日産 セレナ 試乗レポート
- 筆者: 松下 宏
- カメラマン:小平寛
忠実に“ミニバン”
5ナンバーサイズに収まる手頃なボディを持つ日産の小型ミニバン。全高が低めのラフェスタに対し、かつての1BOXワゴンを思わせるような背の高いパッケージングを特徴とする。今回のモデルでは全長を延長して角張ったボディを作ることで、小型ミニバンでは最大級の室内空間を持つようになった。
搭載エンジンは従来あった2.5Lが廃止されて直列4気筒2Lに一本化された。これにエクストロニックCVTが組み合わされる。FFをベースにスタンバイ方式のオールコントロール4WDの設定もある。
開発の基本コンセプトは大きく、容易で扱いやすく、楽しいクルマというもの。団塊ジュニアを中心にしたファミリーユーザーを主要なターゲットとする小型ミニバンらしい設定である。少し前に登場したライバル車のステップワゴンが低めの全高を設定して独自の方向に進んだのに対し、セレナは小型ミニバンの本線ともいうべき方向に進んできた。
四角いハコのデザインについて。
セレナの外観は見るからに大きい。これが5ナンバーサイズかと思うほどだ。しかもフロント回りを中心にガラス面が大きいので、いかにも室内空間が大きそうに見えるデザインとされた。
また基本は変わらないがフロント回りのデザインはグリルやバンパーに違いが設けられ、標準系とRX/RS系の2種類が用意されている。しっかりしたグリルを設けたのが標準系で、グリルの開口部を小さくしてスポーティなイメージを演出したのがRX/RS系だ。セレナにはかつてエアロパーツなどを装着したハイウェースターと呼ぶモデルがあったが、今回のモデルにはハイウェースターの設定はない。
インパネ回りのデザインはセンター部分が特徴的な雰囲気を出しているほか、インパネの下に物入れのスペースを設けることで上下に2分割したイメージを持たせている。
室内空間は圧倒的な広さが大きな特徴だ。3列目のシートにもしっかり大人が座れるだけの空間がある。また前後に移動可能な2列目シートの中央部分を動かすことで、自在なシートアレンジや使い勝手を実現する。
にぎやかな走りではなく、スマートな走りをする。
搭載される4気筒2LのMR20DE型エンジンの実力はFF車をベースにすると101kW/200N・m。4WD車では数値が少し変わるが、いずれにしても2Lエンジンとしてはまずまずの実力である。特に中低速域のトルクがしっかり確保されることで、重量級のボディを苦にしないだけの走りを示す。エクストロニックCVTが効率的にエンジン性能を引き出すことも、これで十分という印象につながっている。今回の試乗では富士山周辺の山道を走ったが、急な坂道をのぼるとき以外は、動力性能に特に不満を感じるシーンはなかった。
足回りはちょっとというかかなり柔らかめの印象。ファミリーユーザー向けのミニバンとしては当然のチューニングながら、コーナーでのロールが大きめでワインディングを元気良く走るようなクルマではない。最近、街にあふれるミニバンの中には相当に元気良く走るクルマも目立つが、セレナにはそんな走りはにあわない。
室内騒音も満足のいくレベル。セレナでは運転席とサードシートに乗った子供が会話を交わすためのインカーホンという装備が用意されているが、2列目のシートの乗員との間ならこれがなくても大丈夫なくらいに静かな走りが可能だ。
オトナのミニバンかもしれない。
何といっても室内の広さが大きな魅力。3列目のシートにも大人が座れるような広さを持つ小型ミニバンはまずないので、セレナはこの点で最も優位に立つクルマだ。単なるファミリーユーザーではなく、ときには大人の多人数乗車もするようなタイプのユーザーにお勧めのクルマである。
シートアレンジが簡単なのも大きなポイントだ。2列目のシートの中央は簡単な操作で前後に移動するし、それによって2列目のシートが左右に移動できるようになる。また3列目のシートをはね上げるときにスプリングが補助してくれるので、女性でも簡単に操作できる。この簡単さは大きな魅力である。
価格設定は取り敢えず手頃な水準といえると思う。200万円強の価格は小型ミニバンの中心価格帯だからだ。ただ、今回の試乗車がそうだったように、カーナビを始めとする快適装備を安全装備も含めていっぱいに装着しようとすると、オプション価格だけで100万円を超えてしまう。本当に欲しい仕様を手に入れるには、けっこう高くなることを知っておく必要がある。
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