J.D. パワー 2024年米国自動車保険事故対応満足度調査(SM)


修理期間が改善される一方、自動車保険の値上げが満足度に悪影響を及ぼす





 CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関であるJ.D. Power(本社:米国ミシガン州 トロイ)は、現地時間10月29日に、J.D. Power 2024 U.S. Auto Claims Satisfaction Study(SM)(J.D. パワー 2024年米国自動車保険事故対応満足度調査(SM))の結果を発表した。17回目となる本年調査では、調査設計の変更が行われ、ファクターと評価スケールが変更されている。
 
 自動車保険会社は、パンデミック以来、コストの上昇と修理期間の長期化という2つの大きな課題と向き合ってきたが、これらの課題の1つに緩和の兆しが見えてきた。本年調査の平均修理期間は22.3日だったが、調査実施期間のうち、後半の保険金請求の平均修理期間は18.9日で、前半の23.9日から5.0日短縮している。一方、コスト面は逆の傾向で、平均修理費は過去2年間で26%上昇している。保険料もこれに追随し、過去1年間で15%上昇している。


2024年調査の主なポイントは以下の通り:

修理期間の短縮
本年調査における平均修理期間は22.3日で、前年調査(2023年10月発表)の23.1日から1.0日短縮した。しかし、本年調査を保険金が請求された四半期別に見ると、修理期間は2023年初頭をピークに着実に改善しており、本年調査の実施期間を通じて合計5.0日短縮している。

保険金請求後に続く保険料値上げが顧客満足度を押し下げる
 回答者の48%が過去12ヶ月間に保険料の値上げを経験している。保険金請求前に保険料の値上げを経験した人の満足度は特に低く、すでに値上げに動揺していた状態で請求プロセスに入ったことが満足度の低さの背景として考えられる。また、こうした顧客に対する保険会社のコミュニケーションはスムーズではなく、顧客が期待する保険金支払までの期間に応えておらず、請求後も安心感を提供できていないことがわかった。
さらに、満足度を低下させる要因として、保険料値上げの半分近くが保険金請求に起因することが挙げられる。保険料の値上げがなかった顧客と比較すると、保険金請求後に保険料の値上げを経験した顧客の満足度スコアは100ポイント(1,000ポイント満点)以上低下している。こうしたネガティブな傾向はブーマー世代*¹とプレブーマー世代*¹で最も顕著に見られ、信頼度も178ポイント低下している。

*¹ J.D. パワーでは、1946年より前に生まれた人をプレブーマー世代、1946-1964年に生まれた人をブーマー世代、1965-1976年に生まれた人をX世代、1977-1994年に生まれた人をY世代、1995-2006年に生まれた人をZ世代と定義している。Y世代の中で、特に1982-1994年に生まれた人をミレニアル世代と定義している。

保険金請求処理のデジタル化による満足度の向上は、全ての顧客にあてはまるものではない
 保険会社はモバイルアプリの改善に注力しており、その成果は実を結んでいるようだ。過去3年間は、コールセンターや代理店経由の請求の満足度がデジタルチャネルを上回っていたが、現在はデジタルチャネルの満足度が上回り、特にモバイルアプリが最も高いスコアとなっている。特に、写真提出や状況報告の受取にアプリを使用した場合、他のデジタル体験の満足度を上回る775ポイントとなった。
しかし、このような顧客はわずか13%に過ぎない。ブーマー世代とプレブーマー世代は、完全なデジタルプロセスへの移行をまだためらっており、32%が請求全体に対してデジタルツールを使うことに抵抗があると回答している。また、顧客は、特定の質問がある場合に関して、デジタルチャネルを対人チャネルよりも低く評価している。このように、世代間の違いや作業内容が、デジタル体験に依然として影響を及ぼしている。

良好なコミュニケーションが請求体験の高い満足度へのカギ
 保険会社の担当者とのコミュニケーションが取りやすいことが満足度向上に最も寄与するKPI(重要業績評価指標)となることがわかった。問い合わせのしやすさ、タイムリーな対応、担当者の一貫したサービスの提供、予想修理期間の管理、積極的な状況報告の選択肢の提供は全て保険金請求を通じてコミュニケーションを図る上で重要な要素である。これもまた、顧客が情報にアクセスし、情報を得る上で、デジタルツールが重要な役割を果たす分野である。

J.D. パワー グローバル・インシュアランス・インテリジェンス部門ディレクター マーク・ギャレットのコメント
「保険金請求手続きは、顧客にとって自動車保険の真実の瞬間(Moment of Truth)であるため、保険料の値上げや、予想以上の修理時間や、その他不都合を経験した場合、自動車保険ブランドに対する総合的な信頼は大きく低下する。実際、保険金請求で不愉快な思いをした自動車保険加入者の80%が、すでにその保険会社を辞めている、もしくは辞めるつもりだと答えている。修理期間の大幅な改善は、保険会社とその顧客にとって非常に良い傾向であるが、保険料の値上げにより、信頼が損なわれ、顧客の保険金請求に対する見方に影響が現れているため、保険会社にとって新たな課題となっている。顧客のロイヤルティを維持するために、業界が乗り越えるべき課題はまだ沢山ある。」


顧客満足度ランキング
第1位:NJM Insurance Co.(NJM)(782ポイント)
第2位:Amica(アミカ)(746ポイント)
第3位:Erie Insurance(エリー)(733ポイント)






《J.D. パワー 2024年米国自動車保険事故対応満足度調査(SM)概要》
年に1回、直近9ヶ月以内に自動車保険の請求手続きを完了した自動車保険契約者を対象に、契約先保険会社への保険金請求・保険金受取手続き等に対する満足度を聴取し明らかにする調査。今回で17回*²の実施となる。今回は調査設計の変更が行われ、ファクターと評価スケールが変更された。

*² 2008年から顧客満足度ランキングを公表。2007年にランキングのない調査を実施している。

■実施期間:2023年10月~2024年8月 ■調査方法:インターネット調査
■調査対象:調査回答前の9ヶ月間に保険金受取を行った自動車保険加入者。ただし、窓ガラス/フロントガラスのみの損傷や盗難に遭った場合のほか、ロードサービスのみを利用した場合は対象外。
■調査回答者数:9,725人

総合的な顧客満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に、「信頼性」(17%)、「保険金支払の公平性」(14%)、「保険金支払に要した時間」(14%)、「顧客対応(対人チャネル)」(13%)、「コミュニケーション手段・時間の柔軟性」(11%)、「請求解決」(11%)、「請求手続きのしやすさ」(10%)、「顧客対応(デジタルチャネル)」(10%)となっている(カッコ内は影響度)。


*本報道資料は、現地時間2024年10月29日に米国で発表されたリリースを要約したものです。
原文リリースはこちら
https://www.jdpower.com/business/press-releases/2024-us-auto-claims-satisfaction-study


*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。


【ご注意】本紙は報道用資料です。弊社の許可なく本資料に掲載されている情報や結果を広告や販促活動に転用することを禁じます。


J.D. パワーについて:
米国に本社を置くJ.D. パワーは消費者インサイト、アドバイザリーサービス、データと分析における国際的なマーケティングリサーチカンパニーです。ビッグデータや人工知能(AI)、アルゴリズムモデリング機能を活用して消費者行動を捉える先駆者であり、消費者に関する鋭い業界インテリジェンスを提供してきました。J.D. パワーは半世紀以上に渡って、顧客とブランド・製品に関わり続け、主要産業における世界の大手企業から、顧客対応戦略の指針として信頼されています。
J.D. パワーは、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋にオフィスを構えています。事業内容の詳細については、https://japan.jdpower.com/jaをご覧ください。


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