【ahead femme×オートックワン】-ahead 11月号-「ahead STORY 大人の女のひとり旅」(2/3)
- 筆者: 岡 小百合
40代――相棒と日本を旅したくなった
ところが40歳を境に、自分の意識が、日本の中にも向き始めたことを感じるようになった。今回の目的地が金沢であることも、その証拠のひとつだ。
これが出張ならば、何の迷いもなく、羽田と小松空港を往復するエアチケットを、手配していたことだろう。あえて、自ら運転してクルマで行く、と決めたのは、日常から非日常へと移動する時間そのものを、刻一刻とかみしめたかったからだ。大地の上で。まるで、線をたどっていくかのように。
それに加えて、実は相棒がMiToであることとも、関係があるような気がしている。
とりわけ、ルックスの美しさに惹かれて、決めたパートナーだった。美の国であるイタリアが生み出したクルマらしい、情熱的でアグレッシブなスタイリング。深紅のルージュにも似た、イキイキとしつつ、艶めかしくもあるカラーリング。そうした要素が、実はブロンドやブルネットばかりでなく、アジアの地に育まれた大人の女性の、潤った肌や艶やかな黒髪を引き立ててくれるだろうことも、見越して選んだ1台だった。
だから、MiToと自分の組み合わせを、「似合う」とか「素敵」などと評価されることは、嬉しい反面、想定内とも言えるのだった。
想定外だったのは、走らせた時のフィーリングだ。そしてそれこそが、自動車でのひとり旅へと、背中を押してもくれたのだ。
東京都心の自宅マンションを出発したのは、まだ朝日が昇りきらない時分だった。それから2時間半ほどの間、ハンドルを握っている。
途中、一度だけサービスエリアに立ち寄り、熱いコーヒーで喉を潤した。しかしそれは、意識的に休憩をとらなければ、と自分に言い聞かせたからのこと。そうでなければ、休憩もとらずに走り続けていたかもしれない、と感じている。
それほどに、MiToは私に、ネガティブなストレスを与えない。むしろ積極的に、前へ進むことそのものを、快楽にしてしまうようなところがある。
このクルマとつきあえばつきあうほど、その確信は、深まるばかりなのだ。日常的に都心を走るのでは飽き足らず、こうして金沢を目指しているほどに。
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