HVのトヨタからEVのトヨタへ? 本格的なEV戦略を発表した理由とは(1/2)

なぜ、トヨタの中国・インド向けのEV戦略が同じ日に発表されたのか?

トヨタもついに本格的な「EVシフト」か!? そんな雰囲気が11月半ば、自動車産業界の中で一気に広がった。

まずは11月17日、中国の広州モーターショーで「2020年にEVを導入する」と発表した。これと同時に、現在中国でハイブリッド車を主力に販売を強化している「カローラ」と「カローラレビン」についてはPHV(プラグインハイブリッド車)の導入を決めた。

これと同じ日、「スズキとインド市場向けEV投入」に関する覚書を締結した。具体的には、トヨタがスズキに対してEV関連の技術を提供し、完成した車両をトヨタブランドとしてもインド国内で発売するというものだ。

>>トヨタ新型レビン ハイブリッド等写真で見る(画像16枚)

それにしても、一体なぜ、トヨタは中国とインド両国でのEV戦略をまったく同じ日に発表したのか?

その裏にあるのは、両国政府が進める施策への対応と、ジャーマン3たちへの牽制だ。

一気にEVシフトを進める中国、先行き不透明なインド

中国とインド、両国政府はEV普及に対する施策を打っている。

中国ではNEV法(ニュー・エネルギー・ヴィークル《新エネルギー車》規制法)が2019年から実施されることが決まっている。これにより、自動車メーカー各社は中国政府が定めたNEV台数をクリアしなければならない。

NEVとは、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、そして燃料電池車(FCV)を指す。これら3種類のNEVに対して、満充電(または水素の満充填)で走行可能な航続距離に応じてNEVクレジットを獲得することができる。EVの場合、航続距離350km以上で最大点数の5点となる。

現時点では、2019年と2020年でのNEV法の基準が発表されているが、2021年以降は自動車メーカー各社にとってさらに厳しい規制内容になると考えられる。

しかし、中国では2000年代後半から2010年代初頭に、中国全土の25都市でバスやタクシーなどの公共交通機関を中心とした大規模なEV施策が打たれたが、なんの前触れもなくいきなり施策が中止されたことがある。

こうした過去の体験を踏まえて、トヨタをはじめとする日系自動車メーカー各社は、今回のNEV法について慎重な構えで臨んでいる。

一方、インド政府では2013年からEV普及の実施を想定したシナリオが作成された。それに基づき、昨年からインド政府の要人たちが各種カンファレンスの席上などで、EVに関する施策を実施をちらつかせてきた。そして今年7月には「2030年までにインド国内で走るクルマをすべてEVにする」といった内容の発言が、インド政府の一部から飛び出した。

ただし、こうしたインドのEVシフトの考え方について、インド政府は一枚岩ではない模様であり、今後の展開を注視するべきだ。

トヨタとしては、世界最大市場である中国でのEV導入計画発表を、近年中に人口世界一位となることが確実なインド向けEV開発と同時発表することで、中国とインドの両政府に対して「トヨタはEVに柔軟に対応する」という企業の姿勢をアピールしたといえる。

>>次のページへ 【ジャーマン3の「EVシフト」への牽制】

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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