ジープ コマンダー 試乗レポート
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:原田淳
3列シートを採用したジープブランドのフラッグシップモデル
ジープブランドのフラッグシップにして、初めての3列シート7人乗りモデル――そんなセールストークが並ぶのが、2005年春のニューヨーク・ショーで初披露をされたジープコマンダー。いよいよ日本にも上陸となったこのモデルは、「今後数年の間に実施をされる、ジープのニューモデル攻勢の最先鋒」ともいう。
ハードウェア上のベースとなったのはグランドチェロキー。実際、双方ともに同様の4WDシステムを搭載し、さらにホイールベースも同寸法なので「機動性とオフロード性能はグランドチェロキーと変わらない」とジープではアピールする。ちなみに、両者に採用されるのは“クォドラドライブII”と呼ばれる、電子制御式のトランスファとセンターデフを含む3つのデフに作用をする電子制御LSDの組み合わせ。独立懸架式のフロントサスにラック&ピニオン式のステアリングなど、「さすがにジープ車といえどもオンロード走行性の向上も無視出来なくなっているな」と時代を感じさせるメカニズムを採用する一方、今流行の “SUV”などとは明確に一線を画すオフロード性の実現もおろそかにしないのが、いかにもジープ流儀なクルマづくりと言える。
生粋のオフローダーテイストを演出
「ジープで初めての3列シートを採用」。が、それゆえに…と言うことか、ルックスではエクステリアもインテリアも、何とかミニバン的な雰囲気には近づかないようにと気を配った、いかにもジープ車らしいタフでワイルドなテイストを演じようと頑張るのが見どころでもある。
かつてのジープ・ワゴニアやウィリス・ステーションワゴンなど、“伝説のジープ車”から着想を得たという外観は、台形オーバーフェンダーやボルト留め風のライトユニットなどが生粋のオフローダー・テイストを演出。
同様にインテリアでも空調ヴェント・パネルの固定に実際に六角ボルトを用いるなどで、このモデルがあくまでも“純正ジープ車”である事を見る人にアピールする。後方のシートほどに地上からの着座位置が高くなるスタジアム方式のシートレイアウトを採用するのもこのクルマの特徴だ。それに合わせてヘッドスペースを確保するべく、実はルーフパネルもステップ状に後方部分が高いデザイン。しかし、外観上はそんな造形を敢えてフラットに見せる工夫がなされているのも面白い。
実は標準装備のルーフレールのお陰で、サイドビューではこのクルマのルーフのステップ部分が隠されてしまうのだ。確かに、もしもここでの“段差”を強調してしまうと、いかにも「英国生まれの歴史あるオフローダー」との近似性が強くなってしまいそうだ。
総合バランスの『4.7』、力強さの『5.7HEMI』
まずは『4.7』で走り出す。アメリカンV8エンジンならではの底力を期待すると、このクルマのスタートシーンは「予想外におとなしい」と感じる人も居るだろう。車重が2.3トンを超えるヘビー級という影響ももちろんあろうが、それ以上に全般に駆動ギアレシオが高い(=ハイギアード)事がそんな要因のひとつでありそうだ。静粛性の高さは予想以上だが、『ジープ』というブランドからするとむしろ「サウンドが物足りない」という声も上がるかも知れない。ステアリングの正確性はなかなかで、やはり相当にオンロードを意識して開発されて来た事は間違いない。
一方、『5.7HEMI』に乗り換えるとさすがに加速の力感は1ランク増し。スタートの瞬間の加速Gの立ち上がりはやはりそれほどではないが、その先の力強さが『4.7』とは明確に異なる。ただし、『4.7』よりも大幅アップとなる前輪荷重はそれなりの負担をフロントタイヤに強いている実感がある。うねり路面でのフラット感などはむしろ『4.7』が上。「総合バランスの『4.7』、力強さの『5.7HEMI』」と評するのが当たっていよう。
日本車に乗る限りは味わえない、輸入車に乗る楽しさ
全長が4.8mを割りこみ、全幅も1.9mに「抑えられた」(?)コマンダーは、そうしたスペック上からは日本の道でも何とかそう身構えずに使いこなせそうな印象を与えてくれる。が、それでもカウルポイントやベルトラインが高いのでボディ直近の死角は大きめだし、せっかくのガラスハッチも位置が高いので小柄な人には使いづらいなど、やはり“アメリカ生まれ”がもたらすある種日本の環境に対する“軋轢”のような感覚は、こうしてところどころに散見されるのは事実だ。
しかし同時に、そうした部分こそが日本車に乗る限りは味わえない、輸入車に乗る楽しさとも表裏一体の関係にある事も否定が出来ない。実利面だけを評価してのクルマ選びを行うなら、この国では日本車をチョイスするのが最も賢明であるのは言うまでもないのだ。
そんな“異文化度”の高さに主眼を置いた輸入車選びの評価軸からすると、「ジープらしさを最大限にアピールしつつも、これまでのジープ車にはないユーティリティ性も手に入れた」というコマンダーはなかなかに魅力的な存在。このクルマの登場で、ジープというブランドは新たな顧客層を大きく開拓する事になりそうである。
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