「これが、あの ”食パン”!?」セダン離れの危機感が動かした、トヨタ新型カムリ大刷新の理由

「これが、あの ”食パン”!?」セダン離れの危機感が動かした、トヨタ新型カムリ大刷新の理由
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”バニラアイス”や”食パン”と呼ばれるカムリが大変身!

トヨタ 新型カムリ(日本仕様)

「これが、あのカムリ!?」

2017年1月の北米国際自動車ショー(通称:デトロイトショー)に登場した際、世界各国のメディアが目を丸くした、トヨタ新型カムリ。

なぜなら、BMWやアウディがガチンコライバル、といえるような超スポーティセダンとして生まれ変わったような風貌だったからだ。特にアメリカ人たちは新型カムリの大変貌に心底驚いた。なぜなら、アメリカでカムリは「食パン」とか「バニラアイス」と呼ばれる、”超安全パイなクルマ”だったからだ。

筆者はこれまでアメリカでいろいろな新車を日頃の足として購入してきたが、当然、カムリを購入しようかと迷ったこともある。結果、カムリとは別のトヨタ車やアメ車などを購入してきた。その迷いとは、超安全パイを購入することで安堵してしまう自分に対する抵抗だった。

換言すれば、アメリカで車を購入する際、新車であれ中古車であれ、「いろいろ悩むのは面倒だから、とりあえずカムリを買っておけば問題ないでしょ」という感覚の人が極めて多い。

その結果、アメリカでのC/Dセグメントと呼ばれる中型セダン部門でカムリは、15年連続の販売台数第一位。2016年は38万8000台を達成した。

カムリが販売されている世界約100カ国での仕向け地(販売先)で見ると、第二位の中国(約10万5000台)、第三位の中東(約5万5000台)、第四位のオーストラリア(約3万台)、そして第五位のロシア(約2万8000台)と比べて群を抜いてアメリカでの販売が多い。

これらカムリが強い国々でいま起こっているのが、セダンからSUV、またはクロスオーバーへの市場の移行だ。

だからこそカムリはいま、大きく変わる必要があった。”超安全パイ”や”生活必需品”としてのコモディティというイメージを刷新する必要があったのだ。

>>新型カムリ、何がどう変わったのか? 詳細を写真でチェック(画像21枚)

車体の刷新はクルマが大きく変わる時

トヨタ 新型カムリ(日本仕様)

車体、またはプラットフォームと呼ばれる車の骨格が十数年に一度、大きく変わる時がある。トヨタの場合、それがTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)だ。

なぜ、滅多に車体の設計が変わらないかといえば、それはコストの問題である。新しい車体の開発には数百億円の投資が必要であり、さらにそれに合わせて生産設備や生産工程を大幅に見直す必要が出てくる。

カムリの場合、世界約100カ国で販売しているのだから、生産も日本、アメリカ、中国、ロシア、タイなどで完成車としての生産、または部品として輸出して現地で最終組立を行うKD生産を行うため、カムリのTNGA導入によるコストは人件費などを加味すれば1000億円の大台を超えてしまうことだろう。

また、車体の変更に伴い、サスペンションなど付随する全ての部品が新しく設計される。そのため、部品を供給するサプライヤーとしても作業工程が増えてコスト高となるが、それはすなわち次に繋がる大きなビジネスとなる。

こうして、車体が変わり、サスが変わり、そしてパワートレイン(エンジン)の熟成が進んだ結果、新型カムリの走り味は当然、大きく変わった。

今回、新型カムリのメディア試乗会が開催されたのは、千葉県の房総半島。ワインディングを行くカムリは、明らかにワクワクドキドキな車に変身していた。

2017年1月のデトロイトショー、世界初披露の壇上で、世界中のメディアに囲まれたトヨタ関係者らは口々に「見た目もカッコいいですが、走りもカッコいいです」と言っていた。

カムリに対するアメリカと日本との見方の違い

トヨタ 新型カムリ(日本仕様)

ただし、新型になったとしても、やはりアメリカ人と日本人ではカムリに対する見方は違う。それは車格だ。言い換えれば、価格である。

日本でのカムリは、モデルラインアップ最上位となる2.5リッターハイブリッド車のみの販売。価格はベースモデルのXが329万4000円、そしてGレザーパッケージが419万5800円と400万円越えだ。

一方、すでに新型の販売が始まっているアメリカの場合、パワートレインは2.5リッター、3.5リッターV6、そして2.5リッターハイブリッドの3種類あるが、圧倒的に2.5リッターが売れている。2.5リッターのベースモデルが価格は、2万4000ドル(約270万円)だ。

日本ではいまのところ、2.5リッターの販売計画はなく、カムリは高級セダンという位置付けだ。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

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