トヨタ 新型ノアハイブリッド試乗レポート|プリウスを超えた激売れミニバン、人気の秘密は”顔”にあり(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:小林岳夫
剛性強化や足回りの変更などで快適性が向上
新型ノアハイブリッドの走行安定性だが、全高が1800mmを上まわり、車両重量が1600kgを超える5ナンバーサイズを基本としたミニバンとしてはまずまず満足できるレベルだ。背が高いからといって、ハンドルを切った時にボディが唐突に傾く印象はない。
足まわりの設定は、ファミリーでの利用が中心となるミニバンだから、良く曲がることよりも後輪を中心に接地性を高める安定性に力を入れたセッティングだが、多少スポーティに走っても曲がりにくく感じることはない。
このあたりはハイブリッドSi専用の16インチタイヤ(205/55R16)を装着した効果でもあるだろう。試乗車が装着していた銘柄はブリヂストン トランザT001で、指定空気圧は前後輪ともに240kPaだ。15インチに比べると少しだが車両の向きを変えやすい。
新型になってフロントウィンドウやリアゲートに高剛性ガラス接着剤を使った効果は、スライドドアにシールを装着したことと併せて、主に音や振動の低減に利いている。ボディ前側の微妙な歪みも抑えられた印象で、ハンドルを切った時の反応も、曖昧さがある程度は払拭されて正確性を高めた。
乗り心地はハイブリッドの15インチタイヤ装着車が柔軟なのに対して、16インチのハイブリッドSiは少し硬い。それでもタイヤが路上を細かく跳ねる粗さは従来以上に抑えた。ショックアブソーバーの改良により、足まわりが柔軟に伸縮することも乗り心地に利いている。それでも2/3列目シートの快適性を考えると、Siの16インチタイヤよりも、XやGが装着する15インチの方が快適に感じる。それよりも鈍さのない操舵感や走行安定性を重視するなら16インチのSiが適する。
また、速度域が低い車庫入れなどの時に、ハンドルを小刻みに左右に動かして進路を調節すると、従来型の手応えは摩擦が感じられていまひとつだったが、新型では滑らかになっている。細かい点だが日常的に遭遇するシーンも多く、重要な変更だ。
低床化で乗り降りもしやすいトヨタ ノアだが、ハイブリッド用電池が足元空間を狭めている面も
車内の造りは基本的に以前と同じだが、メーターパネルのレイアウトが少し変わり、メーターを縁取るリングが細くなった。またハイブリッドでは、運転席と助手席の間に新たにセンターコンソールボックスが装着される。前席から後席に車内で移動する時は邪魔になるが、小物の整理には役立つ。
ハイブリッドのXとG(Siを除く)には100V/1500Wの電源コンセントもオプション設定(オプション価格は4万3200円)され、装着した時にはセンターコンソールボックスの内部にユニットが収まる(従ってボックス容量は減る)。コンセントは背面部分、つまり2列目シートの足元に装着した。
車内は、ミドルサイズのミニバンの中では2/3列目シートが広く、大人が多人数で乗車できる空間を確保した。3列目の膝先空間は、ライバルの日産 セレナが設定した3列目にスライド機能を備えた仕様に比べると若干狭いが、窮屈には感じない。ホンダ ステップワゴンの3列目に比べると座り心地が快適だ。
注意したいのは、ハイブリッドの駆動用電池が1列目シートの下側に収まること。そのためにハイブリッドでは、2列目に座る乗員の足が1列目の下に入りにくく、実質的な足元空間が狭くなった。そうなると2列目のスライド位置が後方に下がり、3列目の足元を狭めて多人数乗車時の居住性に影響が生じる。
現行型は低床化を図り、スライドドア部分の床面地上高を360mmに抑えて、乗降性、居住性、低重心に基づく走行安定性などを向上させた。床の高さはステップワゴンと同程度で、セレナに比べると70mmほど低い。
自動ブレーキ「トヨタ セーフティセンスC」は改善の余地あり|ガソリンとハイブリッドはどっちが買い!?
トヨタ 新型ノア ハイブリッドは全般的に満足感も高いが、安全装備と運転支援の機能は改善の余地を残す。
緊急自動ブレーキを作動できるToyota Safety Sense C(トヨタセーフティセンスC)は、セレナやステップワゴンが装着するタイプと違って歩行者を検知できない。また、車間距離を自動制御するクルーズコントロール、車線を読み取って中央を走れるように操舵を支援する機能なども備わらない。この点はライバル車に比べて明らかに遅れている。
さらに新型ノアを選ぶ時には、ハイブリッドとノーマルの2リッターガソリンエンジンの価格差にも気をつけたい。ベーシックなXの場合は、ハイブリッドXの装備がかなり充実していることもあって、ノーマルエンジンのXと比べた時の装備差を補正した実質価格差が約35万円の上乗せに収まる。しかし、Si同士で比べると約43万円だ。ハイブリッドSiはノーマルエンジンのSiに比べて価格の上乗せが大きく、割安なのは標準ボディになる。
実用燃費がJC08モード燃費(カタログ燃費)の85%、レギュラーガソリン価格が1リッター当たり130円で計算すると、1km当たりの走行コストはハイブリッドが6.4円、ノーマルエンジンは9.6円だ。価格差を燃料代の差額で取り戻せるのは、ハイブリッドSiでは13万km、標準ボディのハイブリッドXでも11万kmを走った頃になる。つまり1年間に1万km程度の走行では、損得勘定ではノーマルのガソリン2リッターエンジンを買うほうがいい。
しかしハイブリッドには、前述のような上質な運転感覚がある。100V/1500Wの電源コンセントも装着が可能で、アウトドアでの家電製品の使用や、万が一の災害時にも役立つ。こういった付加価値のとらえ方で、ハイブリッドとノーマルエンジンの選び方も変わると思う。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:小林岳夫]
トヨタ ノアハイブリッド Si主要スペック
トヨタ ノア ハイブリッドSi 主要諸元 | |
---|---|
新車価格 | 3,269,160円 |
JC08モード燃費 | 23.8km/L |
駆動方式 | 2WD |
乗車定員 | 7名 |
全長 | 4,710mm |
全幅(車幅) | 1,735mm |
全高(車高) | 1,825mm |
車両重量 | 1,620kg |
ホイールベース | 2,850mm |
エンジン種類 | 直列4気筒 |
排気量 | 1,797cc |
エンジン最高出力 | 73kW(99PS)/5,200rpm |
エンジン最大トルク | 142N・m(14.5kgf・m)/4,000rpm |
トランスミッション | 電気式無段変速機 |
モーター最高出力 | 60kW(82PS) |
モーター最大トルク | 207N・m(21.1kgf・m) |
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