トヨタ新型ハリアー燃費レポート|2リッターターボとハイブリッドを徹底比較!(1/2)
- 筆者: 永田 恵一
トヨタ ハリアー ターボ実燃費レポート|結果まとめ
今回の燃費テストは2017年6月にマイナーチェンジされ、その際に2リッターターボエンジンが追加されたミドルSUVのトヨタハリアーを計測。グレードは最上級となるPROGRESSの4WD(車両本体価格424万4400円、JC08モード燃費12.8km/L)を起用した。
テストは6月28日(水)に、前回掲載した日産エクストレイルのマイナーチェンジモデルと同行する形で午前8時頃開始し、午後5時半頃帰京するというスケジュールで実施。テスト中の天候は雨のち曇り、高い湿度の中最高気温28度という梅雨らしい気候で、交通状況は市街地で激しい渋滞に見舞われた。なおノーマルとロングから選択できるアイドリングストップのモードは標準となるノーマルを選択した。
ハリアー2リッターターボの燃費は以下の通りの結果となった。
ハリアー2リッターターボ4WD 実燃費まとめ | ||
---|---|---|
車種名 | ハリアー2リッターターボ4WD | <参考値>現行初期型ハリアー2リッターFF |
カタログ燃費(JC08モード) | 12.8km/L | 16.0km/L |
高速道路 | 15.5km/L | 18.1km/L |
市街地(街乗り) | 8.9km/L | 12.9km/L |
郊外路 | 12.1km/L | 15.1km/L |
総合 | 11.7km/L | 15.3km/L |
ハリアー2リッターターボと2リッターNAの実燃費を比べると、動力性能の向上を考えれば及第点というレベルで、特筆して良くはないというのが率直な印象だ。
ここからは高速道路編、市街地編、郊外路編、それぞれの章で燃費や走りの質について詳細な評価を行っているので、ハリアーを含めたミドルSUVの購入を考えている方にはぜひ参考にして欲しい。
トヨタ ハリアーとは
初代モデルが1997年12月に登場したトヨタハリアーは、海外ではレクサスRXの車名で販売される、豪華さや快適性といった高級車の魅力をSUVにミックスしたモデル。その後、2003年にフルモデルチェンジされた2代目モデルも含め、世界的に成功を収めたモデルとなった。
2代目モデルのモデルサイクル途中まで日本にレクサスチャンネルがなかったため、レクサスクオリティを持つ割に価格がリーズナブルなこともあり、ハリアーは日本でも人気車となっていた。しかし2005年に日本でもレクサスが開業したこともあり、2009年にレクサスRXが3代目に移行したタイミングで、ハリアーはしばらく継続販売されたあと廃止となる計画だった。だが継続販売されたハリアーは根強い人気をキープ。一時期販売がストップした時期があったものの、販売サイドの要望もあり、SUVとしては異例の日本専用車として2013年11月に3代目となる現行モデルが登場した。
ミドルSUVクラスに属する現行ハリアーのコンセプトは、ズバリ「若い人でも少し背伸びをすれば自分のものにできるコストパフォーマンスの高さも備える高級ミドルSUV」といったところである。そのため、ハリアーらしい高級感とスポーティさを併せ持つエクステリアはもちろん、特にインテリアは木目調パネルや合皮素材を多用し、キルティングのようなシート生地を採用するなど、コストを抑えつつも見映えのする分かりやすい上質さを演出しているところが上手い。結果現行ハリアーは過去に一世を風靡したトヨタマークII兄弟のような存在に近い人気車となっている。
マイナーチェンジ前のエンジンラインナップは、2リッター直4NA(最高出力151馬力&最大トルク19.7kgm、FFに加え4WDの設定もあり)と、4WDとしても機能する2.5リッター直4ハイブリッド(実質的な最高出力となるシステム出力は194馬力)の2つだった。 しかしユーザーなどから「2リッターNAに対しもう少しパワーのあるハリアーが欲しい」、「2リッターNAとハイブリッドの中間に位置するハリアーが欲しい」という声もあり、今回のマイナーチェンジで2リッターターボが追加された。
マイナーチェンジでハリアーに追加された2リッターターボは、細かな違いはあるが、トヨタではクラウン、レクサスセダンのGSとIS、SUVのRXとNXなどに搭載されるエンジンと同じもの。ハリアーに搭載される仕様は、最高出力231馬力&最大トルク35.7kgmという、NAエンジンでいえばV6の3リッターから3.5リッター級のスペックを持つ。この2リッターターボは、アクセルを踏んだ際のレスポンスに優れるツインスクロールターボチャージャーの他に、効率の向上に貢献する水冷インタークーラー、燃料噴射に直噴用と通常のポート噴射用2つのインジェクターを使うD-4STやアイドリングストップを採用。 トランスミッションは、レクサスRXやNXと同様の6速ATとの組み合わせで、JC08モード燃費ではFF車13.0km/L、4WD12.8km/Lという数値をカタログに載せる。
