インド自動車市場の現状/日下部保雄のコラム

インド自動車市場の現状/日下部保雄のコラム

劇的に成長する中国に続いて、同じくアジアで注目されるインドに行ってきた。

中国は凄まじい速度で変わっていくが、インドはそれに比べるとユッタリと経済成長を続けているように見える。しかしGDPに対する工業化率も年々上がっており、この5年間で7%から11.6%に増え、さらに2015年には14.2%と予想される。この数字からするとやはり中国が異常な工業成長率を達成しているといった方が正しいだろう。

国全体がなりふり構わず突進している感じで、自動車で言えば最初は(今でも?)デッドコピーをものともせずに大量のメーカーが乱立し、その結果としてココ2~3年で独自性を打ち出そうとしている。

いくら中国の経済成長が高いといってもこれだけのメーカーが存続できるとは考えられず、次第に淘汰されつつ、パワーのあるところに吸収されていくだろう。

中国には日本では知られていないクルマが山のようにあるが、インドもタタ・ナノ以外に結構知られていないメーカーがある。

トップメーカーはご存知のように「マルチ・スズキ」。型遅れのアルトを販売しているイメージが強いが、スイフトを始め、その他にも13車種ものラインナップを揃えている。

一方、「 タタ・モーターズ」は20万円カーですっかり有名になったナノ以外に、インディカ、インディゴなど9車種を揃える。

民族系では他にアンバサダー(1957年登場!)を作る「 ヒンダスタン・モーターズ」がある。未だに販売されていることが奇跡だが、今ではディーゼルはユーロ4をクリアしているらしい。多目的車ではICML、マヒンドラ、プレミエールなどがあり、いずれも商用車などが中心で、インドのロジスティックスを担っている。

したがって、乗用車はタタとスズキなどの外資系が圧倒的だ。外資系としては、「ヒュンダイ」「VW」「シボレー」「シュコダ」などがメジャープレイヤーだが、ロールスロイスやランボルギーニ、ポルシェも販売されている。

そう言えば、私の行った先の南部の高原都市、バンガロールではタタ傘下のジャガーやランドローバーも見なかった。この街には、F1のフォース・インディアを持つオーナーの大邸宅があったが、そのガレージにはどんなクルマが何台入っているのか、想像すらつかない。

自動車市場におけるインドの潜在需要は

さて、中国では富裕層向けに大きなクルマの需要が先に来て、今は富裕層だけでなく高度成長期の日本のようにコンパクトカーの需要が伸びつつある。(中国はバブルと高度経済成長が一度に押し寄せているようなイメージ)

インドでは国民性だろうか、大きなクルマや高価なクルマは注目されず、商用車など実用性を重視した身近なクルマに人気が集まる。その為、マルチ・スズキが地道な努力によって乗用車の販売を成功に収めたのは、その国民性とニーズをよく理解していたからであろう。

そして、中国に次ぐ11億の人口と日本の10倍の国土が、クルマの必要性をますます広げることは明白だ。ちなみにインドでのクルマの普及率は人口1,000人に対して8台。日本では1,000人に対して400台なので、如何に潜在的な需要が大きいかが分かる。

そして、インドでは人がバイクに群がるように乗っている光景をよく見かける。公共交通機関も、それこそ溢れかえって人が乗っており、そういった意味ではタタのナノは優れた発想で造られたクルマであり、インドのためのクルマであると言えるだろう。

ナノを、安全基準や運動性能など日本・欧州の基準で語ってはいけない。最小限の必要装備でクルマの利便性を満たしていればそれでOKなのだ。

ただし、大ヒットになってきているかといえば、供給の問題もあり必ずしも当初期待したほどではないように見える。すでにクルマの快適性を求める人々からは物足りなさが感じられることと、上級グレードはスズキなどとの価格差が少なくなっていることが要因のようだ。むしろ、タタ・インディゴのようなもう一クラス上のクルマを良く見かけた。

インドの自動車市場は、トヨタが参入を宣言している本年末からいよいよ激しい競争に突入する。各メーカーは前述の潜在需要をいかに掘り起こせるかが、勝負の鍵を握ることになるだろう。

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日下部 保雄
筆者日下部 保雄

大学卒業後、モータージャーナリズムの世界へ入り、自動車専門誌をはじめ各媒体に新車の試乗レポートやコラムを寄稿。最近では、雑誌媒体のほかにFMラジオやインターネット自動車情報サイトでも活躍。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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