ポルシェパナメーラ 4Eハイブリッドに試乗|矛盾をも超越する大人の4ドアスポーツ(2/2)
- 筆者: 飯田 裕子
- カメラマン:茂呂 幸正/和田 清志
最高速140キロ、最大50キロまでをモーターのみで走行可能
ポルシェパナメーラ4E ハイブリッドのこれまでのシステムとの違いは、前述した通り電気モーターのみでの走行が最大で50キロ、最高速度は140km/hまで出すことが可能になったこと。また、ハイブリッドモードで走行中、第2世代ではアクセルを8割以上踏み込まなければ電気モーター駆動によるアシストはなかったけれど、新世代ではアクセルペダルを踏み込んだ瞬間から電気モーターを使用した加速が可能で、状況に応じて電気モーターとガソリンエンジンの両方が効率とパフォーマンスを発揮する。
パナメーラ4E ハイブリッドの動力は2.9リッター6気筒ツインターボのガソリンエンジン+電気モーターで、新世代の8速PDKを介して走らせている。システムトータル出力は460ps/340kw、トルクはなんと700Nm! ラゲッジ下に搭載されるバッテリーは先代の9.4kWhから14.1kWhへと大幅に増加している。
というわけで、そのときの様子を録音したレコーダーを聞き直すと、走り出した直後に私が発した言葉は「すごーい、まるでポルシェの100%ピュアEVみたい」であった(苦笑)。正直なところ、走り出しは2トンを超えるボディの重さを少々感じる。また、ブレーキのタッチはこれまでとは少し違う印象もあった。けれど、未だ操作に気を遣ったり違和感を抱くハイブリッドが存在するなか、パナメーラ4E ハイブリッドのフィーリングにそれらは感じない。
ワインディング路に入ってからも、思う通りの制動感とペダルフィールが得られたから、思い通りにノビノビと走り、減速し、曲がることができた。ワインディング路と言えば、走り出したときに抱いたパナメーラ4Eハイブリッドの“静かな主張”から打って変わって、その表情には期待通りのスポーツツアラーぶりがうかがえた。その理由は音にある。
アクセルを少し強めに踏み込んでいくだけで頼もしいエキゾースト音がトルクの束が太くなる感覚を伝えてくれた。5000回転を超えたあたりから聴こえる高音の効いた音色がちょっとクセになりそうと言ったら、効率の良いパフォーマンスマネジメントをするE-ハイブリッドの意に反してしまうかしら。
いやいや、エキゾースト音を聴かせるスポーツグランドツーリングハイブリッドがあったっていい。パナメーラは“矛盾の超越”を目指しているんだから。エンジンは回転数の上昇に伴い出力やトルクが増える一方で、モーターによる見えない力がアクセルを踏み込んだ瞬間から引き出すことが可能なのだ。
万人に優しく、頼もしく、愉しい。まさに意のままに操れる感覚が持ち味
ステアリングホイールに組み込まれたモードスイッチを含むスポーツクロノパッケージが、ポルシェパナメーラ4E ハイブリッドに標準装備される。「スポーツ」と「スポーツ・プラス」モード、ハイブリッド専用の「Eパワー」、「ハイブリッドオート」「E-チャージ」モードがある。なかでも「スポーツ」モードではバッテリーの最低レベルの充電が常に維持され、必要なときにe-ブーストの予備容量を保証するという。
「スポーツ・プラス」モードでは最高速278キロを約束しながらV6ツインターボエンジンができる限り迅速にバッテリーチャージも行うらしい。つまり、常に最高の走行パフォーマンスを維持するためにV6ツインターボエンジンは動力とモーター駆動のための発電を助ける役割を果たすわけだ。なんだかレースマシンみたいではないか。
コーナリング時のライントレース性も申し分ない。パナメーラ4E ハイブリッドにはトリプルチャンバー式エアスプリングとポルシェ・アクティブサスペンション・マネジメントシステム(PASM)を組み合わせたアダプティブサスペンションが標準採用となる。サーキット走行ほど激しいコーナリングを試みたわけではないけれど、少なくとも2トンを超えるボディがコーナーで受ける荷重をフラットに受け止める潜在能力は体感できた。
これならリヤシートにパッセンジャーを同乗させていたとしても、大きな横揺れに閉口することはなさそう。いくつか続いたコーナーに対しステアリングを左右に切り返した際も、ガチガチのスポーツカーとは違う、しなやかさすら感じられたのだった。アクセルペダルの操作+エキゾースト音、ステアリング操作と一体で安定感のあるコーナリングをしてくれるボディやサスペンションなど、人+パナメーラのコミュニケーションは万人に優しく、頼もしく、愉しい。
矛盾を超越した存在 ポルシェ パナメーラ4Eハイブリッド
パナメーラ4E-ハイブリッドは4輪を1モーターで行う電子制御式4WDであるが、トルク配分はリヤ寄りだという。正直、試乗中に4WDであることを意識させられたシーンはなく、ただ安定感とともに「このサイズにしてスムースなコーナリングは嬉しい、愉しいっ!」と心中で密かに納得の笑みを浮かべていた。
スーツ姿も似合うポルシェの4ドアスポーツモデルには、天真爛漫なスポーツカー好き男子より大人の雰囲気が漂うから、ポーカーフェイスを気取りたくなるのかもしれない。あっ、女性でも…と加筆しておかなければ(苦笑)。このサイズのスポーツツアラーを女性がドライブしていたら素敵だろうな、と想像を巡らすのは同性としての憧れからだ。
「セダンでありながら高いスポーツ性を愉しめる=矛盾の超越こそがパナメーラの存在理由」。超越してしまえばこのジャンルのリーダーにだってなれる。E-ハイブリッドは、EVとスポーツの二面性を思い通りに駆り分けることのできる器を兼ね備えていた。これからのポルシェの電動化に繋がるシステムになりそうだ。
[Text:飯田 裕子 Photo:茂呂 幸正/和田 清志]
ポルシェ パナメーラ | |
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グレード | パナメーラ4E ハイブリッド |
価格 | 14,360,000円 |
駆動方式 | 4WD |
トランスミッション | 8速PDK |
全長 | 5,050mm |
全幅(車幅) | 1,935mm |
全高(車高) | 1,425mm |
ホイールベース | 2,950mm |
乗車定員 | 4人 |
車両重量(車重) | 2,210kg |
エンジン | V型6気筒ツインターボ+モーター |
排気量 | 2,893cc |
エンジン最大出力 | 330ps/--rpm |
エンジン最大トルク | 450N・m/5,250-6,500rpm |
モーター最大出力 | 136ps/--rpm |
モーター最大トルク | 400N・m/--rpm |
総合出力 | 462ps |
総合トルク | 700N・m |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
タイヤサイズ | 265/45R19/295/40R19 |
サスペンション形式 | (前)ダブルウィッシュボーン式 |
最小回転半径 | --m |
関連リンク
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