ハイブリッド高級サルーン 徹底比較(2/4)

ハイブリッド高級サルーン 徹底比較
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マイルドで燃費志向のセッティング

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13代目クラウンは2008年2月に登場。先にロイヤルサルーンとアスリートが発売され、5月にハイブリッドが追加された。

ハイブリッドのエクステリアは、アスリート系のエアロフォルム、ロイヤルに近いメッキの横桟を強調した専用グリル、専用デザインのホイールなどが与えられた。また、淡いブルーのリアコビランプやエクステンションなどが先進性を表現している。

ハイブリッドの基本メカニズムはレクサスGS450hと同じ。3.5L V6の筒内直接+ポート噴射のエンジンに電気モーターを組み合わせることで、GSの際にも謳っていたように、4.5L並みの動力性能と2.0L並みの低燃費を両立したという。10・15モード燃費は15.8km/L、JC08モードによる燃費は14.0km/Lと優秀で、新燃費目標基準である「2015年度燃費基準」も達成している。

GS450hとは、エンジンのカタログスペックも同じだが、キャラクターはかなり異なる。最終減速比が異なり、高速巡航時などエンジン回転数を抑える設定となっている。静粛性もLS並みとはいわないが、GSよりもだいぶ高くなっている。さらに、加速感を過度に演出することもないし、ブレーキングにおいても、回生と減速の兼ね合いで生じる違和感が薄れている。総じて、GSよりもずいぶん運転しやすく仕上がっている。それでいて、ハイブリッド特有のトルクでグイグイと押していく感覚は、このクルマの大きな魅力であり、けっして損なわれていない。

さらに、クラウンでは「EVモード」が新設定されたことも大きなニュースである。スイッチを操作することで、微低速でのちょっとした移動など、一定条件下ではモーターのみで走行できるようになるので、深夜の帰宅などで重宝するはずだ。

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“速さ”をわかりやすくアピール

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こちらも、ハイブリッドを象徴するブルーを、エンブレムやヘッドライトなどにあしらっている。2007年秋の一部改良により、外観はフロントグリルや前後バンパーのデザインを変更。ターンランプ付きサイドミラーも採用された。

ハイブリッドシステムは、クラウンにも搭載された3.5L V6エンジンにモーターを組み合わせたもので、10・15モードで14.2km/L、最新のJC08モードによって12.8km/Lとし、2015年燃費基準をいち早く達成した。

GS450hは、発進加速がめっぽう速いことが印象的だ。いわば過給機付きエンジンで、踏み始めのごく低回転の領域から、いきなりハイブーストが立ち上がるような感覚である。ただし、車重が重いので、重いものを強引に速く走らせるという感覚ではある。

遊星ギアを用いた無断変速ギアは、ATのようなリニアさはなく、回転が上がって、やや遅れて加速がついてくる感覚で、つまりCVTに近い。

一発進&停止を繰り返すシーンでは、モーターによる駆動力の立ち上がり方がスイッチ的で、加速状態に入る際に少しガクンとなることと、さらには一定速をキープすることがちょっと難しいところが気になる。また、ブレーキタッチにもハイブリッド車特有の違和感が残る。

また、全体的に乗り心地が固めで、ハイブリッドシステム搭載によるバネ上重量の増加と、それで誘発される微振動が収束しにくい面がある。高級サルーンとして見るともう少しソフトでもいいかと思うが、スポーツセダンとして見れば、これでいいのかもしれない。

ただし、正式にはアナウンスされていないが、デビュー当時よりもランニングチェンジされたのが、いくらか洗練されたように感じられた。

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ハイブリッドを極めたレクサスのフラッグシップ

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2006年9月に登場したレクサスのフラッグシップであるLSに、2007年5月にはハイブリッドのLS600hが追加された。LS460よりも排気量の大きい5L V8エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせ、6L並みの動力性能を発揮。駆動方式は、今回唯一のフルタイムAWDを採用していることも特徴だ。

2008年4月にJC08モード走行燃費11.0 km/L(10・15モードで12.2km/L)の認可を取得するとともに、2015年燃費基準を達成した。外観では、LED3眼一体型プロジェクターヘッドランプがもっともわかりやすい識別点だろう。

AWDとされた新開発ハイブリッドシステムは、複雑な制御をこなしている。前後輪に動力を分配するトランスファーと、内蔵されるセンターディファレンシャルに、最適な駆動力をレスポンスよく配分するトルセンLSDを採用。高いスタビリティとナチュラルなハンドリングを両立している。

前輪も駆動するためサスペンションも新設計されているが、キャスターを立てるなどジオメトリーが見直されたことで、こちらのほうがガソリンエンジン車よりも中立付近のステアリングフィールがよくなったように感じられた。一方で、ハンドリングは限界域ではアンダーステアが強く、最終的にはVSC頼りとなる。

走りのフィーリングは、ベースのLS自体が、前記の2台よりもさらに上の次元の滑らかさと静粛性を実現しており、あまりにもスムーズである。そして、踏み込めばスムーズなままにモーターが押し出すトルクによる力強い加速感を得ることができる。

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デザイン・スペックの総評

クラウンとGSを乗り比べると、2年分の差が明確に出ていた。ストレートに表現すると、GSは少々荒削りで、クラウンではだいぶ洗練されている。GSは動力性能をわかりやすく演出したきらいがある。ブレーキも、回生がかかると微妙にコントロール性が悪化するし、フットワークもやや突っ張った感じで、硬さを感じる。そのあたりが、クラウンではだいぶ払拭されている。アクセルを踏んだときの加速の仕方のマナーもよい。ただし、当然ながら車重の重さはどちらも感じる。

スペック的にはLSが一番上ながらも、GSやクラウンの方が速く感じるし、実際そうなのだが、LSのスムーズさには絶対的な価値がある。

高級車にハイブリッドを積むことが生む商品性の高さは、クラウンやGSのほうが大きく感じられるのではと予想していたが、現時点では、LSがもっとも上だろう。

ちなみに、今回の取材車両についての燃費の過去最高値(各車が取材前にどのよう走行したのかは定かではない)は、クラウンが11.8km/L、GSは10.8km/L、LSは9.9km/Lとなっていた。

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岡本 幸一郎
筆者岡本 幸一郎

ビデオ「ベストモータリング」の制作、雑誌編集者を経てモータージャーナリストに転身。新車誌、チューニングカー誌や各種専門誌にて原稿執筆の他、映像制作や携帯コンテンツなどのプロデュースまで各方面にて活動中。記事一覧を見る

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