軽自動車のEV化はあり得ない? スズキとトヨタがインドでEV協業(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
軽自動車のEV化には多くの壁が・・・
だが、実際に軽自動車のEV化を進めるのは多くの壁がある。
ひとつはコストだ。軽自動車は100万円前後から130万円前後までの価格帯が主流の製品だが、日本のユーザーからの細かい要望をすべて盛り込むため、製造にかかる工数や開発コストは常に上昇している。
それでも販売価格をほぼ据え置きにできているのは、徹底した原価低減を行っているからだ。それがEVになると、リチウムイオン二次電池のコストが高い。過去5年間で一気に下がってきたとはいえ、軽自動車をガソリン車と同じ航続距離を想定すると、電池のコストは車両原価の3~4割になってしまい、商品として成立しないだろう。
もちろん、モーターやインバーターなどの電気パワートレイン機器も、小型内燃機関と比べればコストがかなり高い。
もうひとつが、充電時間だ。現在EVで主流のリチウムイオン二次電池では電池の劣化を考慮するためなどの目的で、大出力で短時間に充電することは難しい。
日産の新型リーフでも満充電の8割までの急速充電時間は40分間と長い。軽自動車が日本国内でこれだけ多く利用されている最大の理由は、いつでも身軽にスイスイ動けるからで、充電時間という”あしかせ”は軽自動車にとって極めて大きなマイナス要因だ。
さらにもう1点は、超小型モビリティの存在だ。軽自動車と自動二輪車の中間のような新たなる車両基準で、国土交通省が7年前から実証試験を行ってきたが、法整備の目途は未だに立っていない案件である。
2017年に入って、超小型モビリティの今後の方向性について国土交通省は再び議論を始めている段階だ。もし近年中に法整備が行われた場合、小型EVとして超小型モビリティが日本で正式デビューするかもしれない。そうなれば、軽自動車は超小型モビリティとの差別化として、EV化を進めるという発想は消えることになるだろう。
以上、様々な理由があるが、今回のスズキのインド市場向けEV量産計画が、日本の軽自動車市場に及ぼす影響はほとんどないと思う。
[Text:桃田健史]
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