全固体リチウムイオン電池の基部素材として有望な候補物質を発見 ~高いイオン伝導度と安全性を兼ね備えた酸化物固体電解質~



【研究の要旨とポイント】
全固体電池は安全性、寿命、容量などの点で既存のリチウムイオン電池の性能を上回ると期待されており、特に硫化物系の研究が進んでいますが、有毒ガス発生のリスクがあります。

今回、全固体リチウムイオン電池の基幹部材として、幅広い温度域で高いイオン伝導度と安全性を兼ね備えた酸化物系固体電解質Li2-xLa(1+x)/3 M2O6F (M = Nb, Ta)を発見しました。

この材料は大気中で安定であることに加え、既報の酸化物系固体電解質よりも高いイオン伝導度を示します。

本研究は、安全性が高く、広い作動温度範囲を持つ革新的な全固体電池の開発につながる成果です。





【研究の概要】
東京理科大学創域理工学部先端化学科の藤本 憲次郎教授、相見 晃久講師(研究当時、現在は防衛大学校)、株式会社デンソーの吉田 周平博士らの研究グループは、これまでに報告されている酸化物固体電解質よりも幅広い温度域で高いリチウムイオン伝導度をもつパイクロア型固体電解質Li2-xLa(1+x)/3 M2O6F (M = Nb, Ta)を発見しました。

本研究は株式会社デンソーと本学の共同研究です。


既存のリチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度と安全性を兼ね備えた次世代電池として、全固体リチウムイオン電池の実用化が期待されています。全固体リチウムイオン電池の固体電解質としては、大きく分けて酸化物系と硫化物系の2種類がありますが、より高いイオン伝導度をもつ硫化物系固体電解質の研究が盛んに進められています。しかし、硫化物系固体電解質は大気中の水分と反応して有毒な硫化水素を発生させる危険性があります。


そこで本研究では、大気中で安定なパイクロア型結晶構造をもつLi2-xLa(1+x)/3 M2O6F (M = Nb, Ta)を合成しました。この物質は室温でバルクイオン伝導度7.0 mS cm-1、全イオン伝導度3.9 mS cm-1と、これまでに報告されている酸化物固体電解質の中で最も高いイオン伝導度を示すことが確認できました。


本研究成果は、2024年3月28日に国際学術誌「Chemistry of Materials」にオンライン掲載されました。

※PR TIMESのシステムでは上付き・下付き文字を使用できないため、正式な表記と異なる場合がございますのでご留意ください。正式な表記は、東京理科大学WEBページ(https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240402_1224.html)をご参照ください。


【研究の背景】
リチウムイオン電池はさまざまな用途に利用されており、現代社会においてはなくてはならない存在です。一般的に使用されているリチウムイオン電池は液体有機電解質を含んでいますが、固体電解質を用いた全固体電池の方が、安全性や充放電性能などの面で優れていることから、実用化に向けて研究が活発に進んでいます。


一方で、固体電解質は液体電解質に比べて電極との接触面積が小さくなるため、必然的にイオン伝導度が低くなるという問題があります。これまでに、室温で12 mS cm-1という高いイオン伝導度を示す硫化物系固体電解質が報告されるなど、高エネルギー密度や高出力密度が求められる電気自動車などの主要産業分野では硫化物系を中心に研究が進められてきました。


しかし、硫化物系固体電解質は、大気中の水分と反応して有毒な硫化水素を発生するリスクがあります。一方、酸化物系固体電解質のイオン伝導度は硫化物系には及びませんが、大気中でも硫化水素ガスを発生しないため、安全性という面では硫化物系よりも優れています。そのため、現在、ペロブスカイト型、ガーネット型など、さまざまな結晶構造をもつ酸化物系固体電解質の開発が進んでいます。


高いイオン伝導度の発現要件として、イオン伝導パスと呼ばれる特徴的な構造が重要であることが知られています。パイロクロア型構造の中には、イオン伝導パスが存在している可能性がありますが、これまでリチウムイオン伝導に関する研究はほとんど進められてきませんでした。


【研究結果の詳細】
本研究グループはまず、Li2CO3、La2O3、M2O5(M = Nb, Ta)、LaF3、LiFを用いて、パイロクロア型酸化物Li1.25La0.58M2O6FおよびLi1.00La0.66Ta2O6Fを合成しました。これらの導電率を計測したところ、室温(~298 K)でバルクイオン伝導度7.0 mS cm-1、全イオン伝導度3.9 mS cm-1と、既知の酸化物固体電解質のリチウムイオン伝導度よりも高く、水素ドープLi3Nの導電率(6.0 mS cm-1)に匹敵することがわかりました。本材料はイオン伝導の活性化エネルギーが小さく、硫化物系を含めた既知の固体電解質の中で、低温におけるイオン伝導度はトップクラスでした。


次に合成したこれらの物質について、粉末X線回折(XRD)で結晶相を同定し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)で元素組成分析を行い、これらのデータをもとにBond Valence Energy Landscape(BVEL)法を用いてLiイオン伝導経路を計算しました。

その結果、パイロクロア型構造では、LiイオンはMO6八面体によって形成されたトンネル内に位置するFイオンを覆うような導電パスを持ち、Fイオンとの結合を順次変えながら移動するという伝導経路が示唆されました。Fイオンの欠損を防ぐことおよび非伝導イオンであるLaを減少させることが導電率の発現に必要であると考えられます。


研究を主導した藤本教授らは「酸化物系の全固体電池は、既存のリチウムイオン二次電池とは異なり破損による液漏れリスクもなく、硫化物系のように有毒ガス発生のリスクもありません。今回発見した材料は、安全性が高く、これまでに報告されている酸化物系固体電解質よりも高いイオン伝導度を示します。この材料を応用することで、低温から高温域まで幅広い温度域で作動できるこれまでに無い革新的な電池の開発が可能になると期待されます。」と、本研究の意義と今後の展望を述べています。


【論文情報】
雑誌名:Chemistry of Materials
論文タイトル:High Li-ion conductivity in pyrochlore-type solid electrolyte Li2-xLa(1+x)/3 M2O6F (M = Nb, Ta)
著者:Akihisa Aimi, Hitoshi Onodera, Yuta Shimonishi, Kenjiro Fujimoto, Shuhei Yoshida
DOI:10.1021/acs.chemmater.3c03288
URL:https://doi.org/10.1021/acs.chemmater.3c03288


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