スバル XV ハイブリッド 新型車解説(2/2)

スバル XV ハイブリッド 新型車解説
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試乗して理解できた、XV ハイブリッドの狙い

スバル XV ハイブリッド
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エンジン回転を高めて走れば、ノーマルエンジンとの違いがほとんど分からないが、ゆったりと巡航している時には差が付く。

XVのリニアトロニックは、CVTではあるが、軽くアクセルを踏んだ程度ではあまり目立った変速は行わない。ミニバンなどのCVTは、軽くアクセルを踏んだだけでギヤ比が変わり、エンジン回転を高めて速度を上昇させる。これは無段階に変速できるCVTのメリットだが、エンジン回転が上昇してから速度が高まる動きになり、違和感を伴うことが多い。そこでスバル車は直結に近い状態を保とうとする。

この意図は理解できるが、ベースのXVでは若干の不満が生じる。エンジンが少し高回転指向ということもあり、1500~1800回転付近で巡航中(時速50~60kmくらい)、緩い加速をするために軽くアクセルペダルを踏み増しても、速度の上昇がいまひとつ鈍い。さらに踏み増せばCVTが変速を開始してエンジン回転と速度を高めるが、そうなると前述の違和感が生じる。20kg-mの最大トルクは4200回転で発生するが、「できれば3600回転くらいに下げて欲しい」と感じたりする。

スバル XV ハイブリッド

XVハイブリッドの効果は、まさにこの場面で発揮される。軽くアクセルペダルを踏み増すと、反応の素早いモーターが、即座にエンジンの駆動力を支援。力強さは感じないものの、ドライバーが意図した通りに、緩やかに速度を高める。肩を揉んでもらっている時、ちょうど良いところを押された感じというか、「おっ、きましたモーター支援。う~ん気持ちイイ~」という具合。ハイブリッド化されたことにより、低回転域からの加速が滑らかになったと考えれば良いだろう。XVの運転感覚がさらに洗練されている。

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そしてもうひとつ、乗り心地の向上も見逃せない。装着されていたタイヤは17インチ(225/55R17)のヨコハマ・ブルーアースE70。ベース車のXVと同じだが、路面のデコボコを直接的には伝えない。ベース車のXVは低い速度域で走行していると硬さが気になるが、XVハイブリッドは重厚感が増した印象だ。ノイズも抑えている。背景には専用電池の搭載に伴うボディの補強、吸音/遮音材などの採用がある。

走行安定性も良好。車両重量はベース車のXVよりも120kg増えており、専用電池はボディ後部の荷室下側に搭載されるが、操舵感や走行安定性はバランス良く仕上げた。

真のスバリストなら…

スバル XV ハイブリッド

以上のように、XVハイブリッドは燃費の向上率は小さめだが、巡航時からの加速を滑らかに洗練させ、乗り心地の向上も図った。低燃費化まで含めて「XVの上級シリーズ」という印象を受ける。

グレードは3種類を設け、ベストグレードは2.0i-Lアイサイト。車両価格は278万2500円で、ノーマルエンジンを積んだXVの同じグレードに対して31万5000円高い。

ただし、XVハイブリッドの2.0i-Lアイサイトでは、シート生地がファブリックからアルカンターラにグレードアップされ、シートの電動調節も運転席だけでなく助手席側にも追加される。となればハイブリッド化に伴う価格上昇は、実質的には26万円くらいだ。ホンダ車では20万円前後だから少し高いが、妥当な範囲に収まる。

スバル XV ハイブリッド
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そしてエコカー減税は、ベースとなるXVが50%、XVハイブリッドは免税だから、購入後の自動車税や同重量税の違いも踏まえると約7万円の差が付く。となれば、実質負担額の違いは19万円程度だ。実用燃費をJC08モードの85%、ガソリン価格を1リットル当たり150円で計算すると、8万kmを走ったあたりで、19万円の実質価格差をガソリン代の差額で埋められる。

「ハイブリッド車を買うのだから、絶対にトクをしたい」と考えると、8万kmの距離は長すぎる。

一方、「ハイブリッドXVのキモは上質な運転感覚で、環境性能も優れているから気分良く使える」という見方なら、「手放す時に燃料代の差額で実質価格差が埋まれば十分に満足」という判断も成り立つだろう。

さて、読者諸兄はどちらの立場を取られるだろうか。

この判断、XVハイブリッドに対するとらえ方は、真のスバリストか否かを見分ける一種の「踏み絵」のように思える。もちろん、スバリストなら後者の立場だ。スバルの造るクルマは、やはりひと味違う。いろいろなことを考えさせてくれる。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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