スポーツカー日本代表「マツダ ロードスター」開発者に訊く! ~マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー~(2/2)

スポーツカー日本代表「マツダ ロードスター」開発者に訊く! ~マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー~
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「人馬一体」思想はアクセル操作の設定にも

「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」マツダ 新型 ロードスター RS[ボディカラー:クリスタルホワイトマイカ] 試乗1

■MU:ブレーキのほかに、今回の一部改良ではアクセルの設定も見直しました。以前はアクセルペダルの踏み方に対し動力性能が比較的早期に高まりましたが、改善されたタイプはペダル操作に対して忠実に反応します。

■AC1:そうなんです。多くの日本車の場合、動力性能が高いクルマだと思わせるために、軽くアクセルを踏んだだけでスロットルが大きく開き、勢い良く加速する車種が多いんですよ。

そんなクルマでも、ディーラーでの簡易な試乗レベルでは「パワーがあるねぇ」という話になりますが、細かな速度調節が行いにくく、使い込むと「踏み加減が70%でも、100%のフルスロットルでも変わらない」と気付く。ユーザーはダマされて底の浅いクルマを買わされた気分になり、ちょっとガッカリします。

もちろんロードスターはもともとそこまで極端ではなかったですが、さらに繊細になったということですね。

SKYACTIVテクノロジーなら「ECOスイッチ」など不要!

「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」マツダ 新型 ロードスター RS[ボディカラー:クリスタルホワイトマイカ] 試乗4

■MU:アクセル操作に対して忠実な設定は、いろいろな場面で扱いやすいです。デリケートな速度調節が求められるスポーツドライブはもちろん、アウトバーンの走行でも差が付きます。スロットルが早期に大きく開くと、フルにアクセルを踏んでいる状態でペダルを少し戻しても、速度がほとんど下がりません。70%でフルスロットルになれば、100%から70%に戻しても車速は変わらないわけです。これでは「人馬一体」とはいえず、改良を施しました。

ただし、常に忠実な設定にすると、これまたダルイ感じになるのです。そこでペダルの踏み込み速度も検知しています。素早く踏み込んだ時には動力性能も早めに高まり、ジワジワと踏んだ時には忠実になります。

■AC1:この考え方は今後のマツダ全車に反映されるのですか。

■MU:「スカイアクティブ・テクノロジー」の考え方を踏襲しました。従って今後のマツダ車はすべて同様の考え方で制御されます。余計にアクセルを踏まないので、燃費の面でも有利です。わざわざエコドライブ用の切り替えスイッチを設け、アクセル操作に対する動力性能の高まり方を鈍く抑える必要もありません。

■AC1:運転を楽しむ時に限らず、日常的にもメリットがあるわけですね。

ここまでこだわり抜いているのは、マツダとポルシェだけ!?

「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」全てのマツダ車の操安に関わる車両開発本部 操安性能開発部 操安性能開発グループの梅津 大輔氏

■MU:ブレーキの制御も日常的に役立ちます。例えば信号で停車する時、ボディが「カックン」と揺れないよう、停車寸前にブレーキを少し戻しますよね。この操作がとても滑らかに行えます。

■AC1:具体的にどのような変更を加えたのでしょうか。

■MU:ブレーキのバキューム・ブースター(エンジンの吸入に伴う負圧などを利用して、ブレーキの圧力を高める倍力装置)を見直しました。従来はブレーキを戻した時に瞬間的に圧力が残っていて、その後で抜ける動きでしたが、改善されたタイプはペダルの追従性を高めています。

■AC1:こういった工夫はほかのメーカーも行っているのでしょうか。

■MU:ポルシェは積極的ですね。今の911は扱いやすいですが、エンジンを車両の後部に搭載する方式(RR)は以前と同じです。荷重移動を確実に行うことが求められる。ポルシェは911以外の車種も含め、コントロール性の考え方が私たちマツダ車に通じる面がありますね。

新型 ロードスターでは他にも、チン スポイラー(フロントバンパー下部の小型スポイラー)の採用で前後のリフトバランスも向上させたことで、さらに荷重移動を行いやすくしました。

