トヨタ カムリに”カムリスポーツ”「WS」新設定|派生モデル追加であえて発表会を開いた理由とは

  • 筆者: 遠藤 イヅル
  • カメラマン:オートックワン編集部・トヨタ自動車

カムリ WSはただの追加グレードにあらず!?

2018年8月31日、トヨタ自動車は東京都文京区のトヨタ東京本社で「カムリ WS」の説明会を行った。

カムリ WSは既報の通り、2018年8月1日から発売されているカムリのスポーティな新グレードだ。搭載されるパワートレーンは標準グレード(G、X)から変更はなく、2.5リッター直4エンジン+ハイブリッドシステム(THS II)を搭載する。

>>■トヨタ、カムリにスポーティなパーツを装着した新グレードを追加[自動車ニュース]

ノーマルのカムリとの違いは多岐に渡る

外装ではフロントグリル、リアスポイラー、ブラック塗装の18インチアルミホイール、左側2本出しのマフラーカッターなどのスポーティな装備が与えられ、内装にも専用シート、パドルシフト、メタリックな風合いのインストルメントパネルオーナメントなどの各種専用装備を採用する。

このように、確かに追加グレードとして大きな変更が行われている「カムリWS」だが、一般的にグレード追加で記者を招いての発表会や説明会はあまり開かれない。しかし今回カムリ開発陣は、日本市場では販売のインストリームではないミドルサイズセダンのグレード追加に関して、異例とも言える説明会を行った。これには、大きな理由があったのだった。

>>>>ノーマルのカムリとはどこが違うの!?[画像で見る]

カタマラン(双胴船)形状でスポーティなイメージを強調したエクステリア

メーカー自ら「カムリ・スポーツ」と銘打つだけあって、優雅で上質感のあるカムリを、WSでは派手な内外装パーツの装着なく見事にスポーティセダンへ昇華させている。

外装デザインのキーワードとなった「カタマラン(双胴船)」のイメージを反映させたバンパーのコーナー開口部は、最大限のワイドスタンスを実現するとともに走りのスポーティさを強調。リアバンパー下部のデフューザー風処理や控えめながらも存在を主張するリアスポイラーよって、カムリWSがスポーツセダンとして用意されていることを感じさせる。

なおフロントバンパー/グリルはカムリ北米仕様のスポーティグレード「XSE」「SE」などと同じ、いわゆる「北米顔」。

現行カムリは2017年1月にデトロイトショーで発表されたのちに日本でも発売が開始されたが、その時「北米顔カッコイイ。日本にも入らないかな」と、一部で話題になったことがある。その北米マスクが日本仕様で採用されたことも注目のポイントだ。

画像は2017年のデトロイトショー(NAIAS:北米国際自動車ショー)で発表された北米仕様のカムリ XSE(左)とカムリハイブリッド XLE

カムリ伝統の乗り心地を損なわないスポーティなサスペンション

トヨタのグローバルカーであるカムリには、先ほど北米仕様の話で出たように既に海外ではスポーティ仕様が発売されていた。その仕様を日本に導入するにあたりカムリの開発陣は「単に海外で販売されているスポーティなモデルを日本に持ってきても日本のユーザーは満足しないだろう」と考えたと言う。

そこで開発陣は足回りに個性を持たせることにした。

ご存知の通り一般的にスポーティグレード化の際は、内外装を変更するほか操縦安定性に振ったスポーティなサスペンションを装備することが多い。しかし、操縦安定性を重視すると乗り心地が悪くなりがちだ。サスペンションの設計は二律背反である。

今回説明を行ったトヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZV チーフエンジニア 勝又正人氏は足回りの設計出身だけに、カムリWSのサスペンションには「無い物ねだり」を目指した。カムリのDNAである「優れた乗り心地」「カーペットライド」は変えずにライントレース性に徹底的にこだわってサスペンションの開発を行っている。

具体的にはショックアブソーバの摺動部(ロッドガイドブッシュ、ピストンバンドなど)を新規に開発。カーペットライド(日本向けベース仕様)とライントレース性(北米向けSE)の両立が図られたという。

美しいルーフラインを強調する塗り分けに秘められた「チャレンジ精神」

カムリWSで新たに導入されたのが「2トーンカラー」だ。WS専用色としてアティチュードブラックマイカ×ダークブルーマイカメタリックを含む3種類のツートーンカラーを新規設定した。キャビン上部をグロスのブラック塗装とすることでカムリの低重心&ワイドなプロポーションを引き立てている。実はこの2トーンカラー、とあることで「特許出願中」なのだという。

最近、屋根をブラックアウトや違う色にする2トーンカラーが流行しているが、その際の「色の切り替え」はパーツごとのラインで行なわれていることが多い。例えば、スズキ ハスラーやホンダ N−BOXではCピラーの塗装切り替え部にうっすらとラインが入っている。

一方カムリの2トーンカラーの場合、Aピラー付け根は別パーツになっているのでここで塗り分けているのだが、Cピラーの塗り分けはパーツの分割線に依存せずCピラー上部で折れたわずかな空間で塗り分けている。2トーンカラーは一旦ボディカラーを全体に塗ってからルーフをブラックに塗るので、美しい塗り分けを実現するのはマスキングのテクニックが左右するという手間がかかる塗装方法なのだ。このようにキャラクターラインで色を塗り替える「色見切り」はセダンでは世界初とのことで、トヨタはその方法で特許出願を行っているのだ。

カムリをクーペらしく見せるCピラーに走るキャラクターラインは、開発陣とデザイナーのこだわりでもある。また、2トーンカラーも「いつか実現したい」と思っていたとのことで、「かっこいいならすればいい」というチャレンジ精神が社内で受け入れられたことによって実現したデザインだという。大きな組織であるトヨタでチャレンジングなアイデアを実現しやすくするための変革がTNGAの要素の一つでもある。その成果が表れていると感じたエピソードだった。