※残念ながらエコカー減税は適応とならない。
最近では車を選ぶ際の重要なポイントとなっている安全装備、特に自動ブレーキに関しては、以前のハリアーはライバル車に比べて劣勢であったが、トヨタセーフティセンスPが全グレード標準装備となったことで、その点の評価は変わった。トヨタセーフティセンスPは、ミリ波レーダーと単眼カメラからの情報を基盤に、プリクラッシュセーフティシステム、車線逸脱を防ぐレーンディパーチャーアラート(LDA)、夜間にハイビームを積極的に使うオートマチックハイビーム、停止まで対応するアダプティブクルーズコントロール機能から構成される。その自動ブレーキの性能は、車両などの物体に対しては50km/hから、単純な歩行者の飛び出しには60km/h、陰から歩行者の飛び出しに対しても35km/hから停止できる性能を有しており、300万円以上の車の装備としても十分満足できる性能を備えている(※同等の自動ブレーキ性能を有するトヨタプリウスがJNCAPの評価で得た成績を参照)。
ハリアー ターボ実燃費レポート|高速道路編
ハリアー2リッターターボ4WDの高速道路での実燃費:15.5km/L
高速道路での燃費は15.5km/Lを記録した。今回は、マイナーチェンジ前のハリアーの2リッターガソリンとハイブリッドの数値も記載するが、動力性能を考えれば相応の数値といえる。 2リッターガソリンとの燃費の差となった要因を挙げるなら、ターボ化とブロック(エンジン本体)が違うことによる車重の重さ、2リッターガソリンはCVTであるため巡航中のエンジン回転数が2リッターターボより低かったことの2点が思い浮かぶ。
ハリアー2リッターターボ4WD 高速道路実燃費 | |||
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車種名 | 駆動方式 | 高速道路実燃費 | カタログ燃費 |
ハリアー 2リッターターボ | 4WD | 15.5km/L | 12.8km/L |
現行ハリアー(初期型) | 2WD | 17.4km/L | 16.0km/L |
現行ハリアーハイブリッド(初期型) | 2WD | 18.9km/L | 21.4km/L |
高速道路編では、主にハリアー2リッターターボのドライバビリティ(運転のしやすさ)を含めた動力性能と、トヨタセーフティセンスPのアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)やレーンディパーチャーアラート(以下LDA)を使った印象をお伝えしよう。
まずハリアー2リッターターボのアクセルを深く踏んだ際の動力性能は、“本格的な加速が始まれば”約1.7トンの車体をグイグイと引っ張る、スペック相応の力強さ、速さを備えている。だがエンジン音、エンジン回転の上昇に伴う盛り上がりやパンチとった面白味に関しては、特に目を引く部分は見つけられなかった。
“本格的な加速が始まれば”と書いたのは、ハリアー2リッターターボは2000回転くらいからターボチャージャーが回り出し、本格的に機能し出したように感じるのは3000回転あたりと、時間差が生じたからだ。これは大きな問題ではないものの、輸入車やホンダの1.5リッターのような、よくできたダウンサイジングターボが持つ低回転域のモリモリとしたトルク感がなく、常用域で特に力強さを感じられないのは残念であった。同様に、これも大きな問題ではないものの、トップギア6速の状態で、80km/hあたりから追い越し加速を想定してアクセルを全開にすると、加速が半テンポ遅れたり、加速が2段階のようになるケースがあるのも少し気になった。これは上り坂になっていると顕著な特性だった。
なおトップギアの6速で100km/h走行時のエンジン回転数は1800回転程度。5速には70km/h程度、6速には80km/h程度でシフトアップされる。
高速道路でACC(ブレーキ制御・全車速追従機能付レーダークルーズコントロール)を使った印象は、追従する先行車に対する加速、減速ともにスムースで、ドライバーは前方の監視と構えをしながら安心して車に運転を任せることができた。
また、ステアリング制御付LDA(レーンディパーチャーアラート:車線逸脱警報)は車線の中央をキープするのではなく車線の逸脱を防ぐためステアリング操作を行うものであるが、以前のものよりも強くステアリング操作を行っている印象で、「車線逸脱を防ごう」という強い意志が感じられた点には好感を持った。
