空気の力で走りの質感を大幅アップ!? ホンダ S660ファイナル版“モデューロ X”は只者でないコンプリートカーだった(2/2)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:小林 岳夫・Honda・ホンダアクセス
S660 モデューロXはポルシェの性能を空気の力で再現!?
さらに、開発を統括した福田正剛氏は『GT3なんて、なに言ってんだよと思われたことでしょう』と笑いながらも、モデューロX開発の真意を教えてくれた。
『“GT3”というとポルシェをイメージしますが、ポルシェのトラクション(駆動力)のかかり方を、よく「平板(ひらいた)感」という言葉で表現するとおり、平板がしなって蹴り出していく感覚があるのを、ウチでは空力で出そうと取り組みました』と語る。
タイヤの性能を引き出すためにも、空気の力は大きい。専門的な話になるが、ロールセンター(重心高)や前後配分も変えることで、モーメント(回転量)が早く動くとすぐに限界が来るところを、より人間の感覚にあうように、タイヤを有効に使うためじんわりと移るようにした。
冬場のテストコースでは、NSXよりも速く走れたことも
もうひとつがリアの脚の動きをより有効に使うこと。2輪でアンダーステアを出すのではなく、4輪を上手く使うことで小さな舵角で曲がれる。事実、今回試乗したコースのタイトコーナーでもアクセルをちょっと抜くだけで、スッときれいにターンインできて、より早いタイミングでアクセルを踏んで立ち上がることができる。
それにも空力の寄与は大きく、条件が悪くなるほど、いかにタイヤの性能をフルを使えているかが効いてくる。冬場の鷹栖テストコースの雪上でも、なんとNSXよりもS660モデューロXのほうが速く走れたというから驚く。
空力は直進性に加え、うねりのある路面への追従性にも効く!
鷹栖では車速を上げた状態での走行も試していて、アップダウンの激しいコースでも、フラットな姿勢を保ちながら全開で駆け抜けることができたという。
『まっすぐも曲げることも、エアロの力でさらに上の次元に持っていくことができます。フラつきやすさを表す「ヨーレート頻度」の解析をしたこともあるのですが、やはりノーマルに比べるとモデューロXは変化が圧倒的に少ない。
それを直進だけでなく曲がるほうも含めて開発したところ、高速でのアンジュレーション(路面のうねり)への寛容性が高まり、ピッチングによって起こる荷重やヨーや接地性の変化を空力造形で小さくすることができました。』
衝撃! エアロの力はドライバーの視野すら改善してしまった!
『すると何が起こるかというと、視界が変わります。目線が安定することで、やけに遠くまで見えるようになるのです』と福田氏はいう。
そして、『S660はノーマルのままでも十分に楽しめるクルマですが、さらに上の境地を目指して、もう少しこうなるといいなという思いを具現化したのがモデューロXです。
年代の高い方や、より質の高い走りを求めるファンの方に、この究極のS660をぜひ味わっていただけると幸いです』と続けた。
[筆者: 岡本 幸一郎/撮影:小林 岳夫・Honda・ホンダアクセス]
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ホンダ S660 Modulo x Version Z(S660 Modulo X特別仕様車) 主要スペック(諸元)
全長3395mm×全幅1475mm×全高:1180mm/ホイールベース:2285mm/車両重量:830kg/乗車定員:2名/エンジン形式:直列3気筒 DOHC インタークーラー付ターボチャージャー ガソリンエンジン/最高出力:64ps(47kW)/6000rpm/最大トルク:10.6kgfm(104Nm)/2600rpm/トランスミッション:6速マニュアルトランスミッション/サスペンション形式:(前・後)マクファーソン式/タイヤサイズ:(前)165/55R15(後)195/45R16/メーカー希望小売価格:315万400円(消費税込)
※主要スペックはベース車の「S660 α」に準ずる(メーカー参考数値/燃料消費率除く)。ただし登録時に持ち込み検査が必要なため、検査時には実測値が適用される。
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