日産 ティーダ 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:原田淳、難波賢二
日産、小型車クラスの新世代モデル。
5ナンバー車枠に収まるような手頃なサイズのクルマながら、従来のコンパクトカーにはない高品質のクルマに仕上げられたのがティーダ。小さな高級車というのは昔から日本の自動車メーカーが何度もチャレンジしては失敗しているカテゴリーだが、日産はそれに改めて挑戦することになった。
ボディは5ドアハッチバックだが、10月29日にはティーダ・ラティオの名前で4ドアセダンが追加されるので、サニーやかつてのパルサーなどを統合した小型車クラスの新世代モデルである。日本ではこのクラスのクルマを買うユーザーが少なくなっているが、世界的にはヨーロッパでハッチバック、アメリカやアジアではセダンと、それぞれに良く売れているので、自動車メーカーとしては外すことのできないカテゴリーといえる。
ティーダではインテリア回りの品質感を特に重視したほか、新開発の直列4気筒1.5Lエンジンを搭載し、グレードによってエクストロニックCVTと組み見合わせるなど、意欲的なクルマ作りがなされている。
際立つインテリア回りの品質感。
5ドアハッチバックの外観デザインでは、まず日産車ならではのウインググリルがある。鳥の羽のような形状をしたラジエターグリルには賛否両論があるが、日産車ならではのアイデンティティとして採用されたのだろう。ボディは全体に立体感、ボリューム感を感じさせるものに仕上がっており、独特の存在感が感じられる。塗装などもひとクラス上のクルマ用のものが採用され、見栄えの良さを高めるのに貢献している。
外観よりもインテリア回りのほうが品質感の高さをよりよく表現している。運転席に座って感じられるのは室内各部の手触りの良さだ。インストのパッドを始め、ドアトリムやドアアームレスト、センターアームレスト、天井など、どの部分に手を触れても柔らかい感触が返ってくるのは、ほかのコンパクトカーにはないものだ。
シートもティアナと同サイズといわれるように、コンパクトカーとしてはやや大きめのものが用意され、シート表面の素材にもこだわって作られている。後席もリクライニングやスライドによって快適な乗り心地が確保されている。また後席の足元や頭上には十分な空間が確保されている。
市街地走行から高速クルージングまでスムーズな走り。
試乗したのは最上級グレードの15G。搭載されるのは直列4気筒1500ccのHR15DE型エンジンで、15Gと15MのFF車にはエクストロニック CVTが組み合わされている。ティーダの発売に合わせて新開発されたHR15DE型エンジンは、80kw/148N・mの実力。パワー&トルクの数字自体は平均的なもので大したことはないが、実用域でのトルク性能に優れているのが特徴で、市街地走行から高速クルージングまでストレスなくスムーズな走りを実現することができる。この走りのスムーズさは、変速ショックのないエクストロニックCVTによるところも大きい。CVTはともするとエンジンの回転の上昇と速度の上昇との間にズレがあって、加速時の違和感につながることもあるのだが、ティーダではそうした違和感がうまく抑えられていた。
足回りは前輪がストラット式で後輪がトーションビーム式というオーソドックスな組み合わせ。全体に柔らかめの乗り心地を重視したセッティングで、急な操舵を入れると大きくロールする感じだが、操縦安定性には特に不満を感じない。
装備から考えると、お勧めグレードは15M。
ティーダでは中間グレードの15Mが絶対のお勧め車になるだろう。まず廉価グレードの15Sを見ると、トランスミッションがエクストロニックCVTではなく電子制御式ながら4速ATになってしまう。滑らかな走りでも燃費でもCVTとの差は大きい。また15Sでは電動格納式のリモコンドアミラーが設定されていない。リモコンは可能だが、電動格納ができないのだ。タワーパーキングなどの多い都内では、これだと使い勝手が悪くて話にならないし、地方でも電動格納ができないと不便なことが多いはず。オプションで選択が可能ならまだ良いが、オプション設定もないのでこれだけの理由で買えないグレードになってしまう。
上級グレードの15Gは、シート地やステアリング、それにフォグランプの有無などに違いがあるが、これで15万円ほど高くなるのでは納得しにくいものがある。
やや消極的な消去法ながら、結果的に15Mがお勧めグレードになる。本体価格が150万円(税抜)ちょうどというのは、十分に納得モノの価格といえるだろう
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