マツダ ロードスター RS (RHT)試乗レポート/藤島知子(2/2)
- 筆者: 藤島 知子
これまでグラム単位で軽量化を図ってきたロードスターにとっては大きな重量増となるため、重心が高くなる点でも走りのバランスが崩れないものかと懸念していたが、その分、バンパーの板厚を肉薄化したり、不要なワイヤーハーネスを取り除くことで-5kgのダイエットに成功。全体として4kgの重量増に留まらせた。
実際にコーナーを走ってみても、専用ユニットの影響で嫌なロール感に悩まされることもない。まるで無駄な肉が適所に移動したかのようにボディーメイクが行き届き、全体のバランスが整えられているように感じられた。
今回のマイチェンではスロットルの制御プログラムが変更され、ブレーキの特性にも変更が加えられた。
改良前のモデルのスロットル開度はアクセルペダルを踏んだ直後のレスポンスを意識したタイプだったので、最初に大きく開く分、ペダルを半分ほど踏み込んだあたりからは伸び感を与えないイメージだった。それに対して、今回のモデルは出足のレスポンスに“溜め”を感じるまったりした反応をみせるもので、アクセルペダルを大きく踏み込んだ際に加速度が増していくイメージだ。
今回の変更によって、アクセルペダルのストローク量は幅広い範囲でコントロールしながら走れるぶん、ドライバーはクルマをコントロールしていると実感しやすくなっている。
一般的なドライバーが不安なく走れる感覚を手にしたことに加えて、会話を楽しみながらゆったり走るシーンでは唐突な動きがないぶん、バランスが取れた走りになったといえるだろう。改良前と同じ2LのNAエンジンなのに、まるで性格が変わったかのように踏み込んだ時の爽快感も増している。出足の加速で“溜め”をもたらす発進加速は燃費面でも効果が得られそうだ。
危なげなく走れ、スポーツモデルの醍醐味を満喫できる
ただ、サーキットを走るようなスポーツドライビングのシーンでコンマ1秒を競う場合は、出足の反応の鈍さにまどろっこしさを感じるかも知れない。
本来であれば、スポーツカーは初心者が不安なく扱えて、中級以上のスキルをもつドライバーがスポーツドライビングをしても楽しめることが理想ではあるが、走り応えを満喫したいドライバーからすると、今回の改良はレスポンス面で角が丸められたぶん、保守的な変更に映る。『ECO』や『SPORT』といった走行モードの切り替えを使わない路線で来たマツダとしては、環境性能と走りの愉しさを両立する上ではロードスター本来の一体感のある走りをどうバランスさせていくかが次期モデルの課題となりそうだ。
燃費については、普通に流せば10km/Lを超える実用燃費を披露するロードスターであるだけに、カタログ値ばかりに縛られず、人が感じる走りの気持ちよさをスポイルしないクルマ作りに期待したい。
また、特性が見直されたブレーキブースターについては、強めにブレーキを踏むような場面でも、ボディが前方に沈み込むような“つんのめり感”が少ない。そのメリットとして考えられる点は、コーナーの進入で車両の姿勢をフラットに収めることで、サスペンションやダンパーが無理なく仕事ができる上でも好ましいといえる。
また、ブレーキペダルの抜き際は、わずかに制動力を残すようになっていて、コーナーの立ち上がりではスムーズな姿勢変化をみせてくれる。
車両が不安定に揺られづらいという意味でも、誰が乗っても安心感が得られるセッティングといえるが、その反面、スポーツドライビングをする上ではブレーキが残るぶん、リアのスリップアングルがつきにくいと感じる場面もあるものの、初心者がスポーツカーの挙動を学ぶには適したセッティングといえるだろう。
危なげなく走れることで、スポーツモデルの醍醐味を満喫できることもスポーツカーにとっては大切なことだ。
ただ、ロードスターはRHTとソフトトップという2つのキャラクターを作り分けている貴重なスポーツモデルといえる。2つのモデルを選ぶユーザーの要求を満たす上でも、走り手にスキルを求める仕様があっても良いのではないかと思った。
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