安全装備といえばハリアーは最低300万円、ハイブリッドの最上級グレードなら約500万円の高額車なのに、カタログのどこを見てもブラインドスポットモニタリングと呼ばれる、斜め後方の監視システムがないのは非常に残念である。もちろん、トヨタセーフティセンスPの全グレード標準装備化は高く評価できるが、役立つ頻度が多い斜め後方の監視システムの設定も早期に願いたいところだ。
ハリアー ターボ実燃費レポート|市街地編
ハリアー2リッターターボ4WDの市街地での実燃費:8.9km/L
市街地での燃費は8.9km/L。テスト日の交通状況や2リッターガソリンに対する動力性能の向上を考えれば及第点といえる数値であった。しかし高速道路編でも書いたようによくできたダウンサイジングターボのような低速トルクの太いエンジンに進化すれば、現状2000回転を少し切るあたりで行われるシフトアップのポイントも低くなり、さらに燃費も良くなるのではないかと思う。
ハリアー2リッターターボ4WD 市街地実燃費 | |||
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車種名 | 駆動方式 | 市街地実燃費 | カタログ燃費 |
ハリアー 2リッターターボ | 4WD | 8.9km/L | 12.8km/L |
現行ハリアー(初期型) | 2WD | 12.9km/L | 16.0km/L |
現行ハリアーハイブリッド(初期型) | 2WD | 17.4km/L | 21.4km/L |
市街地編では、アイドリングストップやACCを街中で使った印象を中心に書こう。
ハリアーの2リッターターボのアイドリングストップは、停止後ブレーキペダルを踏み足すと始まる仕様で、不必要なアイドリングストップが起きにくいという意味で好ましいタイプだ。 アイドリングストップからのエンジン再始動は素早く、セルモーターの音は油断していると分からないくらい小さく抑えられており、アイドリングストップに関するインフォメーションがそれなりに充実している点も高く評価できる。
テストした日が気温に加え湿度が高かったことに加え、渋滞も激しかったため、アイドリングストップしないことや、停止中アイドリングストップからエンジンが再始動してしまうこともしばしばあった。
また、アイドリング中はややエンジンの振動が大きいが、アイドルストップがあるため問題ないといっていいだろう。
街中でACCを使った印象も、高速道路と同様に加減速がスムースで、全体的に安心して車に運転を任せることができた。特にブレーキに関しては、今回のマイナーチェンジでパーキングブレーキが電動タイプになったため、ACCに任せた状態で停止すると、ブレーキホールド機能が働きアイドルストップが始まる。ドライバーの運転でもブレーキホールド機能をオンにすると、ブレーキホールドが働きアイドルストップが始まり、停止中ブレーキペダルを踏み続ける作業から解放され非常に楽であった。
ハリアー ターボ実燃費レポート|郊外路編
ハリアー2リッターターボ4WDの郊外路での実燃費:12.1km/L
郊外路での燃費は12.1km/Lと、動力性能の向上を考えれば納得できる記録ではあった。ただ、CVTでエンジン回転を下げて巡航できる2リッターガソリンに比べると、2リッターターボは郊外路だとギアがトップギアの6速には入らず5速止まりなのは辛いところだった。
ハリアー2リッターターボ4WD 郊外路実燃費 | |||
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車種名 | 駆動方式 | 郊外路実燃費 | カタログ燃費 |
ハリアー 2リッターターボ | 4WD | 12.1km/L | 12.8km/L |
現行ハリアー(初期型) | 2WD | 15.1km/L | 16.0km/L |
現行ハリアーハイブリッド(初期型) | 2WD | 19.5km/L | 21.4km/L |
現行ハリアーは、ハンドリングや乗り心地といった、車に乗っていて感じる「質」に関しては、特に秀でたものはなかった。マイナーチェンジによるある程度の良化は確認できたものの、マイナーチェンジ前に対して大きな違いではなかった。
まずハンドリングに関してはコーナーではそれなりのロールはするものの不安感はない。しかし、特にハンドル操作に対して車の動きがシャープでも正確でもないため、ミドルサイズSUVとしては全体的に普通といった評価に落ち着く。
乗り心地もマイナーチェンジ前に比べ、大きめの路面の凹凸を通過した際の突き上げが若干丸められているようで改善は感じられるのだが、路面の荒れ方によっては少し硬さや上下動の収まりの悪さを感じるのが残念だった。 現状の乗り心地でも350万円程度の価格であれば納得もできるのだが、ハリアー2リッターターボはカーナビを着ければ簡単に400万円近くなる車なだけに、価格相応のプレミアム感のある乗り心地が欲しい。
