マツダ e-TPV(電気自動車プロト)海外試乗│プロトタイプから見るマツダが目指す電動化の世界とは!?(3/3)

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前後左右あらゆる方向でシームレスかつ意のままの動きを可能とする驚きの操縦性

マツダは今回、ペダルを操作した結果生まれる加減速の力を、まるで自分の筋肉を動かすように自在に扱えるように、モーターペダルという考え方を入れた。これはペダルによるトルクのコントロールの自在性に加え、加減速時のサウンドを作り込むことでトルクの向きと大きさを知覚させ、合わせて遅れのない応答を作り込んで生み出すというもの。だからペダルを踏みこむ速度や強さなど、自分の操作した感じがクルマの動きと極めて高くシンクロする感覚で、これまで以上に一体感という表現が相応しいものを感じる。

それはもちろんハンドルを操作した時も同様で、ハンドル操作に対して自然な感覚で曲がっていくMAZDA3やCX-30より、さらに極まっていると感じる。MAZDA3やCX-30では、Gベクタリングコントロール+という制御が入り、これによりクルマの姿勢はきめ細やかに制御されるが、このプロトタイプではさらにそれ以上の制御が盛り込まれる。

実はGベクタリングコントロールおよび+の開発においても、マツダはこのe-TPVを主としてきた。なぜならばモーター駆動であるがゆえに、内燃機関搭載車のトルクダウン制御だけでは実現できない範囲の制御が行えるからだ。実際このe-TPVでは、コーナーから脱出時のハンドル戻し操作時に、内燃機関モデルでは実現不可能なトルクアップによる後方荷重移動が行われており、さらなる挙動の安定化が図られる。また同時にこのe-TPVでは内燃機関以上のGベクタリングコントロールを可能とすることから、これでGベクタリングコントロールの制御を様々に開発し、その過程で内燃機関搭載モデル用へとGベクタリングコントロール+を派生させていったという。

先に記したペダル操作における加減速時の高い一体感、そしてモーター駆動ならではの広い作動領域を得たGベクタリングコントロールによる曲がる方向での極めて高い一体感の融合で、e-TPVは前後左右あらゆる方向でシームレスかつ意のままの動きを可能とする驚きの操縦性を感じる乗り物に仕上がっていたのだ。

東京モーターショー2019で発表されるマツダの電気自動車に大きな期待が掛かる

また同時に印象的だったのは、MAZDA3やCX-30を試乗した時に感じたパワートレーンの決定力不足が、このe-TPVでは払拭されていると感じたこと。フィーリングに優れ、なおかつ物足りなさを感じないモーターという存在を手に入れたことで、このスモールプラットフォームは動力性能的にも運動性能的にもひとつのゴールにたどり着いた感があると思えた。

e-TPVの走りから感じるこの上ない上質さと清らかな感じは、これまでに感じたことのないもの。当然ながら今まで数多くの電気自動車を試乗してきたが、そうした経験を持ってしても驚きを感じる仕上がりだった。

というか、パワートレインが電気なのか内燃機関なのかということを問う必要がないほど新しい感覚に溢れた走りがここに生まれていた。そうした感動を覚えながら、改めてこのクルマの存在や成り立ちを考えてみると、これはなかなかに凄いものだと分かる。

以前開発担当役員だった藤原清志氏に話を聞いたときには、第一世代のEVは自前で作るという話を確かにしていた。その頃の我々メディアとの認識は、マツダが作る第一世代のEVはとりあえず目前に迫った中国でのEV販売に対応するための、現地企業とのパートナーシップによるものだと考えられていた。しかしながら中国で販売するEVは確かにそうである一方で、まずはこの第一世代のEVというものを、スモールプラットフォームのコア・テクノロジーとして、電動化対応スモールプラットフォームというポートフォリオを描いていたのだから恐れ入る。

さらにいうならば第二世代のEVはトヨタやその他と共同で開発するという事が既にアナウンスされている。だが、これも基本的な部分は複数のメーカーで共有するものではあるものの、細かな部分に関してはメーカーごとに作り込んでいくのだという。

だからマツダはこの第二世代のEVに関しても、いま作っている第一世代のEVで得た知見を盛り込んで独自性を出していくことは間違いない。そう考えると東京モーターショー2019で発表されるマツダの電気自動車には、実に大きな期待ができる。そしてこれが登場するとマツダの世界観はより一層広がりと、深みを得ていく事になる。そう考えると今年の東京モーターショーでの発表がますます楽しみになってくるのだ。

[筆者:河口 まなぶ/撮影:マツダ株式会社]

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河口 まなぶ
筆者河口 まなぶ

1970年生まれ。大学卒業後、出版社のアルバイトをしたのちフリーランスの自動ライターとなる。1997年に日本自動車ジャーナリスト協会会員となり、自動車専門誌への寄稿が増え、プレイステーション「グランツーリスモ」の解説も担当。現在、自動車雑誌を中心に一般誌やwebで自動車ジャーナリストとして活躍。記事一覧を見る

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