実験室で作られたプロトタイプのタイヤの性能は?!|横浜ゴム タイヤ冬期講習会【後編】(1/2)

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  1. 吸水バルーンマシマシの実験用タイヤがスゴい
  2. タイヤ2本分を合わせたウルトラワイドなトラック用タイヤ
  3. 傷を自己修復するコート材も開発中
  4. 横浜ゴム関連記事

日本未発表のオールシーズンタイヤや現行スタッドレスタイヤの性能比較など、前編ではウインタータイヤの走りを中心にとしたレポートをお届けしたが、後編では世の中に出て行く前のプロトタイプタイヤや、普段ほぼ意識しないトラックやバス用のタイヤの試乗、そして横浜ゴムの行っているタイヤ以外の意外なコトについてもお届けしようと思う。

前編の模様はこちらから

吸水バルーンマシマシの実験用タイヤがスゴい

横浜ゴムのメディア勉強会では、さらに面白い試みがいくつか催された。

まずひとつめは同社スタッドレスタイヤである「アイスガード6」(iG60)の発展性。

自らが「冬の怪物」とまで謳うiG60が、今後どのように進化して行くのか? そのヒントとなる試作スタッドレスタイヤで、氷上テストをすることができた。

iG60が高い氷上性能を持つ理由は、そのコンパウンド性能の高さゆえであることは前述した通り。特にプレミアム吸水ゴムに含まれる「新マイクロ吸水バルーン」がトレッド面に現れることで、親水性のあるバルーンの殻と、殻が割れたことによってできる空洞が氷とタイヤの間にある水膜を吸水する。さらにバルーンの殻が氷面をひっかくことで、制動力や駆動力に貢献するのである。

そして試作スタッドレスタイヤではこの吸水バルーンを、なんと通常の約3倍に増量した。

果たしてその効果は明らかに“3倍増し”の方が手応え感が強く、20km/hのパイロンスラロームでは明らかに安心感が高かった。

しかし同じく20km/hの直線制動では、氷上での蹴り出し効果が高い分だけスピードが出てしまい、最初はうまくその制動距離を縮められなかった。

それでも驚いたのは、時速にして2キロの差がありながらも停止地点が、iG60とほぼ同じ場所だったこと。これに注意して走行した2回目移行はiG60に対して1m近い差を付けて止まることができた。

ここから要約するに、いくら氷上性能が上がってもその分スピードが出てしてしまえば、アドバンテージは簡単に失われるということ。当たり前だがやっぱり凍った路面では、乗り手がいい気にならないことが大切である。

実験室で作ったタイヤはやっぱりスゴい!|写真ギャラリー

ちなみに横浜ゴムのテストドライバーはこうしたテストにおいて、常に制動地点までの進入速度を常に一定に保つ。そしてテストでは約8%、その制動距離を縮めたという。つまりいくら3倍増しのシャア専用ザクを与えられても、乗りこなせなければタイヤ開発はできないわけだ。

ちなみにこの吸水バルーンはどのくらいまで増やすことが可能なのかと訪ねると、「約5倍くらいまでは増やせて、単純な氷上実験ではその成果も出ている」という。

しかし実用化が難しいのは、まず材料コストが増えてしまうことがひとつ。そして吸水バルーンによってミクロの穴がトレッド面に増えることで、耐摩耗性がやや落ちる問題が見受けられた。ハッピーターンのように増量すればよい、というものではないらしい。

だが少なくともコストに関して何らかの技術で克服できれば、3倍増しなら可能性もなくはなさそう。またそれ以外の隠し球も含めて、iG60には後継モデル(iG60+か?)への拡張性がまだまだありそうな雰囲気であった。

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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