ホンダ N ONE 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)

ホンダ N ONE 試乗レポート/渡辺陽一郎
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N BOXよりも操舵の反応が忠実で、バランスの良い軽自動車

ホンダ N ONEホンダ N ONE

2012年11月2日に掲載された「ホンダN ONE新型車解説」でも述べたように、N BOXをベースにしたからボンネットが少し高い。全高も1610mmに達する。「ちょっとプロポーションが違うわなぁ」と感じたが、愛敬のあるフロントマスクを見ていると、どうでも良いことのようにも思えてきた。

最初は標準ボディのG・Lパッケージを試乗。カーナビの画面やATレバーを比較的高い位置に装着したインパネはN BOX風ともいえるが、細部まで上質に造り込んでいる。スイッチ類の操作性、メーターの視認性も良い。

フロントシートがベンチタイプになることもN BOXと同様だが、床と座面の間隔は20~30mmほど低い。小柄なドライバーがN BOXを試乗してペダルの操作がしにくいと感じたら、N ONEを試すと良いだろう。

リアシートはN BOXほど広くないが、4名乗車には十分に対応できる。身長170cmの大人4名が乗車して、リアシートに座る同乗者の膝先空間は握りコブシ2つ少々。頭上の余裕は掌が入る程度で十分とはいえないが、不都合は感じない。

ちなみに前後席に座る乗員同士のヒップポイント間隔は1015mm。N BOXの1150mmには達しないが、軽自動車の中では広い部類だ。ワゴンRが1000mmだから、着座位置が低めのN ONEでも快適に乗車できる。

発進させると、平坦路ではノーマルエンジンでも動力性能に不満はない。最大トルクの6.6kg-mは3500回転で発生し、実用回転域の駆動力を上手に高めた。N BOXに比べて車両重量が90kg軽いことも要因だ。もっとも、登坂路に差し掛かると、幅広い回転域にわたって力不足を感じる。

乗り心地は硬めの印象だ。街中では上下に揺すられる感覚が気になる。タイヤは転がり抵抗を抑えた低燃費指向で、指定空気圧も前輪側が240kPa、後輪側が230kPaと高い。JC08モード燃費が27km/Lで、購入時の税額がエコカー減税によって免税となれば、どうしてもこのような乗り心地になってしまう。

走行安定性はおおむね良好。「N360」をモチーフにしたといっても機敏に曲がるスポーティーな性格ではなく、後輪の接地性も考慮して、穏やかな動きを見せる。それでもN BOXに比べれば操舵に対する反応が忠実で、市街地を中心に使う軽自動車としてはバランスが良い。

一方、ターボは動力性能が大幅に向上する。特に効果的なのが最大トルクで、10.6kg-mを2600回転で発生。軽くアクセルを踏みながらスタートした直後、あるいは一定の速度で巡航している時でも、少しアクセルを踏み増せばターボの過給が早いタイミングで立ち上がる。1200ccのノーマルエンジンを搭載している感覚で、とても扱いやすい。N ONEを適度な上級感覚を備えた軽自動車に位置付ければ、ターボモデルが本命という見方もできそうだ。

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オススメは意外にも「ターボモデル」

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バリエーションは幅広く、標準ボディとメッキパーツやテールゲートスポイラーなどを備えたプレミアムを設定。それぞれにノーマルエンジン仕様とツアラーと呼ばれるターボモデルが用意され、装備を上級化したLパッケージも選べる。

そして標準ボディのGとG・Lパッケージを除くと、前輪側にボディの傾きを抑えるスタビライザーが装着されている。これによって走行安定性が高まることにも注目したい。

以上の点を踏まえると、標準ボディでターボを装着する「ツアラーLパッケージ」がに買い得。ノーマルエンジンのG・Lパッケージと同様にサイドカーテンエアバッグやディスチャージヘッドランプを装着した上で、パドルシフトや14インチアルミホイール、クルーズコントロールなどが加わるからだ。ターボモデルではアイドリングストップは省かれるが、それでも13万円の価格上昇は安く、3万円前後でターボが装着される計算になる。

車両価格は137万円で、軽自動車のターボモデルでは安価な部類。1300ccエンジンを積んだコンパクトカーの売れ筋価格帯にも収まり、全車に横滑り防止装置や、スマートキーなどを装着しており、装備のレベルは軽自動車の域を超えている。

一方、予算に余裕があるなら、最上級グレードの「プレミアムツアラーLパッケージ」を選ぶと良いだろう。車両価格は153万円でキューブ15Xなどと同等だが、15インチサイズのアルミホイールなどもセットされて見栄えはかなりスポーティだ。

N ONEは基本的には今日のホンダらしさを反映させた実用性の高い軽自動車だが、運転するとホンダが持つスポーティカーの伝統も感じさせる。「やはりホンダはクルマ好きのメーカーなんだなぁ」と改めて実感し、「N360」を知るオジサンは、ちょっと嬉しくなりました。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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