トランプ訪日でGPSが狂った!? まさかの理由で自動運転の問題点が浮き彫りに(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:日産自動車
日産の最新型自動運転車の試乗で”あれ?”
2017年11月7日 火曜日の午前10時過ぎ、JR新橋駅から無人運転の「ゆりかもめ」に乗って、台場駅に到着。フジテレビとは逆方向、ヒルトン東京お台場で、日産関係者と合流した。そこから、エルグランドの送迎車に乗り、ゆりかもめ市場前駅に近い公道で降りた。
日産の最新型自動車両の試乗は、ここがスタート地点でありゴール地点だ。登場したのは、スカイラインハイブリッドをベースとした実験車。バックアップを含めて2台用意されていた。
車体の外部には、カメラ、レーザースキャナー、ミリ波レーダー、そしてソナー(超音波センサー)など、各種センサーがてんこ盛り。一方、車内の感じは普通のクルマっぽい。
インパネ部分にはカメラによる画像認識を行い、前方の人や車を赤色や緑色で枠組みする様子が映る。
走行ルートは、一般道から首都高湾岸線を通り、首都高中央環状線(C2)を抜けて、船堀橋で一端降りてUターンして再び首都高で戻って来るという約20kmだ。そのほとんどは、
順調に自動運転が実行された。
だが、気になったことがあった。走行を始めて数分後、一般道を左折した際、想定の車線から一本車線がずれて走行してしまった。これについて日産側は「どうも今朝から、GPS受信の状態がいつもと違う」と説明した。
日産の自動運転車では、GPSによって大体の自車位置を測定し、さらにゼンリンが作成した高精度地図にある情報と自車カメラの映像によって得た周囲との情報との「差分(さぶん)」を見ることで、自車位置の精度を上げている。
だが、基本となるGPSの精度が甘いとなると、通常以上の位置補正をかける必要がでてくる。実はこの日、米ドナルド・トランプ大統領が日本から韓国に向けて飛び立っており、それに伴う交通規制などが懸念されていたのだ。
”GPS”はアメリカ空軍管理の軍事衛星
うがった見方をすれば、トランプ大統領が都内を車で移動する期間、そしてエアフォースワンの離着陸の時間帯、日本国内で受信するGPSの電波に国家安全保障上の「制限、加工、修正」などがなされてもおかしくはない。
GPSとは、グローバル・ポジショニング・システム。衛星からの電波を受信することで自分の位置を測定する衛星測位システムのひとつだ。GPSは一般名詞であり、普通名詞としてはGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト・システム)と呼ばれ、ロシアのグロナス、中国の北斗、EUのガリレオ、インドのイルネス、そして日本の准天頂衛星システムがある。
GPSはアメリカ空軍が実質的に管理する軍事衛星で、その数はバックアップを含めて現在、35基前後だ。そうした各GPSの機能の一部を民生向けに開放しているに過ぎない。
筆者は欧米で開催されるGNSSの国際的な技術会議などを取材しているが、近年になりGPSの世代交代が進む中、GPSのミリタリーコードと呼ばれる民間企業にとって”アンタッチャブル”な技術領域が増えていることが明らかになっている。その点について、民間企業側から「電波の技術を、より詳細に公開してほしい」という質問が出ると、空軍の制服組が「ご承知置きかと思うが、GPSは軍需目的の衛星の一部を無償で民生向けに開放している。有事の際など、我々がGPSから送信する電波の一部に制限をかけることは十分にあり得ることを、再認識して頂きたい」と明言している。
GPSのサービスを利用する際、カーナビメーカーもスマホメーカーも使用料や手数料を支払わないどころか、GPSの使用許可すらも必要とされていないのが実態だ。
今回、トランプ大統領の初訪日によって、ミリタリーコードなどGPSから発する電波の一部が「加工や修正」が行われた可能性は十分にある。高精度な自車位置測定が必要な自動運転の実証で、GPSの本性が浮き彫りになってしまったのかもしれない。
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