BMW i8のデザイナー、テスラモデルSの開発トップを引き抜いた謎のEVベンチャーが表舞台に!
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:ファラデー・フューチャー/桃田健史
設立から1年半が経ち、ついに表舞台に登場した「謎のEVベンチャー」。だが、やっぱりその実態は謎だらけだった。
世界最大級のITおよび家電の見本市、CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)が今年もラスベガスで開幕した。
1月6日からの一般公開を前に、2日前の1月4日は報道陣向けの記者会見が始まった。そのなかで、大きな話題となったのがEVベンチャーの「ファラデー・フューチャー」だ。
特設会場に登場したのは、ルマン24時間レースに出場するようなカタチのレーシングカー。マシンのフロントからリアにかけて、2本の巨大なエアトンネル。リアカウルの中央には、超高速走行でマシンの操縦安定性を狙った垂直ウイングが目立つ。
インテリアは、一人乗りで、酸素は供給するシステムを組み込んだ専用ヘルメットを着用するという。ダッシュボードは、スマートフォンでコントロールし、自動運転を含めた次世代型の「情報コネクテッドカー」だ。
シャーシは、搭載する二次電池パッケージの容量に応じて、「ホイールベースを自在に変更できる」プラットフォームを採用した。またモーターの搭載位置や数もフレキシブルで、FR、FF、AWDなど、どのような駆動方式にも対応する。
モーターの出力、電池の容量、満充電での航続距離、最高速度、そして販売価格と発売時期など、すべては「未定」という徹底した秘密主義だ。
明らかになっているのは、「ラスベガス北部に新設する工場で、可能な限り早期に量産する」ということだけだ。そのうえで、今回のコンセプトモデルはレーシングカーのイメージだが、「今後はセダン、SUVなど、量産車として多くのラインアップを投入する予定」(開発担当者)と説明した。
いったい何者なのか?
300人強が詰めかけた記者会見は、Ustreamで生中継された。その映像のなかでも目立ったのが中国人の存在だ。
記者会見の最前列の中央にも、中国人がズラリと並んだ。彼らは、ファラデー・フューチャーが「パートナー」と呼ぶ、中国の動画配信企業「LeTV」の関係者だ。「インベスター(出資者)ではなく、パートナーだ」とファラデー側は強調する。
また、ファラデー・フューチャーの共同経営者も中国人で、彼は中国の上海GMの元幹部だ。そうした中国オペレーションのもとで、開発担当者は、ロータス、レンジローバーと渡り歩き、前職はテスラで「モデルS」と「モデルX」の開発総責任者を務めた人物、ニック・サンプソン氏をテスラから引き抜いた。
このほか、主要な開発関係者はテスラからの転職組が多い。デザインには、BMWで「i3」「i8コンセプト」を描いたトップクラスのデザイナーを起用した。
本社の所在地は、ロサンゼルス近郊のガーディナ市で、本社の所在地は北米日産が10年前まで使っていた大型ビルだ。そこで働く正社員が550人で、さらに海外拠点に200人、合計750人体制。
だが、「最高経営責任者(CEO)は現在、いない」という。謎多きEVベンチャー「ファラデー・フューチャー」。今回の発表でわかったのは、巨額の投資が中国からアメリカの次世代車開発に注がれているという事実だけだった。
[Text:桃田健史]
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