トヨタが実質新型車導入ゼロ!?今年の国産新型車は軽含め8車種、なぜ少なくなったのか(1/2)
- 筆者: 桃田 健史
トヨタは実質新型車導入ゼロ!?どうなる日本の新車市場
「日本車が元気ないなぁ」。
今年の1月から10月まででみると、国内発売された国産メーカーの軽を含めた新型乗用車(マイナーチェンジ/一部改良を除く)は、たったの8車種。世界販売トップをVWと競うトヨタですら、ダイハツ開発のパッソこそあったが、実質自社開発車はゼロ。日産も新型セレナを発売したが、新型車の国内導入は実に2年半ぶり。昨年まで数多くの新型車を導入してきたホンダも今年は超高級スーパーカーのNSXとフリードの2車種だけ。
なぜ、そうなってしまったのか?
第一の理由は、日本国内市場がミニバンと軽自動車への偏重が進み、売れる車としてのモデルバリエーションが減ったからだ。
ミニバンでは、日系ビッグ3(トヨタ、日産、ホンダ)が互いの動きをけん制しながら新車導入を目指す。だが、箱型ボディによる居住性や使い勝手の開発は、そろそろ“ネタ切れ”の状況だ。
一方で、軽自動車は、ビッグ2(ダイハツ、スズキ)に対して、Nシリーズ投入で近年のシェア拡大が目立つホンダを加えた三つ巴。そのなかでモデルラインアップは、トールハイト系での戦いが一巡。その結果、ハスラー vs キャスト、ラパン vs ムーブキャンバスなど、派生モデルでの局地戦が目立つ。だが、燃費争いでは660ccエンジンとして技術的にそろそろ限界が見えてきた。
こうして、商品としての頭打ち感が強いミニバンと軽自動車では今後、斬新的な新車が生まれる市場基盤がない。
1社だけ飛びぬけた、革新的な技術開発は難しい
ミニバンと軽自動車のみならず、クーペ、セダン、SUVなどでも、1社だけが他社とは全く違う革新的な技術を導入することも、ほとんどなくなってきた。その理由は、世界市場を見据えた燃費規制と衝突安全の2大規制を最優先するクルマ作りにある。
燃費規制では、日本メーカー最大の収入源であるアメリカのCAFE(企業別燃費規制:Corporate Average Fuel Efficiency)が筆頭だ。さらに、欧州CO2規制と中国のCO2規制を念頭に入れる。また、EV、FCVでは米ZEV法(ゼロ・エミッション・ヴィークル規制:Zero Emission Vehicle)と、中国のNEV(ニュー・エネルギー・ヴィークル)に関する政策への対応が急務だ。
こうした海外での絶対にクリアしなければならない厳しい法律を最優先することで、日系メーカーが日本国内向けに革新的な燃費向上デバイスを投入する機会は極めて少ない。
衝突安全でも、日系メーカーは海外の法規動き優先の姿勢が明白だ。なかでも、欧州の衝突安全に関するアセスメント、ユーロNCAP(ニュー・カー・アセスメント・プログラム)で、歩行者保護に対する内容への対策が急務だ。
具体的には、夜間の歩行者保護の技術領域で、カメラによる高度な画像認識の実用化に関し、日系メーカーは欧州メーカーや、イスラエルのベンチャー企業に対して大きな遅れをとった。そのユーロNCAPが、日本のJNCAPにも直接的な影響を与えるため、日系メーカーは衝突軽減ブレーキなど、高度安全運転支援システム(ADAS)の商品改良を急いでいる。
こうした米欧、そして中国での法規制をクリアすることが、現在の日系自動車メーカーの研究開発の主体だ。つまり、技術開発に関して他社との差別化が難しい。
仮に、門外不出の1社だけの技術があったとしても、近年の日系メーカーの経営方針では、研究開発に対するコストパフォーマンスを重視する傾向が強いため、他社にない特殊な技術が日の目を見る(=量産される)可能性は極めて少ない。
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