スズキ 新型軽自動車 スペーシア(2013年・パレット後継モデル)新型車解説/渡辺陽一郎 -ワゴンRを超える低燃費29.0km/Lを達成!-(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
クラス最長の室内長を誇る「スズキ スペーシア」
新型スペーシアの車内を見ると、インパネの周辺はパレットよりもスッキリした印象。
立体感が薄れたともいえるが、インパネの上面は15mm低く抑え、オーディオの操作パネルは50mm前進させた。居住空間に向けたスイッチ類の張り出しを抑え、広々感を演出している。その結果、室内長の数値は145mm拡大して2,215mmとクラス最長だ。
注意したいのは室内長の測り方。インパネが手前に張り出した部分からリアシート後端までの数値だから、必ずしも居住性を反映させていない。パレットに対して室内長が145mm伸びても、前後シートの間隔は同じ。
前後に座る乗員の間隔は1,025mmで、N BOXやタントと比較すると100mm以上短い。それでも足を組めるほどの広さがあるから、実用的には十分だ。スライドドアの開口部分も基本的には同じで、左右方向の開口幅は580mm。パレットの640mmを下まわるが、乗降性に支障をきたすほどではない。
シートアレンジもパレットを踏襲したが、使い勝手は向上させた。
荷室を拡大する時は、リアシートのバックレストを前に倒し、シート全体を前方に寄せれば、床面へ落とし込むように畳める。2名乗車時には車内の後部がボックス状の広い荷室になり、自転車などを積みやすい。
折り畳み、前後スライドとも左右席が独立していることもメリット。
リア側にチャイルドシートを装着した時には、前に寄せると信号待ちの時などに子供のケアをしやすい。もう一方を後方にスライドさせれば、大人が座った時の足元空間を十分に確保できる。
この機能もパレットと同じだが、総合的に使いやすい。タントも同様のアレンジを可能とするが、リアシートは座面の造りが平板で座り心地はいま一歩だ。
N BOXはリアシートの座面を持ち上げて背の高い荷物を積めるが、スライド機能は装着されない。
ベストグレードは中級の「X」
グレード構成は最廉価のG(122万8,500円)、中級のX(132万3,000円)、ターボを装着した最上級のT(141万7,500円)の3グレード。
Gは快適装備が乏しく、買い得とはいい難い。Xになれば左側スライドドアの電動機能、ロールサンシェード、フロントオーバーヘッドコンソール、フロントスタビライザーなどが加わる。
Xの価格はGに対して9万4,500円高く、特に買い得とはいえないが、割高にもならない。実用装備を充実させて価格は妥当だから、Xがベストグレードだ。
一方、登坂路の多い地域に住んでいるユーザーは、ターボのTも検討したい。Xに対する価格アップはやはり9万4,500円。Xに装着されないLEDサイドターンランプ付きドアミラーも追加されるので、ターボ単体の価格は7万5,000円くらいだ。軽自動車のターボ換算額としては平均的。動力性能の上乗せは排気量400cc分に相当し、「100cc当たり2万円」の相場と照合しても約8万円で妥当な価格差になる。
なお、エコカー減税では、ターボモデルや4WDを含め、全車が購入時に納める税額を免税としている。
ターボも購入しやすい。燃費性能を中心に機能を向上させたスペーシアだが、N BOX、N ONE、ムーヴの売れ筋グレードに標準装着される横滑り防止装置の設定がない。また、先代パレットではXとTにサイドエアバッグを標準装着したが、これも省かれてエアバッグについては退化した。
ボディの傾き方を抑制して走行安定性を高めるスタビライザーも、最廉価のGには装着されない。スタビライザーについては、ボディの軽量化によってカバーできたという見方も成り立つが、安全性の向上に役立ち、ほかの車種では価格に換算しても1万円程度。グレードを問わず公平に装着すべきだろう。ほかの安全装備も用意して欲しい。
冒頭で触れたように、もはや軽自動車は日本車の主力だ。好調な売れ行きに見合う質感と機能を身に付け、安さだけが取り柄の時代は終わった。
安全装備を充実させれば、大量に売られるだけに事故防止の効果も大きい。ユーザーの満足度も高まる。パレットに装着されていたサイドエアバッグを省き、代替えユーザーをガッカリさせるなら、若干価格が高まっても標準装着した方が商売上でも有利だろう。
ほかの機能が優れているだけに惜しいところで、マイナーチェンジに期待したい。
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