ポルシェ 911 タルガ4S 試乗レポート(2/3)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村 栄二
PDKはティプトロに敵うのか
直噴エンジン+PDKとなったパワートレインの第一印象は、まずはエンジンが文句なく速い。3.8Lのフラット6は、直噴化される前から十分に速かったが、さらにピックアップが鋭くなった。全域でフラットに太いトルクを発生しつつ、突き抜けるように力強く吹け上がる。
PDKの制御は、通常モードでは運転しやすさに配慮したマイルドなレスポンス。ATを模したクリープもある。スポーツやスポーツプラスモードを選択すると、人間業のMT操作では不可能な速さでシフトチェンジを実現する。エンジンの直噴化の恩恵もあってか、ブリッピングも非常に的確だ。
ただし、重箱の隅をつつくように試すと、ゼロスタート時や、駐車時など微低速走行時と、とくにそれを勾配のある場所で行なう場合のスムーズさは、どうしてもATには及ばない。さらに、全開走行時はいいのだが、常用域での緩加減速で、ちょっとギクシャクすることがある。また、通常モードでは、駆動力の変動による挙動の乱れを嫌ってか、一定の条件下でステアリングを切った状態でのシフトチェンジのレスポンスをかなり落としていることなど、いくつか気になる点もあった。
PDKは機構的には次世代のMTだが、ポルシェのラインアップとしては、ティプトロの代わりである。そして、日本でのポルシェユーザーの9割近くがティプトロを購入していた現実もある。そうなると、ユーザーが求めるものを考えると、とくにタルガの場合は、もうしばらくティプトロが残っていたほうがよかったような気もしなくもない。
とはいえ、そこはさすがポルシェ。少し前に出たカレラに対し、早くも改良の痕跡をうかがわせた。微低速時のスナッチが減り、またエンジン回転が不要に上昇してクラッチがつながるのを待つようなシーンが少なくなっていたのだ。おそらく今後も、非常に早いタイミングで改良を繰り返していくことと思われる。
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