが用意されているので、その適用が受けられるかどうかを検討するのを忘れないように。補助金の有無によって買い得感が大きく変わるからだ。ハリアーとクルーガーを比較すると、モデルの新しいハリアーのほうが魅力的なの印象。価格も高くなるのだが、それでもハリアーが優位に立つ。装備の充実度も高いLパッケージ装着車を選ぶといいだろう。
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