ロードスターらしさを保つためにアクティブボンネットを採用

「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」マツダ 新型 ロードスター アクティブボンネット作動用のアクチュエーター(中央にある縦型の黒い筒)「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」マツダ 新型 ロードスター RS 2.0リッター 直4 DOHC LF-VE[RS]型エンジン

■AC1:3つ目の変更点はどのような内容でしょう。

■MU:先に触れた『歩行者保護対策』です。歩行者と接触して頭部がボンネットに当たった時、傷害値を小さくしなければなりません。ボンネットとエンジンの間に50mmくらいの隙間を取る必要がある。しかしロードスターは15~20mmです。50mmも確保すればボンネットが大きく持ち上がり、デザインに無理が生じて欧州の視界要件も満たせません。そこで「アクティブボンネット」を採用しました。

■AC1:アクティブボンネットとはどのような機能ですか。

 ■MU:エアバッグと同じように火薬が爆発してロッドが持ち上がります。それによって、歩行者衝突時にのみボンネットが少し持ち上がり、エンジンとの隙間を確保する仕組みです。

構成部品は歩行者との接触を検知するセンサー、ボンネットを持ち上げるアクチュエーター、ダブルタイプのボンネット・ヒンジ、作動を指示するコンピューター、ハーネス(電線の束)などです。

ジムカーナとアクティブボンネット、意外な利害関係とは

アクティブボンネットの仕組みは必須でした。しかし「人馬一体」の走りを得るには、重量の増加は避けたい。開発段階では7.9kg重くなりましたが、最終的には4.1kgの増加に抑えました。バンパーで400g、ハーネスで104g、アルミホイール1本当たり60gという具合に、新たに設計する部品をグラム単位で軽くしたからです。世界で最も部品点数が少なくて軽い「アクティブボンネット」になりました。

誤作動のチェックも入念です。特にロードスターでは、ジムカーナを楽しむお客様が多い。パイロンに当たった時、歩行者と判断して「アクティブボンネット」が作動すると困るので、細心の注意を払いました。もちろん歩行者との接触では確実に作動しなければなりませんから、テストを繰り返しました。

■AC1:内外装のデザインから歩行者に対する安全性、さらに運転感覚まで、さまざまな部分がロードスターらしくなったわけですね。

■MU:弊社の「美祢自動車試験場」(元サーキットコース)で新型ロードスターを試乗してもらうと、皆さんのタイムが従来型に比べて向上するのです。特にテストドライバーより、一般ドライバーの方が向上率が大きい。それは新型ロードスターが、クルマが持っている性能を容易に引き出せるようになったからです。ロードスターとドライバーのコニュニケーション、「人馬一体」が一段と深まったと考えています。

初代の魅力に原点回帰した新型ロードスター、そしてまだ見ぬ「次期ロードスター」の姿を想う

「マツダ 新型 ロードスター 開発ストーリー」インタビューは次第に熱を帯び、当初の予定を大幅に超すほどだった。感謝!

さまざまな技量のドライバーが、クルマと一体になってその性能を十分に引き出せる運転感覚は、初代ロードスターの大切な持ち味だった。今回の一部改良にはそうした「原点回帰」の考え方があるように思えてならない。

初代NA型「ユーノス」ロードスターでドライビングの楽しさに改めて目覚めた多くの「元」ユーザーにとって、今回の一部改良モデルの仕上がりは、非常に気になるところだろう。かく言う私もその1人だ。今回は本格的な試乗は叶わなかったが、新型ロードスターを公道で走ることが出来る日が待ち遠しい。

またこの進化の方向性を踏まえると、2013年か2014年にも登場とウワサの次期型4代目ロードスターにも大いに期待がかかる。更なる原点回帰を経て、まさに「人馬一体」感も濃厚な、初代ロードスターのようにコーナリング時の挙動が変わるプロセスも堪能できるスポーツカーに仕上がるのではないだろうか。こちらも大いに期待したい。

(インタビュアー:渡辺陽一郎)

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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