トヨタ bB 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:島村栄二
イマの若者が求めるもの
ヴィッツをベースに開発された初代bBは、ちょっと悪っぽいイメージの外観デザインなどによって若いユーザーを中心に人気を集めたコンパクトワゴン。意外にも年配のユーザーが案外多く、手頃で扱いやすいサイズのボディと広い室内、200万円以下の価格帯などが支持されていたという。
そのbBが2005年12月に6年振りのフルモデルチェンジを受け、大きく変わった部分と従来からのイメージを継承した部分のある新しいモデルに切り替わった。
新しいbBは基本プラットホームをヴィッツベースからパッソベースに変更したのがひとつのポイント。これに伴って、ボディサイズはやや小さくなり、室内空間も従来のような際立った広さではなくなった。
逆に若いユーザーのライフスタイルを意識して、音と光とまったりシートを開発コンセプトに掲げている。エンジンや走りなど、クルマそのものとなる部分を強調するのではなく、クルマに付加される機能の部分を強調している点が目新しい。今の若いユーザーがクルマに対して性能の高さを求めるのではなく、自分にとっての使いやすさなど機能を重視するようになっていることに対応したものだ。
さらに徹底して悪を表現したデザイン
新型bBのエクステリアデザインは従来の悪っぽいイメージからさらに徹底して悪を表現した印象。オートサロンの出品車とまでは言わないが、それに近いくらいのクルマをメーカーが提示してきた。ここまで徹底すると、さすがに従来からの年配のユーザーはちょっと無理。割り切って若いユーザーだけを対象に考えたクルマと思っていい。
インテリア回りのデザインも段差のあるインパネの形状など、外観デザインにつながるような部分を持つ。カーナビやオーディオのパネル部分を除くとブラックで統一されたインテリアのカラーリングも印象的だ。
注目はQバージョンに設定される9スピーカー。音楽にこだわる若いユーザーを意識した設定で、スピーカー内にはリング状の照明が入っていて、音楽の演奏に合わせて点灯したり、点滅したりするモードを選択できる。
もうひとつのウリであるまったりシートは、リクライニングしたシートがダイブダウンして沈み込む形になるもの。左右のクルマから見えない高さに隠れてくつろぐことのできる変わった感覚のシートだ。やや残念なのは、そのシートの操作性が良くないことだ。
搭載エンジンは1.3Lと1.5Lの2種類
bBの搭載エンジンは1.3Lと1.5Lで、それぞれ68kWと80kWの動力性能を発生し、数値的にはまずまずの性能ながら、走りに関してははっきり言って特筆すべきところがほとんどない。吹き上がりは悪くはないが軽快というほどではないし、回転の上昇に連れて盛り上がっていくパワー感も平凡な印象だ。
電子制御4速ATの変速フィールはそれなりにスムーズなものだが、最近のコンパクトカーでは無段変速のCVT採用車が増えていることを考えると、これまた際立って良いというほどではないのだ。
足回りも妙に柔らかくて安定感に欠ける印象があり、特に1.3L車の足回りはカーブを曲がるときの落ち着きが足りない感じ。1.3L車で試乗したのはX バージョンだったので、1.5L車で標準となる15インチタイヤ+アルミホイールを履いていたが、1.5L車の足とは違った印象を受けた。パワーステアリングのフィールももう少し手応えが欲しい感じで、シャシー系の性能も平凡な印象だった。
bBらしさは9スピーカーを用意したモデル
bBを買うなら1.5Z Qバージョンしかない。というか、bBのウリである9スピーカーが用意されているのはこのモデルだけで、ほかのグレードは6スピーカーや4スピーカーの設定でスピーカー数が少なくなり、オプションで純正の9スピーカーにすることもできないから、bBらしい特徴的な装備が得られない。照明の入った9スピーカーを強調するなら、ほかのグレードでもオプションで選択できるようにしたほうが良いと思う。逆にまったりシートは全車に標準で装備されている。
1.5Z Qバージョンの価格は170万円ほどで、1.5L車として考えるとちょっと高め。これに27万円ほどのHDDナビゲーションと安全装備のVSC&TRCを装着すると、ここまでで車両価格が200万円を超えてしまう。諸費用を含めると230万円ほどの買い物になる。9スピーカーとまったりシートなど、それなりに魅力的な仕様を備えたモデルながら、魅力的なbBを手に入れるにはそれなりの予算が必要である。
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