ホンダ フィットアリア 試乗レポート

  • 筆者: 西沢 ひろみ
  • カメラマン:森山俊一
ホンダ フィットアリア 試乗レポート
リアスタイリング フロントシート リアシート シートアレンジ トランクルーム インパネ エンジン ステアリングスイッチ 試乗 フロントスタイリング 画像ギャラリーはこちら

フィットの4ドアセダンは最もニーズのあるタイで生産。国内では輸入車としての位置付けだ。

リアスタイリングインパネ

爆発的ヒットを飛ばすフィットとプラットフォームを共有する派生機種が次々に誕生している。生活の道具として3列シートを配置したモビリオ、ガレージボックスをイメージしたスパイク、そして新たに登場したのがアジアをメイン市場とするスモールセダンのアリアだ。このクルマが他の派生機種と大きく違うところは、ホンダのタイ工場で生産されること。アジアおよび日本で販売するアリアの生産効率を考えて、最もニーズがある地域が選ばれたのだ。月販目標台数は、全生産数の30%にあたる2000台。国内でのアリアは輸入車としての位置付けになる。

ちなみに部品は、CVTや一部のエンジンパーツ、タイヤなどを除く7割がタイ製。徹底した品質管理のうえでアリアは産声をあげている。

セダンの常識を超えたシートアレンジと広いラゲッジルームが自慢。

シートアレンジトランクルーム

国内のセダン市場が冷え込んでいるとは言っても、登録車の全台数からみれば4分の1を占めている。確実に存在するセダン派ユーザーをターゲットとするアリアは、従来のセダンにはなかった魅力を前面に主張している。

そのひとつが、リアシートのシートアレンジだ。6:4分割可倒式の背もたれを倒すと、ワンアクションでフラットな空間が広がる。座面を持ち上げれば、足元スペースに室内高1245Lの空間が生まれるのだ。機能的にはフィットやスパイクと同じだが、格段に操作性を向上させていることと、セダンで実現したところを大きく評価したい。もうひとつは、ホンダ車最大のトランクルーム。レジェンドよりも大きい500Lの容量は、9インチのゴルフバック4個を積んでもまだ余裕がある。

室内全体は、質感向上に力が注がれた。内装色は濃淡のベージュ2トーンを採用。トランクルームにこだわるセダンユーザーを意識して、収納にはすべてフタがつけられている。

1.5Lは燃費志向のi-DSIエンジンとマルチマチックSと7スピードモードが組み合わせられた。

エンジンステアリングスイッチ

アリアに用意されたエンジンは燃費志向のI-DSI。1.3Lがフィットと、1.5Lがモビリオと共通だ。

Dレンジに入れてアクセルを踏む。予想していた発進加速は、ストレスこそないけれど、何の変哲もないフィーリング。ところが、アリアは想像とは異なる軽やかでスムーズな加速を見せてくれた。1.3Lでもフィットより重い車重を感じることはないし、1.5Lは+αの余裕が伺える。アクセルペダルの感覚、パワステの操舵感も軽やかで、男性はもう少し手応えが欲しいかもしれないが、女性には扱いやすさと乗りやすさが感じられた。

乗り味も、背の高いモビリオに比べればグンと走行安定性が得られるし、フィットに比べるとしなやかな乗り心地と3ボックスらしいしっかり感が味わえる。

1.5Lのミッションは、スパイク&フィット1.5Tに新採用されたマルチマチックS+7スピードモードとの組み合わせ。ステアリングスイッチでの変速は、確かにスポーツライクな楽しさがある。豪華仕様を好むアジア&日本人好みかもしれない。だけど、本質的にアリアに必要かどうかは疑問が残った。

タイ生産の品質は間違いない。けれども積極的なイメージアップは必要かもしれない。

フロントシートリアシート

国内には、アジアで生産する製品に対して“安かろう、悪かろう”のイメージがある。「タイで生産、日本に輸入」。このアリアの素性に対しても、おそらく同じ印象を持つことだろう。もちろんクルマに触れたり、試乗したりすれば、レベルの高い仕上がりは実感できるはず。フィット、モビリオ、スパイクといった兄弟車に比べても、後から誕生しただけの熟成ぶりを実感できる。タイ生産車に対してイメージアップを図り、興味をどこまで購入意思につなげるかが、販売のカギとなりそうだ。

ところでアリアの真っ向勝負のライバル車にあたるのがトヨタのプラッツ。17ケ月で30万台という、ホンダの最高販売記録を達成したフィットは、02年の年間販売台数でカローラに後塵を浴びせることになるだろう。もし、アリアが好調な販売を見せれば、迎え撃つプラッツが何かしらの対応策をとるはず。ホンダとトヨタの戦いも興味津々だ。

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筆者西沢 ひろみ
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