「人とモノの動き」が変わる!注目される「MaaS」って何!?~株式会社KTグループ代表取締役 上野健彦氏インタビュー~(2/2)

「人とモノの動き」が変わる!注目される「MaaS」って何!?~株式会社KTグループ代表取締役 上野健彦氏インタビュー~
株式会社KTグループ代表取締役 上野健彦氏 高齢化の推移と将来推計 画像ギャラリーはこちら

15年後モデルの実行を目指す

Q.自販連(一般社団法人日本自動車販売協会連合会)では、カーディーラーは今後、『モビリティサービス提供企業』になるべきという考え方を示しています。KTグループとして、こうしたMaaSの潮流を、どのようにとらえていますか?

上野代表 「中長期的には、自動車流通はMaaSという方向に向かわざるを得ないと思います。ただし、この業界は多くの人間に支えられていますので、その中の一人ひとりのアクションを変えていかなければなりません。これはとても難しいことです。となれば、これまで自動車産業とは無縁だった企業による新規参入の方がやさしいと思われるかもしれませんが、自動車流通の実情を知らないために、そう簡単ではないはずです」

Q.では、そもそも論になりますが、MaaSとは何を指すとお考えでしょうか?

「人が移動する手段を提供すること。そして、物を動かすサービス、つまり物流。基本的には、こうした“人とモノの動き”を作り出すことだと思います。また、場所という概念では、自宅や会社を起点として移動する「出る」という行為がある一方で、自らは移動せず情報やモノだけを引き寄せる行為があります。こうした“人とモノの動き”における情報とお金の流れを総合的に制御することがMaaSだと考えています」

Q.その上で、カーディーラーとしての業態も変わるのでしょうか?

「はい。現在のカーディーラーは、クルマを自動車メーカーから仕入れてお客様に売ることがビジネスの基軸になっています。今後、MaaSになると、ビジネスの基軸はお客様の生活を手伝うことになります。業務内容としては、タクシーやレンタカーなども考慮することになるかもしれませんが、営業する上での各種の法的な課題があります」

高齢化の推移と将来推計

Q.では、そうした業態変化はいつ起こるとお考えでしょうか?

「弊社はいま、『15年後モデル』を検討しています。いまから15年後は2030年代前半になります。その少し先、2035年頃には、いわゆる ”団塊ジュニア”と呼ばれる年齢層が定年後の再雇用が終了となり、就労人口から外れることで、日本の産業構造が大きく変わります。そうした大きな変化の少し前までに、MaaSを踏まえたサービス業態への移行が完了しているべきだと考えています。サービスの習熟期間は意外と長いものです。『アズ・ア・サービス』と言うのは容易ですが、実行して、それを根付かせるのは大変なのです」

Q.『15年後モデル』では、カーディーラーのコンペティター(競合社)はどのような企業になるのでしょうか?

「現時点では特定できません。もしかすると、いま我々のお客様であるタクシー会社、バス会社、または新聞販売店になるのかもしれません。ただし、それは株式会社としての視点ではコンペティターですが、もっと広い視点でMaaSをとらえるべきではないでしょうか。MaaSとは、一企業の事業戦略ではなく、社会システムの作り替えだと思うのです。コンペティション(企業間の競争論理)ではなく、例えば政府による大規模な法整備に伴う社会システムの再編のなかで、関連する企業と生活者がWin Win Winとなるやり方があるはずだと、いま真剣に考えています」

雲をつかむような、ちょっと曖昧なMaaSという概念。しかし、自動車販売・自動車流通の現場では、地に足のついた具体的な実体験を基に、近未来の社会の在り方についての議論が始まろうとしている。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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