パガーニ ウアイラ 海外試乗レポート/西川淳(2/2)
- 筆者: 西川 淳
「どうやって走り出していいものか」と悩んでしまうほど
カーボンチタンのモノコック、クロームモリブデンのサブフレーム、ゴールドカラーの鍛造アルミニウムアームなど、高価なマテリアルを惜しみなく使用した。ビス類にいたっては全てチタン製で、なんとパガーニのロゴが入っている。数キロの塊から削り出されたアルミニウムパーツの数々と、プリプレグCFRPパーツ、そして最高級のレザーハイドとの組み合わせは、全体に貫かれた極めて芸術的なレトロモダン・デザインと相まって、スーパースポーツカーであるにも関わらず、居心地のいい宝飾美術館に潜り込んだような気分になる。
5・60年代の飛行機からヒントを得たというコクピットに腰を落ち着けると、一瞬、どうやって走り出していいものか、と悩んでしまうほどだ。ステアリングホイールがあり、パドルシフトがあり、ペダルがふたつある、要するに基本要素はほかのクルマと何ら変わらないにも関わらず・・・。この非日常感、恐る恐る触らなければいけない緊張感こそ、スーパーカーの証だ。
トルクフィールがまた、衝撃的だった。
いかにもターボチャージド風の多次方程式的なトルクの立ち上がりではなく、太くキレイな線形を描く、まるでよくできた超大排気量NAエンジンである。だから、ターボの効きに惑わされることなく、右足だけで、強大なパワーの出し入れを楽しんでしまえた。
車体は、依然として軽く、そして小さくまとまったままである。まるで大きさを感じさせない。両手で前輪を抱え込んで動かしているかのようなハンドリングと、踏ん張って路面を離さないリアのスタビリティの高さ、そして低さと軽さと剛性感が、ハンパない。
それなりに盛大なメカニカルノイズがあって、それが乗り手の恐怖心とスリルをあおる。既存のスーパーカーにはないものだ。
60年代のレーシングカーと70年代のスーパーカーをミックスし、最新のテクノロジーと、20世紀の集大成というべき贅沢マテリアルを惜しみなくつぎ込んで作り上げられた、ホンマモンのスーパーカー。それは、もはやモデナの伝統工芸、アートの世界に突入した・・・。
ゾンダ、そしてウアイラには、いまどきのスーパーカーがなくしてしまった、“何かスペシャル”が沢山詰まっている。スーパーカー好きの終着点は、間違いなく、パガーニだ。
日本での正規代理店はビンゴスポーツで、この5月にはウアイラが日本で正式デビューする予定である。
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