モータージャーナリストも勉強します。横浜ゴム、タイヤ冬期講習会【前編】(3/4)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:横浜ゴム
絶対的な安心感があるスタッドレスタイヤ、アイスガード6
対してアイスガード6は、転がりだしから路面をつかむ感触が高く、安心できた。カーブでもハンドルが効くことで早めにクルマの向きが変えられ、アクセルでそのコーナリングフォースを縦方向に変換することができる。操縦性の自由度が違うのだ。
だがこうした能力を持ってしても氷路面でタイヤは滑る。それを考えれば、多少の滑りにも慣れていない非降雪地域のドライバーにとっては、スタッドレスタイヤを選ぶ方が得策であると強く感じた。
屋内に作られた氷盤ではスラローム比較を行ったが、100%氷の路面だとその差はより一層顕著になった。操舵一発目の慎重な操作でならBluEarth 4Sもノーズをコーナーの内側へ入れることができる。しかしここで発生した慣性をリアタイヤが止めきれず、慌ててブレーキを踏めばクルマはABSを効かせながら斜めに進む。速度感をつかんでない一回目の試乗では、コース折り返し地点のUターンすら曲がりきれない有様。時速はたったの20km/hだったが、路面だけでなく肝まで冷えてしまった。
この性能差こそが、大きく言ってスタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤの、コンパウンド(ゴム)とパターンの差である。
BluEarth 4Sもそのゴムにはシリカを多く配合し、低温時の路面追従性は高めている。しかしそのゴムにはアイスガード6のようなマイクロ吸水バルーンやホワイトゲルを搭載しておらず、氷の路面にできる水を排除できないのだ。またトレッド面のセンター領域には細い溝を沢山配置しているものの、それはスタッドレスタイヤのサイプほど細かく路面の凹凸に追従できるものではなく、ましてや吸水効果もない。
この性能差を考えると、日本では年に数回しか雪が降らない地域でも、オールシーズンタイヤは向いてないと筆者は考える。日本の雪質では日陰の坂道や欄干の継ぎ目に残った雪が、翌朝には凍る。むしろ雪だけが残る状況は少ないだろう。
もちろんこうした機能がない分だけ、ウインタータイヤはゴムがよれず、スタッドレスタイヤよりもしっかりとクルマを支えてドライ路面を走ることができる。そして溝面積が多い分だけ、ウェット性能にも優れる。
だから雪質がさらっとしており、これが溶けにくい(気温が低い)ヨーロッパ主要部であればオールシーズンタイヤ(やウインタータイヤ)は有効。その結果需要もここ数年で市場全体の10%以上にまで高まっているのだ。
この記事にコメントする