【DESIGNER’S ROOM】マツダ 新型 アテンザ デザイナーインタビュー/マツダ チーフデザイナー 玉谷 聡(3/4)
- 筆者: 森口 将之
- カメラマン:オートックワン編集部・マツダ
複雑な造形を実現させた生産現場のチカラ
AO:でもここまで複雑な造形だと、生産現場の方から反対されませんでしたか。
T:現場の人たちはモチベーションが高い人が多くて、美しいと思う形に対しては、なんとかして形を実現しようとしてくれるんです。もちろんトライ&エラーの連続でした。とくにラインが消えていくところなどは、形に魅力がなかったら「止めてくれ」と言われるところですが、「これが必要なんだ」と説得すると、「じゃあやってみようか」となるわけです。鉄は弾性を持っていますから、はっきりしたエッジは残るんですけど、ユルい部分は戻ってしまいます。なのでプレスの打ち方を何度も工夫してもらったりしました。
AO:リアもシグネチャーウイング同様、クロームのモールが効いていますね。
T:フロントのシグネチャーウイングに対して、リアはこのクラスのクルマにふさわしい表現として、クロームパーツを加えました。共通しているのは、両端を持ち上げたことです。サイドのプレスラインにつなげているのです。ちなみにリアコンビランプは、セダンとワゴンで違っています。同じDNAを持っているように見せつつ、ワゴンは開口幅が広いので、分割の位置からして変えています。ボディ後部の絞り込み量もセダンと違うので、ランプの長さも異なっています。
このプロポーション実現には必要不可欠だった19インチホイール
AO:ホイールは17インチと19インチで、このクラスの国産車としては大径ですが。
T:19インチはデザイナーからの要求です。魂動デザインには19インチが絶対に必要という主張は、経営陣からも認めて頂きましたし、骨格という視点で考えても、これだけのロングホイールベースには19インチは不可欠だと思ったのです。17インチに変わるだけで、ホイールベースがかなり長く見えますから。ワゴンは少しホイールベースが短いので、19インチを履かせることで、他のクルマにはない特異な個性が表現できました。
AO:スカイアクティブ・テクノロジーを採用したことで、前輪とキャビンとの位置関係が今までのアテンザと変わりましたが。
T:端的に言えば、全長に対してキャビンの重心位置を後ろ寄りにするので、反力で前に進もうという意志がはっきり感じ取れるのではないかと思います。ただキャビンが後方に移動したのに対し、人間の座る位置は変わっていないので、自動的にリアのヘッドルームは確保されました。このクラスにふさわしい居住空間はしっかり確保しています。
一方フロントについては、キャビンを引くというよりAピラーの付け根を少し後方に移動させて立てたと言うほうが正しいでしょう。ピラーがドライバーに近づいたので、視界の広がりが出て、コーナーの出口が見やすくなっています。
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