MINI JCW PACEMAN 海外試乗レポート／西川淳(2/2)

JCW化によるパワートレインの性能アップで、ミニ史上最強のパフォーマンスを発揮

あらためて、モデル概要を紹介しよう。

JCW化における最大の見所は、当然パワートレインの性能アップである。

バルブトロニック付き1.6リッター直噴ターボエンジンは、ミニ史上最強となる218ps／280Nm（オーバーブースト時で300Nm）を発揮する。組み合わされるのは、6段マニュアルミッション、もしくは6速トルコンオートマチック。

5ドアのクロスオーバーに比べて車重が多少軽くなっているとはいうものの、パワーウェイトレシオの差はほんのわずか。基本、JCWクロスオーバーと同じパフォーマンスデータ（数字でいえばコンマ1秒の差がある程度）である。

シャシーセッティングの考え方もJCWクロスオーバーと全く変わらない。ノーマルラインナップのクロスオーバーとペースマンとでは、その乗り味に違いがあって、ペースマンの方が若干、柔らかめのセットアップとしていたが、JCWペースマンでは、JCWクロスオーバーと全く同じチューニングであるという。

黒いボディにユニークなデザインの赤いセンターラインが派手にはしっている。

なるほど押出しは強いけれども、エアロパーツ類のアピールはあくまでも控えめだ。

10ミリローダウンされたシャシーに、スパルタンなアロイホイールと赤いブレーキキャリパーなど、見栄えのJCW化も、これまでの文法通り。

ハードなだけのライドフィールよりも、一層愉快な気分に浸れるドライビングファン

走りはじめてすぐに感動したのは、乗り心地の豊かさだ。

「ウィンタータイヤ装着」ということを差し引いても、当たりがソフトで心地もいい。アシ回りは基本、フラットライドを保っているが、突っ張りすぎず、サスはしなやかに制御されている。ステアリングの入力に対しては、ダイレクト感のある機敏な対応をみせつつ、プロセスの質感を高めた、シャシーの動きの懐の深さが魅力だ。

そして、アクセルペダルひと踏みで高回転域までキレイに回り、胸を透くエンジンフィールとパワー感もいい。とにかく、クルマの一つ一つの反応の完成度が素晴らしく高くて、それらが気持ちよく連鎖してくれるから、乗っていて自然と笑みがこぼれる。

もちろん、スポーツパフォーマンスも上等である。

回しきったときのエンジンフィールに雑さとパワーのツキの物足りなさを覚える場面もあったが、スポーツボタンを押し、エンジンのピックアップとパワーステアリングのフィールを走り重視側にセットして、やる気満々のエグゾーストノートを響かせながら操ってみれば、後輪駆動が自慢の国産スポーツカーなどお話にならないくらい、深みのあるドライビングファンをみせた。

スパルタン志向では決してなかったけれども、ハードなだけのライドフィールよりも、一層愉快な気分に浸れるドライビングファンを体験することができた。

期待というものは、ときに嬉しく裏切られる。だから、クルマは面白い！