ルマン参戦 日産デルタウィングがレースカーの概念を覆す!(3/3)
- 筆者: ピーター ライオン
トヨタと日産の殴り合い?
ところが、風向きが変わった。レースが経過した5時間辺りで、ニコラス・ラピエが駆けるゼッケン7番のトヨタ・ハイブリッドが速いペースで1位のアウディを抜いてトップに立った。
トヨタのピットが喜びにざわめいている間に、アンソニー・デビッドソンが乗るゼッケン8番のトヨタ・ハイブリッドがあろうことか、フェラーリに250km/h超えのスピードで当てられて、吹っ飛んでタイヤ・バリアーに激突した。
レースが再開した時、中嶋一貴が乗るトヨタ・ハイブリッドがポルシェ・カーブで本山が操るデルタウィングに妙な感じで当たり、デルタウィングはコンクリートの壁に激突してしまった。事故の直後、中嶋に対してミラーを見ていないとの避難が上がったが、彼は車体が低くて黒いデルタウィングは見えなかったとしている。
マシンがクラッシュした場合、ピットに戻るまで車の修理ができるのは、その時点でのドライバーだけということになっている。
フェンスの後ろから日産のメカニックに修理の仕方を教えられ、チャンピオン・レーサー本山は勇敢にも90分にわたって車を直そうと奮闘した。車をピットに戻せれば、修理してレースに復帰できるからだ。
しかし、ステアリングとパワートレインが無惨に破損してしまったため、デルタウィングにはリタイア以外に選択の余地はなかった。
その夜、2つニュースに驚いた。まず1つは、トヨタが動いたことだ。
今回、日産のピットに出向いてトヨタの関係者と中嶋の不手際を詫びたというニュース。そしてもう1つは、デルタウィングがクラッシュした後、世界中を飛び交うツイッターの交信が“30%以上も減ってしまった”という事実だ。
これはデルタウィングの強い人気を物語る数字であった。
走行時間は、わずか6時間だった それでも闘えることを証明した
今回、デルタウィングのル・マン挑戦で、日産はどんなフィードバックが得られたのだろう?
それは、「世界が、より効率よく環境に負荷を与えないテクノロジーを探求し、資源を保持しようと努めている今、このプロジェクトは、自動車産業全体の大きなスケールで何が可能かをプロモートするのに最適の触媒だ」という、ハイクロフト・レーシングのダンカン・デイトンのコメントが、すべてを語っているだろう。
サーキットを走った時間は、わずか6時間だった。
しかしその短い時間に軽量の日産デルタウィングが証明したことは、世界でもっとも過酷なレースにおいてさえ、従来の半分の車重、半分の燃料、半分のパワー、そして摩耗率が半分の、信じ難いほど細いフロントタイアでも闘えるということだった。
ああ、それに、速いラップタイムもたたき出していた!
でもね、日産に敢えてひとこと言わせてもらえば、デルタウィングの車高の低さと、見えにくい真っ黒のボディ・カラーをドライバーたちが嫌がっていたことは、日産だって知ってたよね。だから、どのレースであろうと、次の対決では鮮やかな赤色にしてはどうだろう。赤地に黄色のストライプとか!?
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