運転が楽しくて街中でも使いやすく価格はお手頃、今では貴重な趣味性の強い3車を比較チェック(3/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
内装はスポーツカーらしく精悍な印象に仕上げトルセン式LSDなど走りの装備を充実させた
86は後輪駆動を採用した生粋のスポーツカーとあって、内装も精悍な雰囲気。メーターパネルの中央には大径のタコメーターが装着され、シフトチェンジのタイミングも分かりやすい。トランスミッションが水平対向エンジンの後方に直結しているため、運転席と助手席の中央部分が大きく持ち上がったことも特徴。その上には短いATレバーが備わり、6速MTを含めて機敏なシフトチェンジが可能だ。
フロントシートの着座位置は低く、手足を伸ばして運転するスポーツカーの典型的な姿勢になる。シートの形状も、座面やバックレストの左右の張り出しが大きなバケット風だ。しっかりと体をホールドする。
リヤシートは頭上と足元の空間が狭く、実質的に補助席だが、2名乗車時に手荷物を収納できるのは便利。バックレストを倒すとトランクスペースと連結され、サーキット走行のためのタイヤ4本と工具を収納できる。
GTとGTリミテッドになると、走りの装備が充実する。まずはタイヤだが、GとRCに装着される16インチ(205/55R16)のヨコハマ・デシベルE70に対し、GTとGTリミテッドには17インチのミシュラン・プライマシーHPが装着されてコーナリング性能を高めている。
トルセン式LSDも標準装着。コーナリング時にアクセルを踏み込んだ時でも内側に位置する後輪が空転しにくく、車両を確実に前方へ押し出す。後輪の横滑りを誘発した走り方をする時も、LSDが大いに役立つ。
GTリミテッドにはスポーツブレーキパッドも装着され、積極的な走りを楽しめる装備を数多く盛り込んだ。
電動開閉式のハードトップが備わりオープンドライブの爽快感と快適性を両立
ロードスターの内装は、質感に配慮しながら、シンプルで機能的に仕上げた。メーターパネルは、大径のスピード/タコメーターを中央に配置した左右対称のデザイン。インパネ全体が水平基調となり、左下のエアコンスイッチにも手が届きやすい。
試乗したVS(RHT)の全高は1255mm、ソフトトップは1245mmと背が低いので、着座位置もかなり下がった。手足を伸ばして運転するタイプで、いかにもスポーツカーらしい。
シートはバケット風のデザインになり、サポート性は良好だ。リヤシートを装着しない2シーターモデルとあって、2名乗車時の荷物の収納性はいま一歩。それでも左右席中央部の背面には、センターコンソールボックスが備わる。スポーツカーとしては収納設備を充実させた。
試乗車で最も注目すべきはRHT。電動開閉式のハードトップで、閉めた状態ではソフトトップとは異なる快適性が確保される。遮音性が優れ、雨天時でも雨音が車内に入りにくい。セキュリティの面でも安心だ。使い勝手も優れ、開閉に要する時間は約12秒。ハードトップを開閉をする前後に行うロック操作も簡単だ。オープンドライブ時の開放感はソフトトップと変わらない。実用性を求めるならRHT、ロードスターとしての情緒を重視するならソフトトップと選び分ければ良いだろう。
試乗したVS(RHT)はラグジュアリー指向のグレードとあって、ヒーターを内蔵したハバナブラウンの本革シートなどが標準装着される。タイヤは16インチ(205/50R16)のヨコハマ・アドバンA11A。乗り心地にも配慮したサイズになる。
居住性の優れたリヤシートや余裕のある荷室により趣味性の強いクルマでありながら実用性も高めた
ジュークはほかの2車と違って5ドアボディのSUV。趣味性が強く、なおかつ実用性も高めた。
最も注目される点はリヤシート。天井が86やロードスターより250~300mmも高いため、頭上や足元にも十分な余裕があって大人4名が快適に乗車できる。楽しいクルマでありながら、ファミリーカーとしても使える。
荷室はリヤゲートを寝かせたから上側は少し狭まるが、床面積は十分。リヤシートのバックレストを倒せばさらに積載容量が拡大し、使い勝手はティーダなどのコンパクトカーに近い。
優れた実用性を備える一方で、インパネの周辺は趣味性が強い。メーターはモーターサイクルを連想させるシンプルなデザインになる。インパネ中央の下側には「インテリジェント・コントロール・ディスプレイ」を装着。エコ/ノーマル/スポーツの走行モードを選択できる。
エコモードでは無段変速ATのCVTが低燃費指向の変速を行い、ディスプレイもエコドライブを支援する表示になる。スポーツモードを選ぶと、16GT(FOUR)の場合はエンジン回転が高めに維持され、ターボを積極的に働かせてスポーティに走ることが可能だ。
ディスプレイにはターボの作動を示すブースト表示、あるいは車両の前後/横方向のG(加速度)を表示できる。
フロントシートの中央に位置するセンターコンソールの造形もユニーク。ATレバーの手前には、カップホルダーが2つ装着され、容量の大きな収納ボックスも備わる。
以上のようにジュークは、実用性を高めた上で、各部のデザインに個性を持たせた。走行モードの選択機能を設け、運転の楽しさも追求している。
内装・装備の総評
ここで取り上げた3車は、内装や装備に個性が光る。
86は、大径のタコメーターを中央に配置したインパネ、バケットタイプのフロントシートなど、スポーツカーの典型的なデザイン。派手さはなくストイックな雰囲気が漂う。補助席ながらリヤシートが備わるので、荷物を収納したり、休憩を取る時にリクライニングできる余裕があるのは便利だ。
ロードスターの内装は、シンプルなデザインが特徴。その上でVS(RHT)であれば電動開閉式のハードトップが備わり、爽快なオープンドライブと快適なクローズドクーペを気軽に使い分けられる。リヤシートが備わらないことは実用的にはマイナスだが、ボディが短く抑えられて小回り性能は良好。市街地や峠道でもエキサイトできる。
SUVのジュークはリヤシートと荷室を備え、機能は5ドアハッチバックに近い。その上でインパネやセンターコンソールのデザインを個性的に仕上げた。走行状況を示すディスプレイなども備わる。
スポーツドライブに特化した86、街中のオープン走行を含めて幅広いシーンで運転を楽しめるロードスター、斬新なデザインと優れた実用性を融合させたジュークと、各車とも個性豊かだ。
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