なお、テスト前に2リッターターボで選択できるエコモードとスポーツモードを試したところ、エコモードはエアコンが控えめになりアクセル操作に対するレスポンスが適度に鈍くなる。また、スポーツモードはアクセル操作に対するレスポンスがシャープになり、ステアリングが重めになるという、いわばお決まりの変化が確認できた。普段乗る際には特にデメリットを感じないエコモードを選ぶのがいいだろう。
ハリアー ターボ実燃費レポート|総合評価
ハリアー2リッターターボ4WDの総合実燃費:11.7km/L
ハリアー2リッターターボ4WD 総合実燃費 | |||
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車種名 | 駆動方式 | 総合実燃費 | カタログ燃費 |
ハリアー 2リッターターボ | 4WD | 11.7km/L | 12.8km/L |
現行ハリアー(初期型) | 2WD | 15.3km/L | 16.0km/L |
現行ハリアーハイブリッド(初期型) | 2WD | 18.6km/L | 21.4km/L |
ハリアー2リッターターボは、ハリアーのバリエーションにおいて「価格は2リッターガソリンとハイブリッドの中間、燃費は一番悪いけど、動力性能は最強」という立ち位置通りの存在だった。
ハリアーという車の豪華さは多くは書かないが、見えにくいところに手抜きや安さが否めず、表面的な豪華さというのが率直な感想だ。
それだけに筆者としては予算があり、動力性能の高さという価値を認める人には追加された2リッターターボも反対はしないが、ハリアーの本質は豪華な割にリーズナブルに感じる2リッターガソリン、ハリアーらしい高級なイメージや安楽さを求めるならハイブリッドにあるのではないかと思う。
新型ハリアー購入指南|燃費だけで選ぶならやはりハイブリッドがおすすめ
最後に2リッターターボの4WDとハイブリッドの長い目で見た損得勘定を考えてみよう。
まず同じPROGRESSグレード同士だと、2リッターターボの4WDとハイブリッドには約36万円の価格差があるが、2リッターターボはエコカー減税が適応されないのに対し、ハイブリッドは取得税と重量税が免税になるのに加え、翌年の自動車税も75%軽減となるため、翌年の自動車税まで含めた購入時の実質的な価格差は約18万円まで縮まる。
ガソリン代は、2リッターターボの4WDはハイオクガソリンを必要とするため1リッター141円、燃費を今回の総合燃費11.7km/Lで計算。ハイブリッドはレギュラーガソリン1リッター130円、燃費は過去データの18.6km/Lで計算すると、1万kmあたりのガソリン代はハイブリッドが7万円も安く済むことになり、2リッターターボの4WDとハイブリッドの実質的な差額18万円は3万km走れば元が取れる計算となる。
といったことを考えると(もちろん車は燃費だけで選ぶ訳ではないが)ハリアーに関しては、やはりリーズナブルに済ませるなら2リッターガソリン、予算があるならハイブリッド、ターボはその動力価値を見出せる人ならアリ、というのが選ぶ際の基本的な考え方となるだろう。
トヨタ 新型ハリアー PROGRESS[4WD] スペック(主要諸元)
トヨタ ハリアー2017年6月マイナーチェンジモデル 主要諸元 | |
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グレード | PROGRESS[4WD] |
JC08モード燃費 | 12.8km/L |
価格 | 4,244,400円 |
駆動方式 | 四輪駆動(4WD) |
トランスミッション | スーパーインテリジェント6速オートマチックトランスミッション(6 Super ECT) |
全長 | 4,725mm |
全幅(車幅) | 1,835mm |
全高(車高) | 1,690mm |
ホイールベース | 2,660mm |
乗車定員 | 5名 |
車両重量 | 1,730kg |
エンジン | 直列4気筒 DOHC インタークーラー付ターボチャージャー ガソリン直噴エンジン |
排気量 | 1,998cc |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
エンジン最高出力 | 231ps(170kW)/5,200-5,600rpm |
エンジン最大トルク | 35.7kgf-m(350Nm)/1,650-4,000rpm |
サスペンション形式 | (前)ストラット式 (後)ダブルウィッシュボーン式 |
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