スズキ SX4 試乗レポート

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世界に通用するスポーツ・クロスオーバー“SX4”

スイフト、エスクードに続く第三の世界戦略車となる、全く新しいスポーツ・クロスオーバー車---スズキ自らがそう紹介をするのがブランニュー・モデルである『SX4』だ。「全長4m級の、世界に通用するモデルを作りたかった」というところから開発がスタートしたというSX4は、「フィアットとの共同開発」が伝えられるモデルでもある。が、実際にはそのパッケージングやハードウェア開発の大半はスズキ側が担当。フィアットは「自社で販売するモデルのフロントマスクを独自に開発し、ヨーロッパ市場向けに販売が行われるディーゼル・エンジンを供給する程度」というのが現実であるようだ。

ところで、“クロスオーバー”をうたうSX4のエクステリア・デザインは、イタリアの著名なデザイン工房であるイタルデザイン社の協力を得て行われている。社内のマンパワー的問題と、ヨーロッパでの量販を目指す事から現地のテイストも盛り込んでおきたい、といった理由から実現されたというこのコラボレーションが、SX4というクルマを語る上での大きな特徴という事になる。

フロントドアの三角窓は特徴的であり明るく視界も良好

スイフトの兄貴分的な雰囲気を放つ“標準仕様”と、SUVとのクロスオーバー・イメージを強調する“アウトドア仕様”という、2タイプのエクステリア・デザインをバリエーションに揃えるSX4。が、実は開発陣としては「実は後者をより強く推したい」という思いが強いという。ちなみに、全幅は3ナンバー枠へと踏み込み、全高もおよそ1.6mと、多くのタワー式パーキングから締め出されてしまうのがSX4ボディサイズ。が、それも「国際的な競争力を得るために敢えて必要と判断した結果」であるという。

プロポーション上は特に大きな特徴があるとは思えないこのモデルだが、フロントドア前部に固定式の三角窓を備える事や、Dピラーをブラックアウトでヒドン化する代わりにCピラーをボディ色とした点などは、このクルマならではだ。

インテリアでは、見易いメーターや操作ロジックの分かりやすい空調コントロール系が好印象。ただし、前述2タイプのエクステリアに対してこちらは1種類のデザインしか用意をされないし、カラーリングもダークグレー系ひとつのみと選択肢のないのがちょっと残念だ。

軽快感より安定感

日本仕様のSX4に用意をされるエンジンは、スイフトにも搭載される1.5Lと、エスクードから移植をされた2Lという2タイプの4気筒ユニット。トランスミッションは4速ATに限られるが、特に2Lクラスでは5速仕様が当たり前の現在ではやや旧態依然とした印象。海外市場向けには設定のあるMTがオプション扱いでも選べない点にも、いくばくかの人からは不満を抱く声が上がりそうだ。

今回テストを行ったのは1.5LのFWDモデルと2Lの4WDモデル。スペック上はやはり後者が重量当たりの出力で有利な計算となるが、前者でもアクセル開度の比較的少ない領域では、後者に負けない力強さを味わわせてくれた。

車両重量の違いからか、ハンドリングの軽快感は1.5Lモデルの方が高かった。とは言っても、それはスイフトのそれに匹敵するほどという感触ではない。実際、「軽快感よりも安定感」が、SX4の狙いどころだと言う。

ただし、全般にフットワークのしなやかさがスイフトに及ばない感があったのは残念。正直なところ、“走りの感動度”は初めてスイフトに乗った時ほどには至らなかった。

意欲的なスズキの小型車戦略

SX4をスズキの言うようなクロスオーバー・モデルと受け取るためには、やはりそのルックスには“アウトドア仕様”程度の特別な雰囲気が欲しい。が、現状ではそれを叶えてくれるのは1.5Lの『XG』グレードのみ。そもそも、2Lモデルが1グレードのみの設定というのは、やや中途半端な戦略とも感じられる。

一方で、1.5Lの“標準仕様”が販売の中心と想定すると、今度はそこでは「スイフトとの競合」という問題も心配になってくる。SX4がスイフトの顧客を奪う懸念も考えられる。いずれにしても、それはスズキにとって得策ではないだろう。

例えば、SX4が1.7L、あるいは1.8L程度の排気量のエンジンを主役に据えていたとしたら、このモデル全般にかかるイメージ、そしてスイフトとの棲み分けは随分明確になったのではないだろうか。

それにしても、このところのスズキの小型車戦略は意欲的。もはやこのメーカーが生み出す小型車は、決して「軽自動車をベースに幅を拡大しただけの存在」ではないのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

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