ホンダ ゼスト 試乗レポート

ホンダが剛速球で投げ込んできたクルマ

ホンダが軽自動車市場に新しく投入したゼストは、市場のど真ん中に投げ込んだ直球(開発責任者の五十嵐さんは剛速球と言っていたが)ともいえるクルマ。売れ筋のワゴンRやライフと真っ向から対決するクルマだ。

これまでホンダでは軽自動車の主力モデルとしてライフを設定し、女性ユーザーを中心に一定の売れ行きを確保していた。さらにザッツを投入したもののこちらは決して好調とはいえず低価格の特別仕様車を中心に売れている状態だった。

そこで、若い男性ユーザーや家族ユーザーなどを主なターゲットに開発したのがゼストで、ハイトワゴン系の軽自動車として作られた。

軽自動車でありなからステップワゴン並みの室内高を確保したほか、しっかり作られた後席、大きな開口部を持つ広いラゲッジスペースなど、従来の軽自動車の水準を超えたクルマ作りがなされている。軽自動車として初めてSRSカーテンエアバッグを設定したのも注目される点だ。

中身(インテリア)の質は高く、懐(室内)も深い(広い)。

外観スタイルは台形をイメージしたボクシーなデザインが特徴だが、全体的には際立って印象的な部分は少なく、割と平凡な印象。ライフに比べれば男性的なイメージが強いともいえるが、ひと目でぱっとユーザーを惹きつけるようなデザインではない。

標準系のほかにエアロパーツなどを装着したスポーツ系があって、外観デザインにも違いが設けられているが、スポーツ系にしても比較的おとなしい感じのデザインである。ゼストスポーツのターボ車になるとリヤのテールゲートスポイラーが標準となるので、やっと差別化が感じられる。これは無限やモデューロのエアロパーツを販売したいという意向によるものかも知れない。

インテリアは軽自動車としてはクォリティの高さを感じさせる仕上がりで、インパネのセンター部分などはメタル調の塗装によって良くできた印象。室内の広さも1BOX系を除けば、タントに次ぐ広さで軽自動車としては相当に広い空間が確保されている。

ターボでなくても高いレベルの走行を展開

ゼストの走りは相当に良い。デザインはパッケージング、コンセプトなどは特に際立ったものがないが、走りの質感がとても高いレベルにあり、好印象を持った。

走り出してまず最初に感じられるのが騒音レベルの低さで、クルージング時にはエンジン音もロードノイズも気にならないし、加速時のエンジン音も良く抑えられている。ヘタなコンパクトカーよりずっと静かな印象だ。振動も含めた騒音レベルの低さが、走りの質感にもつながっている。

動力性能については、カタログデータは平均レベル。というか、軽自動車のエンジンは性能的にどれも似たようなものになるのは止むを得ない。ただホンダ独自のi-DSI仕様を採用することで、吹き上がりのスムーズさやトルク感などに特徴がある。

自然吸気エンジンでもけっこう良く走る印象だ。

足回りも、乗り心地と安定性とが上手にバランスされている印象で、特に自然吸気エンジンを搭載した14タイヤ装着車は、良い印象。ターボ車の足回りは、市街地などではちょっと硬すぎる印象があった。

ファミリーユーズにも充分対応可能

軽自動車といってもさまざまな使い方が考えられるが、ゼストはゼストスポーツが若い男性ユーザーに、また標準のゼストがファミリーユーザーを中心にした幅広いユーザーに受け入れられると思う。

一般的にはパーソナルな使い方をされることが多いのが軽自動車だが、ゼストは後席の広さや後席のシートもしっかり作られていること、さらに乗り心地の良さなどから、ファミリーユーザーのニーズにも十分に対応できる仕様になっている。

グレード選びはNを除外して考えると、標準のGで充分という印象。ゼストスポーツを選ぶ場合でもGターボで十分だ。GとWではエアコンのオート機能とフィルター、タイヤサイズ、アクティブパッケージなどだから、決定的な要素は少ないし、必要に応じてオプションで装着することもできる。Gなら本体価格も 110万円ほどで、軽自動車の売れ筋価格帯にある。ターボでも装備差は基本的に共通なので、WターボではなくGターボで充分だと思う。

オプションはサイドエアバッグとカーテンエアバッグのセットのほか、必要に応じてカーナビやオーディオ、アクティブパッケージやセキュリティパッケージなどを選択すればいい。