マツダ e-TPV(電気自動車プロト)海外試乗│プロトタイプから見るマツダが目指す電動化の世界とは!?(2/3)
- 筆者: 河口 まなぶ
- カメラマン:マツダ株式会社
満を持してマツダの代名詞「ロータリー・エンジン」が復活
こうして電動化車両を最初に考えて、その構造を内燃機関モデルへ適応させる概念で車作りを考えてきたわけだ。
しかもマツダは今回、電気自動車のプロトタイプを我々に試乗させたが、会場に置かれたプラットフォームは、試乗した電気自動車のプロトタイプではなく、その派生系である電動化モデルだった。
今回発表した電気自動車のプロトタイプではエンジンルーム、いやモータールームを覗き込むと向かって左半分にモーターが置かれ、右半分は巨大なステーでモーターとフレームを締結する。しかしながら展示車両ではこの巨大なステーがなくなり、代わりにもう1つのユニットが搭載されていた。
それがロータリー・エンジンである。そう、マツダはこのプラットフォームでロータリー・エンジンを宣言通り復活させたのだ。
車両のフロント部分には向かって左にモーター、そして中央にロータリー・エンジン、そしてロータリーの右側には発電機という並びのパワートレーンが搭載された。そしてロータリー・エンジンの排気量こそ固定しながらも、組み合わせる発電機や搭載バッテリーの大きさを変えて、レンジエクステンダー、プラグインハイブリッド、シリーズハイブリッドなどをフレキシブルに作れる構造とした。さらにいえばロータリー・エンジンは燃料にガソリンだけでなく、LPGや水素など、あらゆるものが使える用意を考えていた。そして販売する地域によって、パワートレーンや燃料を選んで柔軟に仕様を変えていけるという仕組みだ。
実はかなり先進的な思考でポートフォリオを描いていた
そしてこの事実を知って、本当に驚いた。なぜなら歴史を振り返っても2015年の段階でこれほどまで電動化対応したプラットフォームの開発に着手していた自動車メーカーはそれほど多くないはずだ。そう考えるとマツダはイメージこそアナログな感覚がどこかあるものの、実はかなり先進的な思考でポートフォリオを描いていたということになる。だから筆者は思わず、当日お話を伺ったマツダの開発担当役員である松本浩幸氏に「もっと早く教えてくださいよ」と言った。なぜなら今回の電気自動車プロトタイプおよびその派生系の電動対応車両を知ることで、我々が認識していたマツダのスモールプラットフォーム戦略はこれまでの認識と異なるものとなるからだ。
改めて戦略を整理すると、マツダは2015年から電動化に対応した新世代のプラットフォームを開発し始めた。そして当初から電動化車両を開発し、そこから派生させた内燃機関搭載モデルのMAZDA3やCX-30を先に世に送り出した。そしてこの電気自動車プロトタイプが今後、東京モーターショー2019で発表されて、スモールプラットフォーム群のさらなる広がりとするのだ。
電気自動車プロトタイプe-TPVは、モーターの魅力が全てというクルマではなかった!
そしてここまでの非常に長い前置きから、この電気自動車プロトタイプを試乗した際の印象が悪くないことは皆さんも想像に容易いだろう。なぜならスモールプラットフォームの究極系かつ最終系(?)であり、ここからMAZDA3やCX-30が派生したのだから、2台の要素を当然含めた上で電動車両としての魅力がプラスされたクルマなのだから。
電気自動車プロトタイプe-TPVを走らせた時の最初の驚きは、電気自動車ながら、モーターの魅力が全て、というクルマではなかったこと。これはどういうことか?
電気自動車に乗ると、当然ながらこれまでの内燃機関とは全く違うモーターのフィーリングにまず感動する。エンジンと比べたら間違いなく「静かで、滑らかで、力強い」わけで、つまりモーターの特性そのものが魅力として強く印象に残るのが普通だ。しかしながらe-TPVは走り出した瞬間、あれほど驚いたはずのMAZDA3やCX-30を凌駕する質の高い動きを見せ、まずそこに感動を覚える。つまりモーターの静かで滑らかで力強いという特性そのものではなく、最初にクルマの全ての動きが上質な感覚を伴っていることが、遥かに強い印象として伝わってくるのだ。
だからアクセルを踏み込むと確かにモーターの静かで滑らかで力強い感覚はあるものの、それ以上に自分の操作した分だけ忠実に動くことを痛感して感動を覚える。もちろんほとんどの自動車は操作に対して忠実に動くが、e-TPVの忠実さは特に極まっており、まるで鉛筆を持って文字を書いたり、ハサミで紙を切ったりするような感じの、クルマというある程度の大きさのものを動かしているとは思えないほど自分の手の内にある感覚がすごく伝わるのだ。
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