ホンダ シビックタイプRの軌跡 ~初代から最新モデルまで歴代モデルを徹底解説~
- 筆者: 渡辺 陽一郎
幅広い層に愛された「シビック」。コンパクトスポーティカーの代表であり続けた「タイプR」
2017年は昨年に続いて新型車の発売が滞り気味だが、ホンダは注目されるだろう。軽自動車で人気の高いN-BOXが2代目にフルモデルチェンジを行い、さらにシビックも発売されるからだ。
ホンダ シビックはかつて人気の高いコンパクトカーで、クルマ好きからファミリー層まで、さまざまなユーザーに愛用された。その理由はワイドなバリエーション展開だ。価格の安さを重視したベーシックなグレードから、峠道で運転の楽しさを満喫できるスポーティな仕様まで幅広く用意していた。
特に1997年に6代目のEK型に設定された初代タイプRは、運転の楽しさと求めやすい価格で高い人気を得た。この後もシビックタイプRは、コンパクトなスポーティカーの代表であり続けた。
そして2017年の8月頃(受注開始は6~7月の見込み)に発売される新型シビックにもタイプRが用意される。
ボディタイプは5ドアハッチバックで、エンジンは直列4気筒2リッターのターボ。最高出力は320馬力、最大トルクは400N・mとされるので、ターボを備えない自然吸気エンジンに当てはめると4リッター並みの性能だ。エンジンは基本的に先代型の5代目シビックタイプRと同じだが、最高出力は10馬力高められる。
新型シビックタイプRの発売に先立ち、改めてその足跡を振り返ってみたい。
シビックの人気を一躍高めたのは、1983年に発売された3代目、通称“ワンダーシビック”であった。
3ドアボディは全長の割にホイールベース(前輪と後輪の間隔)が長く、ルーフを低めに抑えて軽快な印象が強い。1984年にはツインカムエンジンを搭載するSiを追加して注目を集めた。
1987年には4代目が登場。
1989年になるとVTEC(可変バルブタイミング&リフト機能)を採用した1.6リッターのツインカムエンジンを搭載するSiR/SiRIIを加えた。
同年に一新されたインテグラが搭載したVTECと同じエンジンで、最高出力は160馬力(7600回転)、最大トルクは15.5kg-m(7000回転)。排気量1リッター当たりの最高出力が100馬力となり、高回転域で高出力を発生させるスポーツ指向が注目された。
この後、5代目シビックにもSiR/SiRIIが設定され、1.6リッターのVTECは最高出力が170馬力(7800回転)、最大トルクは16kg-m(7300回転)に向上した。
この時代のシビックはフルモデルチェンジを行うたびに走行性能を進化させ、クルマ好きに話題を提供すると同時に憧れの存在であり続けた。
そして1995年には6代目のEK型にフルモデルチェンジ。
この時には3ドアハッチバックのホイールベースが5代目の2570mmから2620mmに拡大され、セダンと共通化されている。
ホイールからボディが前後に張り出すオーバーハングが短く抑えられ、走行安定性の確保に有利な形状となった。SiR/SiRIIの設定も継承されている。
初代シビックタイプR(1997年/メーカー希望小売価格:199万8000円)
初代シビックタイプRは、1997年にEK型に追加された。ホンダNSX-R、ホンダインテグラタイプRに続くモデルとされ、当時はホンダの「R」が次第に身近になってくる印象を受けた。
1.6リッターのVTECエンジンを搭載しており、基本的にはシビックSiR/SiRIIと同じだが、最高出力は15馬力高い185馬力(8200回転)となる。1リッター当たり116馬力のハイチューンであった。最高出力の発生回転数も8200回転と高い。インテグラタイプRが搭載した1.8リッターVTECの8000回転、NSX-Rの7300回転を上まわり、抜群の吹き上がりで注目された。最大トルクも16.3kg-m(7500回転)に高められている。
運転感覚として印象に強く残るのはやはりエンジンで、一般的には6000回転前後が上限だが、シビックタイプRではそこを超える領域の回転上昇が鋭く官能的であった。5速MTのギヤ比も巧みで高回転域を維持しやすい。小気味良く決まるシフトレバーの操作性も優れていた。
走行安定性が高かったことも特徴だ。
2代目シビックタイプR(2001年/メーカー希望小売価格:220万円)
2001年にシビックは7代目にフルモデルチェンジを行い、国内仕様は5ドアハッチバックとセダンになる。
