もう最終戦!?EVのF1で“ル・マンの悲劇”トリオの1人がワールドチャンピオンに(2/2)
- 筆者: 山口 正己
- カメラマン:ルノー
逆転するにはレースは棄ててタイムアタック!?
一端は、チャンピオンが消えたと意気消沈したブエミ陣営だったが、もう1台のマシンでファステストラップを記録すれば、逆転できることに気がついた。
ピットに戻ったブエミは、タイミングを待ってコースに出た。レースは棄てているが、コースの空き具合を見極めて、タイムアタックをするためだ。全く同じことをディ・グラッシも実行する。プロストがリードするレースと同時に、ブエミとディ・グラッシの予選アタックが始まったと思えばいい。
マシンポテンシャルはブエミのRenaulte.Dams方が上。まずはブエミがファステストラップを記録する。ディ・グラッシはタイムが伸び悩むが、レースが進むと路面にタイヤラバーが付着してグリップが上がる。後半になるほど、タイムが上がる状況だから、ブエミ陣営も安心していられない。
何度か二人はアタックを展開するが、何せレース中だから、遅いマシンにひっかかったり、アクシデントで追い越し禁止/スピードダウンのイエローフラッグが出されたりと、思うようにアタックできないまま終盤にもつれ込んだ。
終盤、ブエミが渾身のアタックを決め1分24秒台を叩き出した。マシン能力からこれで決まりと思えた。
しかし、ディ・グラッシが火事場の馬鹿力を発揮した。集中力が高まると人は信じられないパワーを出すものだ。
セクター1とセクター2で、無理と思われていた外野の予想に反して、ブエミのタイムを更新。この勢いでファステストラップを出すのか!?レース展開とは関係ないディ・グラッシの走りが注目された。
僅差とはいえワールドチャンピオンになれるのは一人だけ
結果は、5/100秒届かなかった!!
かくして、セバスチャン・ブエミが晴れて2代目フォーミュラEのワールドチャンピオンに輝いて、表彰台でプロスト代表に抱きついて泣いた。
ちなみに、先週末はやたらとぶつかる週末だった。同じ日にオーストリアで行なわれたF1GPでは、最強軍団のメルセデスの2台が最終ラップにぶつかる事件が起きていた。
ワールドチャンピオンになれるのは一人だけ。フォーミュラEのような歴史的な展開になるのなら、時にはぶつかるのも悪くない?
いやいや、ぶつかり合うのはやはり“マシン”ではなく“ワザ”にしてほしいと、優等生としての結論を出しておくことにしよう。
[Text:山口正己]
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