スズキ ワゴンR 20周年記念車 試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
燃費性能の向上により、JC08モード燃費は30km/Lを達成
ワゴンRがマイナーチェンジを行った注目点として、レーダーブレーキサポートと併せて燃費性能の向上が挙げられる。ノーマルエンジン車は従来型が28.8km/Lだったが、改良後は30km/L。ターボは26.8km/Lから27km/Lに向上した。
燃費向上の背景にあるのは、まずはタイミングチェーンの幅を細く抑えるなど、エンジンの摩擦抵抗を減らしたこと。CVT(無段変速AT)の制御も最適化され、エンジンの効率が高い回転域を積極的に使う。CVTの摩擦抵抗も減らした。エンジンアンダーカバーの装着によって空気抵抗も抑え、ラジエターの薄型化などによって車両重量は増えていない。
試乗した「20周年記念車」は、FXリミテッドがベースだからノーマルエンジンを搭載する。最高出力は52馬力(6000回転)、最大トルクは6.4kg-m(4000回転)。JC08モード燃費が30km/Lとなれば実用回転域の駆動力不足が心配されるが、1500回転前後でも特に不満はなく、十分な実用性を備える。
燃費性能を向上させた影響を挙げるなら、軽くアクセルペダルを踏み増した時に、エンジン回転が先行して高まる傾向が少し強いことだろう。先に触れたエンジンの効率が高い回転域を積極的に使うこともあって、速度とエンジン回転の上昇が一致しない場面が生じた。運転に支障はないが、ユーザーによっては気になるかも知れない。
「20周年記念車」のベースになったFXリミテッドには、ボディの傾き方を制御するスタビライザーが装着されない。タイヤも14インチになるが、「20周年記念車」ではフロント側にスタビライザーが備わり、タイヤサイズは15インチ(165/55R15)のブリヂストン・エコピアEP150だ。ターボを装着したワゴンRスティングレーTに準じた足まわりになる。
タイヤの指定空気圧は前後輪ともに240kPa。JC08モード燃費は30km/Lを達成するが、転がり抵抗を低減させた14インチの280kPaに比べて低く抑えられている。それでも乗り心地は硬めで、14インチサイズにスタビライザーを組み合わせた仕様の方が快適。「20周年記念車」は見栄えの良さを重視して15インチを採用したが、足まわりとタイヤのバランスを重視するなら14インチが良いだろう。
もっとも、タイヤが15インチに拡大された分だけ、操舵に対する反応は機敏な印象。高重心のボディでありながら、走行安定性のバランスも損なっていない。もともとターボモデル「T」のために開発された足まわりとあって、少しスポーティーな方向に味付けされている。
シートアレンジでは、リアシートのバックレストを前に倒すと座面も連動して下がり、ボックス状の広い荷室に変更することが可能。リアシートのスライドも行える。
これらの機能はダイハツ ムーヴや日産 デイズにも備わるが、ワゴンRの特徴は、リアシートのスライドも左右一体型ではなく分割式になることだ。チャイルドシートを左側に装着した時は、前方にスライドさせると運転席に座る親との距離を縮められる。一方、右側は後端に寄せると、大人がゆったりと座れる。多彩な使い分けを可能とした。
「20周年記念車」は前述のようにFXリミテッドをベースにする。車両価格は134万4000円だから9万4500円の上昇だが、4万2000円でオプション設定されるレーダーブレーキサポートやESP(横滑り防止装置)、ディスチャージヘッドランプ&オートライトシステム(以前のFXリミテッドは5万2500円でオプション設定したが今は省かれた)、運転席のシートヒーター、さらに先に述べたフロントスタビライザーと15インチタイヤ、専用タイプのグリルやカラードドアハンドルなどがセットされる。オプション価格で見れば安全装備とディスチャージヘッドランプで9万4500円の価格差が埋まるから、そのほかの装備の換算額になる5~6万円は割安と考えて良い。
さらにワゴンRスティングレーのノーマルエンジンを積んだXに比べると、同等の装備を持ちながら13万6500円安い。FXリミテッドからディスチャージヘッドランプのオプション設定を省いたことからも分かるように、「20周年記念車」は大量に売るべく買い得感を強めた。この量販モデルに、レーダーブレーキサポートをオプションではなく標準装着したことは大いに注目される。先進的な安全装備の装着比率が大幅に高まるからだ。
鉄道や航空機といった公共の交通機関は、事故が生じた時に安全装備に手落ちがあれば、そこを糾弾される。
ところがクルマについては、事故の責任は安全装備を含めた車両の設計ではなく、ドライバーの不注意だけに向けられることが多い。「安全装備を装着しなかったこともドライバーの不注意」という考え方だが、クルマのユーザーは大半が運転のプロではなくアマチュアだ。安全装備に対する理解が浅ければ、装着されていないクルマを選んでしまう。ほかの車種やグレードについても、「20周年記念車」と同様、安全装備の装着比率を高める考え方で取り組んで欲しい。
なお、標準ボディのベースグレードにおいて、レーダーブレーキサポートを装着するとESP(横滑り防止装置)も備わるのに、フロントスタビライザーが付かない点は不可解。基本的な走行安定性を高めてこそ、ESPも効果を発揮するからだ。現時点では安全装備も過渡期なのだろうが、相乗効果も考えて、危険回避性能の総合的な向上を図って欲しい。
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