ハッチバックは従来の3ドアから5ドアに発展して、ホイールベースは2680mmまで伸びたから、セダンを含めて居住性が大幅に向上した。その半面、ボディの短い3ドアハッチバックは海外専用車になり、タイプRはホンダのイギリス工場製を輸入することになった。
エンジンは2リッターのVTECを搭載。最高出力は215馬力(8000回転)、最大トルクは20.6kg-m(7000回転)に向上する。エンジンやプラットフォームを含めて、同じ年に発売されたインテグラタイプRと共通性の強いクルマになった。
ホイールベースもインテグラと同じ2570mmだから、初代シビックタイプRに比べて50mm短い。その一方で車両重量は1190kgになり、初代シビックタイプRより100kg以上も重くなった。
3代目シビックタイプR(2007年/メーカー希望小売価格:283万5000円)
シビックは2005年にフルモデルチェンジを行い、国内仕様はハッチバックを廃止して3ナンバーサイズのセダンになった。
シビックタイプRは再び国内生産に戻り、セダンボディを採用する。3ドアのスポーツハッチがスポーツセダンに移行するのは、コンセプトに影響する大幅な変更であった。
エンジンは2リッターのVTECで、最高出力は2代目に比べて10馬力アップの225馬力(8000回転)。最大トルクも21.9kg-m(6100回転)だから、自然吸気の2リッターエンジンとしてはかなりの高性能だ。
車両重量は1260kgとさらに重くなったが、高回転域の伸びの良さを満喫できた。
4代目シビックタイプRユーロ(2009年/メーカー希望小売価格:298万円)
セダンをベースにした3代目シビックタイプRは短命に終わり、シビック自体も国内販売を終了した。
シビックはホンダの基幹車種であったが、当時はすでにフィット/フリード/ステップワゴン/ライフなどが好調に売れており、シビックは3ナンバーサイズのセダンになったこともあって売れ行きを低迷させた。そこでホンダはシビックの国内販売に終止符を打った。
それでもシビックタイプRはイギリス製の輸入車として継続され、シビックタイプRユーロの車名で、2009年/2010年の2回に分けて輸入されている。
ボディは3ドアハッチバックに回帰して、エンジンは2リッターVTECを搭載する。最高出力は201馬力(7800回転)、最大トルクは19.7kg-m(5600回転)だから、3代目シビックタイプRに比べると性能が下がった。
ボディが大幅に強化されてタイヤの接地性も向上したが、それ以上に駆動力が高い。
VSA(横滑り防止装置)をカットした状態で、カーブを曲がっている時にアクセルペダルを深く踏み増すと、一気に旋回軌跡を拡大させた。
通常であれば内側の前輪が空転して駆動力を逃がすが、シビックタイプRはタイヤの接地性が高く、両方の前輪が空転して横滑りを発生させる。これは運転の仕方の問題で車両の欠点ではないが、スバル WRX STIの2WD仕様という印象で、駆動力が前輪駆動の許容範囲を超えていると思えた。
逆にいえば最速の前輪駆動(FF)で、価格も428万円。従来のシビックタイプRとはまったく違う高性能車となった。
疑問を感じたのは売り方で、750台の限定販売とされた。
しかも申込みをウェブサイトで受け付けたから、購入する気のない人の応募も相当数にのぼったはずで、抽選は高倍率になった。
シビックタイプRは欧州では普通に売られるので、販売店で通常の契約を行い、オーダーされた台数だけ輸入すれば良い。欲しいのに買えない人が発生する売り方は、メーカーとして不親切だ。
発売は2017年の夏頃だが、同時期にN-BOXのフルモデルチェンジも行われ、シビックが埋もれる心配がある。現行オデッセイも、N-WGNやフィットと発売時期が重なって不発に終わった感がある。
最近のホンダは新型車を一時期に集中させて、1車種当たりの販売力を弱める傾向が見受けられる。今回のシビックが失敗すると国内では永遠に購入不可能になるだろうから、往年のシビックファン、ホンダファンのためにも必ず成功させて欲しい。
シビックタイプRについては、ターボの装着で価格が極端に高くなったことも疑問だ。自然吸気エンジンで運転の楽しさを手軽に味わえてこそ、本来のタイプRだと思う。実のところ、この国で今求められているスポーティカーは、フィットのタイプRなのかもしれない。
[レポート:渡辺陽一郎]
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