国産コンパクトSUVにとって脅威の存在に!?「VW クロスup!」[詳細解説](2/2)

国産コンパクトSUVにとって脅威の存在に!?「VW クロスup!」[詳細解説]
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外観は定番のアレンジが加えられる

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まずは外観だが、シルバーのフロント&リアバンパー、ブラックのホイールハウスエクステンション(タイヤが収まる前後のホイールハウスに装着された黒い縁取り)、ブラックサイドモール(ボディサイドの黒い飾り)、シルバーのルーフレールなどが装着される。ゴルフオールトラックなどにも共通するSUVの定番的なアレンジだ。

アルミホイールのサイズは16インチ(185/50R16)。ノーマルエンジン搭載のup!は14インチ(175/65R14)と15インチ(185/55R15)だから、クロスup!ではサイズが若干拡大した。

最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)もわずか10mmではあるが増している。

フォルクスワーゲン「cross up!」

内装は特に変更していないが、インパネのダッシュパッドの色は、レッド/ブラックパール/ダークシルバーを設定した。またハイup!と同じ本革巻きのステアリングホイールなども装着される。

ボディカラーはトルネードレッドなど5色を用意。基本的にはup!と同じ色彩だが、コーンフラワーブルーとホットオレンジは、クロスup!では選択できない。

内装色は外装色と連携させている。外装色がトルネードレッドではインパネもレッドで、シートはレッド/グレーだ。エンジンは従来型のup!と同じで直列3気筒の1リッターを搭載。

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以前よりも変速が滑らかになっている「ASG」

フォルクスワーゲン「cross up!」

最高出力は75馬力(6,200rpm)、最大トルクは9.7kg-m(3,000~4,300rpm)で、この性能も変わらない。駆動方式は前輪駆動の2WDのみになる。SUV風の車種でも4WDは選べない。

JC08モード燃費はup!が「25.9km/L」だが、クロスup!は「25.2km/L」に少し下がる。短い距離を移動させたが、発売当初に比べると、5速ASG(シングルクラッチ方式の有段AT)の変速が滑らかになっていた。

それでも当然ながらツインクラッチのDSGほど滑らかではなく、アルトラパンに採用される5速AGSにも少し見劣りするが、著しい不満を感じることはないと思う。

コンパクトカーをリード出来る実力を持つ走行性能、さらに価格面でも国産車に対抗

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乗り心地はup!と同様、コンパクトなサイズながらVWらしく骨太感がある。操舵感などを含めて、走りは日本のコンパクトカーをリードする部分だろう。

もっとも、今ではマツダ デミオなども質を高めたから、クロスup!が絶対的に優位ともいい難い。日本メーカーも十分な技術力を身に付けており、どこに重点を置いて開発するか、という選択の問題になった。なので日本のコンパクトカーの質が見劣りしたとすれば、それは技術力の差よりも価格の安さ、メーカーや販売会社の利益、装備の充実などを優先させた結果だろう。要は考え方の違いに基づく。

装備については、赤外線レーザーを使ったシティエマージェンシーブレーキを装着する。低速域で追突などの危険を検知すると、緊急自動ブレーキ作動させることも可能だ。

クロスup!の価格は194万円。ベースとなったグレードは、快適装備の近い4ドアのムーヴup!(175万6,000円)になる。約18万円の価格上昇で、外装のドレスアップ、アルミホイールのインチアップ、フォグランプや本革巻きステアリングホイールの装着などが行われた。これだけの内容なら、通常は20万円以上の価格上昇になるだろう。つまりクロスup!は、販売力を強めるために価格を割安に抑えた。

背景には、クロスup!の価格帯における日本車の充実が挙げられる。200万円前後にはコンパクトで個性的な人気車が多く、クロスup!も比較検討されるように価格を194万円とした。

具体的には、ホンダ ヴェゼル1.5G(193万1,000円)、日産 ジューク15RX(196万6,680円)、マツダ デミオXDツーリング(194万4,000円)などがあり、軽自動車ならホンダ S660β(198万円)、ダイハツ コペンローブS(199万8,000円)という具合だ。

クロスup!は、個性的で楽しいコンパクトカーとして巧みに日本の市場に入り込み、足場を築くねらいだろう。軽自動車やコンパクトカーが主力の日本メーカーにとって、油断できない状況になってきた。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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