トヨタ ヴィッツ 試乗レポート
- 筆者: 西沢 ひろみ
- カメラマン:佐藤靖彦
マイナーチェンジで新開発のメカニズムを搭載。モデリスタからはターボモデルがリリースされた。
昨年の国内登録車において、累計販売台数第1位を獲得したフィットに対抗するかのように、ヴィッツがマイチェンを受けた。もちろん、単なる意匠変更ではない。注目に値するメカニズムがいくつも用意されていた。まずは新開発の1.3Lエンジン(2SZ-FE)の搭載だ。環境対応型といえるこのエンジンには、新開発のSuper CVTを組み合わせている。さらにハイブリッド技術を応用した、アイドリングストップシステムを採用したモデルもラインアップ。10・15モード燃費は、軽自動車とハイブリッドを除いた国内最高の25.5km/Lを実現した。
スポーツ派が目を引くのは、モデリスタのカスタマイズ仕様。RSをベースに、ターボや専用サスをはじめとする10アイテムがカスタマイズ装備されたバリバリのボーイズレーサーだ。内装面ではフロントシートがベンチタイプの1.0Lのペアスタイルが見逃せない。
極太のトルクが過激な加速感を披露。ターボモデルは、かなりの運転テクニックを必要とする。
運転席と助手席に装着される青いスパルコのフルバケットシートは、オプションではあるけれど、レーシングマシンの雰囲気そのもの。ワクワクしながらシートに座ってみると、身長157cmの体型にはポジションがしっくり馴染まなかった。専用のシートステーが高すぎるのだ。ステアリングも、もうひと回り小径の方がレーシング感覚といえるだろう。
駐車場から一般道にアクセスしながら、グンとアクセルを踏み込む。すると、唐突に極太のトルクが発揮され、強烈なトルクステアが生じる。この挙動を抑えるには、どんなに運転テクニックがあってもアクセルを戻すしかない。それでも、ターボパワーが生み出す加速感はまさに刺激的。グングンと車速が伸び、景色が見事に飛んでいく。ただしコーナリングは、極太のトルクを足が支え切れていない印象だ。横Gがかかったときに、グリップがスッと抜けることがあるからだ。
確かにエキサイティングではあるけれど、「Vitz RS“TURBO”Powered by TRD」は超じゃじゃ馬の仕上がり。腕にかなりの自信がないと乗りこなせない。
トルクコンバーター付無段変速のCVTは、スムーズな変速が魅力の熟成された出来栄え。
新開発の1.3L(2SZ-FE)エンジンに組み合わされたのが、トルクコンバーター付無段変速のCVTだ。このCVTの魅力は、吹き上がり感が加味されていること。しかも変速がスムーズで、静粛性の高さも伺えた。エンジン回転が一定する違和感やストレスを解消した、熟成された出来栄えといっていい。
けれどもコンパクトカーとしての扱いやすさは得られなかった。というのも、ヴィッツUは環境対応型のグレード。10・15モード燃費23.5km/Lの実現は注目に値するし、「超-低排出ガス」認定も取得している。もちろんエンジンの基本性能だってちゃんと持ち合わせている。だけど、燃費を重視したために加速に軽快感が得られないのだ。電動式のパワステも、1.0Lの油圧式に比べて手応えがなく操舵フィールに不安を伴ってしまう。走行安定性もいまひとつ。燃費志向のタイヤがフワッとしたロール感を生むからだ。環境に貢献するためには、多少、走行フィールを犠牲にしなければならないようだ。
カジュアルなデザインと座り心地は二重丸。ヴィッツの一押しのグレードだ。
1.0Lに初お目見えしたのが、ベンチタイプのフロントシートを採用したペアスタイルだ。運転席に座ってみると、クッションの幅と長さが十分にあり、なおかつ厚みもたっぶり確保されている。最近のコンパクトカーはシートに力を注ぐ傾向にあるが、ペアスタイルも例に漏れず快適な座り心地を与えてくれた。気持ちのいい肌ざわり、使いやすい大型アームレストも居心地のよさにつながるアイテムだ。ダークチャコール/アイボリーのダッシュパネル、コーディネイトされたアイボリー/茶系のシート生地も、開放感と広々感が味わえて好感度は高かった。
1.0Lエンジンは、51kw/93N・mのスペックにもかかわらず元気のいい加速フィールを披露。乗り味もシャキッとした安定感があり、街中から行動半径を広げても十分に満足できる。。
この記事にコメントする