ヨーロッパで直噴エンジンが盛んなのは何故?
- 筆者: 清水 草一
ヨーロッパで直噴エンジンが盛んなのは何故?
なぜ三菱自動車は直噴を止めたのですか。トヨタも余り出てないようですね。しかし、ヨーロッパは、ここへ来て盛んに直噴ターボを出し始めていますね。なぜでしょうか?
日産もジュークで出す予定ですが。今後直噴はどうなって行くのでしょうか?(のぶりんさん)
其の疑問、MJブロンディがお答えいたします!
非常に鋭いご質問です。
ガソリン直噴エンジンは、第2次大戦中にドイツが航空機用に開発し、戦後メルセデスが名車・300SLに採用しましたが、その後長らく表舞台から遠ざかっていました。
そして96年、三菱がGDIエンジンを開発し、再び脚光を浴びたわけです。
三菱GDIは、直噴を生かした希薄燃焼で燃費を大幅に改善する(3割改善を謳っていました)という点に特徴がありました。
そのインパクトは非常に大きく、この頃、自動車好きの間では“リーンバーン(希薄燃焼)”という言葉がとてもポピュラーになりました。
しかし、問題もありました。
まず、燃費が狙ったほど改善されなかったこと。実際に希薄燃焼になる時間はあまり多くなく、実燃費では3割改善とまでは行かなかったのです。
もうひとつは、排ガスのクリーン度に問題があったことです。希薄燃焼をすると、窒素酸化物やススの排出が増えてしまいます。開発当時はそれほど問題になりませんでしたが、排ガス規制が徐々に厳しくなると、GDIはいわゆる「星」が取れず、苦しい立場に立たされました。
加えて、燃焼室内にススが蓄積することによるトラブルも多発しました。結局、製造コストがかさむ割にメリットが少ないということで、三菱はGDIから撤退してしまったのです。
ではなぜ近年、ヨーロッパでは直噴エンジンがもてはやされているのでしょう。ヨーロッパのガソリン直噴は、最初から希薄燃焼を狙わず、通常のガソリンの濃さ(ストイキ燃焼といいます)で、より効率的に走らせることを目的としたのです。
希薄燃焼しなければ、排ガスやススの問題は発生しません。その分燃費の改善も大したことはないわけで、初期のVWグループのFSIエンジン(ノンターボ)には、実際のところほとんどメリットを感じませんでした。
三菱GDI技術をベースに開発されたアルファロメオのJTSエンジンも、「燃費もパワーもそこそこ」という程度で、存在感は薄いです。
しかしそこに最新の高効率な過給器(ターボやスーパーチャージャー)を組み合わせ、加えてエンジンをダウンサイジングすることで、パワーと燃費を両立させることに成功したのです。それがVWグループのTSIエンジンや、メルセデスのCGI、BMWの直噴ターボ(プジョー・シトロエングループとの共同開発エンジンも含む)です。
今思えば、ガソリン直噴技術は、効率的な過給器との組み合わせでこそ、メリットが生かせるものだったのですが、三菱は「希薄燃焼」に力点を置いていたので、「希薄燃焼はダメ」となった時点で、GDIを捨ててしまったんですね。実にもったいなかったです。
今後ガソリン直噴は、過給器との組み合わせによって、内燃機関として究極の効率を狙って行くでしょう。
MJブロンディの「ひとりごと」
三菱に続いてトヨタもD-4という直噴エンジンを開発し、現在でも一部で使っていますが、トヨタは自社技術のフラッグシップはハイブリッドだと見極めて、あまり積極的な開発はしていません。
すでにガソリン直噴技術では、ヨーロッパのメーカーに大きく水を開けられているので、それを追うよりは自社が先行している分野で突っ走ろうということです。非常に的を射た判断だと思います。
日本メーカーでは、ハイブリッドで遅れを取った日産が、ヨーロッパでジューク(直噴ターボ)やマーチ(直噴スーパーチャージャー)をリリースし、この分野での日本のトップランナーになって行きそうです。
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