北京MSから見る中国自動車マーケットの現状/日下部保雄
- 筆者: 日下部 保雄
徐々にオリジナリティを見せてきた中国車メーカー
北京モーターショー2010に行ってきた。
実はこれまで、中国の3大モーターショー、広州、上海、北京のどれにも行ったことはなかった。上海には昨年をはじめ、数年前にも行ったことがあるので激変の中国を目の当たりにすることが出来たが、北京は久しぶり。実は1994年の香港~北京ラリー以来の訪問となる。
しかし、今年北京で様々なメーカーを一同に見て回ると(確かに玉石混交だが)海外メーカーのコピーをしながらも独自の製品を打ち出しつつある。
これまでの二乗的なカーブを描いて上昇するメーカーの実力を見る限り、中国車は決して侮ってはいけない。かつて、韓国車が日本からの技術供与やコピーから始まって、現代は今や世界第6位のメーカーに成長しているように、近い将来中国車が新興国を中心に溢れ出すことは想像に難くない。
中国の国内需要はまだまだ伸びる。資源や環境のことはひとまず置けば、全世帯の普及率はまだ6~7%に留まっている。要は今は自動車であればなんでも受け入れる素地があるということだ。
丁度1970年代の日本がそうであったように、中国では右から左にクルマが捌けているというのが実情なのだ。そして誇り高き(高すぎる?)国民性からも、もはや海外でのモデル落ちのクルマを受け入れることは徐々に許されなくなっている状況だ。
中国政府による政策の危険性があったとしても、好むと好まざるとに関わらず日本を始め欧米のメーカーは最新のクルマを提供せざるを得なくなってきている。
一方で、民族系メーカーでは生産技術などの差が広がってきた。塗装一つ、プレス一つとっても歴然とした差が感じられる。民族系のBYDが世界屈指のプレスメーカー、オギワラの工場を買収したのも自動車メーカーとして飛躍しようと言う成長戦略に則ったものだ。
成熟市場の日本はそれ以外にもハード、ソフトに関するノウハウの宝庫であり、不況にあえぐ日本の部品メーカーが中国資本の攻勢にさらされているのは意外と知られていない。
今、日本メーカーはどんどん攻勢をかける時期だが、中国では新車マーケット以外のインフラ整備(中古車なども含む)がまだ立ち遅れており、今後アフターマーケットも含めた整備が進めば、耐久性に優れた日本車の価値は相対的に上がってくるだろう。
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