臨場感ハンパないって!JBLのプレムアムオーディオをオプションで装着可能に

現行型カムリは開発の初期段階からJBLが加わって、スピーカーの設置について設計が行われたという。そしてWS発表と同時にカムリシリーズに行われた一部改良の際、その設計を反映した「JBLプレミアムサウンドシステム」がオプションで用意されることになった。WS“レザーパッケージ”、G“レザーパッケージ”、WSとGのT−Connect SDナビゲーションシステム装着車にメーカーオプション設定される。

説明会ではJBLプレミアムサウンドシステムが装着されたカムリWSも展示されていたので、実際に試聴を体験できた。

クリアで迫力あるサウンドは、目を閉じるとまるで目の前で演奏しているような臨場感。目の前で歌手が歌っている!と思ったほど。セダンというほどよい「狭さ」のキャビンの効果と、ハイブリッドカー本来が持つ静かさも相まって醸し出させる高品位なサウンドにうっとりしてしまった。この高音質が日常で味わえるのは嬉しいところだ。

セダン復権のさらなる追い風になるか?「カッコいい」セダンに期待大!

WSは専用サスペンションや凝ったオーディオを採用したほか、同時にカムリシリーズ全体でオート電動格納式ドアミラー、インテリジェントクリアランスソナーを標準装備するなどの改良が実施された。マイナーチェンジに匹敵する内容で手が入っているのだ。そこでカムリ開発陣は満を持してWSグレードの説明会を行ったのだ。カムリ開発陣のカムリに対する熱い思いが伝わるようなエピソードが聞けたのは嬉しかった。

「BEAUTIFUL MONSTER(ビューティフル・モンスター)」という衝撃的なキャッチコピーを掲げて登場した現行型(10代目)カムリ。市場はすっかりハッチバックやミニバン、SUVが主流になり、かつてどのジャンルでも主役だったセダンは各メーカーともに影に隠れてしまった。しかし、カムリ・スポーツたるWSが追加されてさらに内容が充実したカムリを見ると、決してセダンというジャンルに魅力がなくなったわけではないことに気づくだろう。その証拠にカムリWSは受注好調で、購入ユーザー層には30代前半、場合によっては20代もいるというのだから驚きだ。

単にグローバルカーを日本に持ってくるだけではなく、日本市場をしっかりと見据えた商品開発や展開を行う「セダンに対する真摯な気持ち」、開発陣の「私達はカムリが好きだ!」という気持ちがひしひしと感じられるカムリは、確かにとても魅力的なセダンに仕上がっている。

ミニバンやSUVが売れているのは、確かに便利で買ったらアクティブに楽しめるワクワクする予感に溢れているからなのだが、カムリのようなカッコよくて魅力的なセダンがもっと多く出れば、日本のセダン市場もきっともっと活発になるのではないか。広くて快適なリアリートに深く座ってオーディオを視聴した時、セダンならではの後席の快適性と落ち着きはミニバンやSUVでは得難いものだと改めて思った。僕はマイカーがサーブ900セダンなので、セダンの良さはよく知っているはずなのに、だ。

ミニバンやSUVを買ったユーザーも、セダンをむしろ新しい!と思うかもしれないし、かつて乗っていたセダンの良さを思い出すかもしれない。潜在的なセダン需要はきっとあるはず……。

トヨタ渾身のミドルクラスセダン、カムリに追加されたスポーティバージョンWSに触れて僕はそう思ったのだった。

[Text:遠藤 イヅル/Photo:オートックワン編集部・トヨタ自動車]

CAMRY SPORTS TV CM(登場編)【トヨタ自動車】

トヨタ カムリWS レザーパッケージ[FF] 主要スペック

全長×全幅×全高:4910×1840×1445mm/ホイールベース:2825mm/車両重量:1600kg/乗車定員:5名/駆動方式:FF(前輪駆動)/エンジン種類:直列4気筒ガソリン直噴エンジン/総排気量:2487cc/エンジン最高出力:178ps(131kW)/5700rpm/エンジン最大トルク:22.5kgf-m(221N・m)/3600~5200rpm/使用燃料:無鉛レギュラーガソリン/トランスミッション:電気式無段変速機/モーター種類:交流同期電動機/モーター最高出力:120ps(88kW)/モーター最大トルク:20.6kgf-m(202N・m)/動力用主電池:リチウムイオン電池/燃料消費率:28.4km/L[JC08モード燃費]/サスペンション形式:(前)マクファーソンストラット式(後)ダブルウィッシュボーン式/タイヤサイズ:235/45R18(前後)/メーカー希望小売価格:4,341,600円(消費税込)

トヨタ/カムリ
トヨタ カムリカタログを見る
新車価格:
349.5万円468.2万円
中古価格:
48万円479万円

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

遠藤 イヅル
筆者遠藤 イヅル

1971年生まれ。カーデザイン専門学校を卒業後、メーカー系レース部門にデザイナーとして在籍。その後会社員デザイナーとして働き、イラストレーター/ライターへ。とくに、本国では売れたのに日本ではほとんど見ることの出来ない実用車に興奮する。20年で所有した17台のうち、フランス車は11台。おふらんすかぶれ。おまけにディープな鉄ちゃん。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

トヨタ カムリの最新自動車ニュース/記事

トヨタのカタログ情報 トヨタ カムリのカタログ情報 トヨタの中古車検索 トヨタ カムリの中古車検索 トヨタの記事一覧 トヨタ カムリの記事一覧 トヨタのニュース一覧 トヨタ カムリのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる