THE NEXTALK ~次の世界へ~ 日産自動車 実験技術開発本部 祖父江玲奈 インタビュー(4/5)
- 筆者: 御堀 直嗣
- カメラマン:佐藤靖彦
なぜ自動車メーカーに
外資系のコンサルティング会社から、日系の自動車メーカーへの転職。ドライブするのは好きだが、クルマはそれほど詳しくなく、興味も薄かったと言う祖父江が、なぜ自動車メーカーへの転職を決めたのか?
【祖父江玲奈】現実の社会問題と学問が一致しないという状況が生まれていて、たとえば環境問題ひとつを採り上げてみても、政治的に法規制という問題があり、経済的にはどこにどの程度の補助金を出すかといった課題があり、では廃棄物は実際どう処理するかといった現実的な問題もあって、答えが一つではなく、当面の最善策を得る取り組みをしなければなりません。
私が卒業した総合政策学部は、色々な学問を持ち寄って、現実に起きている問題を考える学部です。 私が専攻したのは、国際関係論です。いま日本だけで解決できることはほとんどありません。円高と言っても、輸出入を規制すればいいのか?また為替が1円変わるとはどういうことかという財務だけで語ることもできません。
自動車メーカーにとって苦しいことであるのは言うまでもありませんが、さらに、円高によって赤字になれば職を失う人も出てきます。その人たちの生活の保障はどうあるべきなのか?など、複合的になっていて、それが国際的に国をまたがって影響を及ぼします。
生活の中にも、海外から食料を輸入するといったように、国同士の関係があって、その中に見えていないことがあり、見えないことで足をすくわれるということも起きます。そこで、国際関係論を学び、国際ボランティアセンターをケーススタディとして、人・物・金の管理を理解することが社会では大切なことであると気付かされました。
学んだことを活かせる先として、何社か受け、アクセンチュア(旧アンダーセン・コンサルティング)に入社しました。コンサルティングの仕事は一つの契約期間が3か月ほどと短く、この間に、調査や分析を行ってお客様に報告します。いろいろな分野を担当するため、毎回その業種を新たに勉強することになりますし、担当するお客様も変わります。したがって長期的に課題に向かうことができず、継続的に物事を考えることもありません。
10年間勤務し、シニアマネージャーまでいきましたが、腰を据えて大きな課題に取り組みたいと思うようになったのです。コンサルティングではない分野で成長したいと思いました。
現在、祖父江は、ときに20~30車種を抱えて仕事をすることもあると言う。女性客の多い車種や、ファミリー向けの車種をすべて担当するうえ、仕向地(海外市場:筆者注)の違いを加えると、それだけの台数を兼務することがあるのだそうだ。じっくり腰を落ち着けてというわけにはいかない場合もあるようだが、それでも、新車開発は3~4年と時間をかけて完成に至る大掛かりなプロジェクトだ。
【祖父江玲奈】女性は、クルマを物ではなく、相棒やパートナーと呼び、クルマが無かったら生活ができないというほど結びつきは強くなっています。それを語れる人がまだ社内には少ないですね。それでも男性のエンジニアは、私の提案に積極的に取り組んでくれています。
私が女性にとって良いと思う点は、女性だけのものではなく、男性にとっても良いと感じられる面があるからです。他の女性にとって、自動車メーカーは、技術というハードルが高そうに見えるかもしれません。しかし実際には、女性の感性を活かす余地があって、クルマの魅力をもっと高めていくことができると思っています。
私はドライブが大好きですが、そういう人がクルマを作っていけば、楽しくていいクルマができるのではないでしょうか?
自動車メーカーが革新を続けてきた技術の周りに、魅力がまだまだ隠れていると祖父江は言う。そしてさらに、多くの女性が自動車メーカーで働くことを望んでいる。女性の参加が、隠れた魅力を発掘し、よりよいクルマを生み出す力になっていくと言うのだ。
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