スズキ パレット 試乗レポート

  • 筆者: 竹岡 圭
  • カメラマン:島村栄二
スズキ パレット 試乗レポート
フロントスタイリング リアスタイリング フロントビュー リアビュー サイドビュー インパネ フロントシート リア目シート ラゲッジスペース ドアフルオープン シート下収納スペース 画像ギャラリーはこちら

「もっと大きなワゴンRが欲しい」という声から生まれた軽乗用車

ドアフルオープン
フロントスタイリングリアスタイリング

とうとうスズキからビッグサイズ軽マルチワゴンが誕生した。その名はパレット。このカテゴリーはダイハツ・タントが先駆者となるので、チャレンジャーとしての参戦となる。参戦の理由は販売動向もあるだろうが、ユーザーからの「もっと大きなワゴンRが欲しい」という声に応えたものとのことだ。

最大の特徴はボンネット型軽で初めて、後席両側スライドドアを採用したパッケージング。最近のミニバンを見ても、ファミリーユースのクルマを作るならば、もはや両側スライドドアは当たり前。その使い勝手の良さを軽自動車で試みたというワケだが、独自色を出すために、ライバルのタントの左側Bピラーレスのスライドドア×右側ヒンジスイングドアというのに対し、両側ガバッと開くスライドドアを採用したというのが本音のところだろう。このスライドドアのポイントは開口部を580mmと大きく開けたこと。軽自動車では、550mm以上開けるのはかなり困難と言われているにも関わらず、1mm1mmあちこちから寄せ集めてなんとか具現化したのがポイントだ。

確かにこれくらい開けば、後席へのアクセスは十二分である。

室内空間、居住性、スズキの新しい提案とは

インパネ
フロントシートラゲッジスペース

「上げました、下げました、できました!」のCMじゃないけれど、1,735mmの全高に525mmの荷室床面地上高(荷室開口地上高は535mm)と、クラストップの1,365mmの室内高を強調するようなハイルーフデザインが際立つパレット。しかしその分、下半身がドッシリ見えるように工夫されているので、ヒョロヒョロと落ち着かないような雰囲気はない。標準タイプとエアロタイプのエクステリアが用意されているので、好みに合わせて選べるのも魅力だ。

インテリアも標準タイプはベージュ、エアロタイプはブラックと2種類に分かれているが、ピアノブラックのセンタークラスターや、派手になりすぎず上品にまとまるメッキパーツなどを使い、どちらも上質感がうまく表現されている。

またシートも軽自動車にありがちな四角いシートではなく、リビングのソファのように丸みをもたせてあったり、ドアトリムもきちんと窓枠の部分までファブリックを貼り込むなど、ゆったり寛げる工夫が随所にみられるのだ。これは「スズキの軽はチープ」と長年言われてイメージを払拭するために、セルボあたりから取り入れられてきた流れなのだが、これならば年々豪華に装うライバルたちに引けを取る心配は全くいらないだろう。

さらに一番下のグレード以外は、フルオートエアコンやキーレスプッシュスタートシステムやパワースライドドアのクローザー等が標準装備となっているなど装備もかなり豪華。エアロタイプにいたっては全グレードでオートライトまで標準装備されているのだ。

TSグレードになると軽自動車最多の10スピーカーを搭載したハイグレードサウンドシステムまで登場。音の高さに合わせて音の出る領域が分割されているので、耳周りで音に包みこまれているような音楽が楽しめる。またポケッテリアもたくさん用意されているが、助手席アッパーボックスに保冷機能を持たせたなんていうのは新しいところだ。

NAエンジンとターボエンジン、それぞれの乗り味

エンジンエンジン

エンジンはNAと60psを発揮するMターボと呼ばれるマイルドプレッシャーターボが用意されている。それらに4ATが組み合わされている。

上り坂ではスピードとアクセルの踏み込み量で、下り坂ではブレーキと連動して、余計な変速を抑えて最適なギアレンジを選択してくれる登降坂変速制御などが盛り込まれているものの、さすがにこのボディの大きさではNAモデルは街中中心モデルと言わざるをえない。排気量が制限された軽自動車であるからして、やはりスライドドアの重量はかなりキツイようだ。なんたって、普通のドアと比べると約10kg、パワースライドドアにするための電動パーツ類を入れると13~14kg、開口高1230mm、開口幅580mmのドア回りの補強を入れるとどうしても重くなるのは否めないのだ。というワケで、やはりMターボくらいのゆとりが欲しいのは事実。

逆にターボモデルならば、ロングドライブにもラクにお出掛けできる感じだ。また足回りのほうは、ワゴンRの踏襲かと思いきや、実はリアの足回りは新開発。後席や荷室のフロア高を下げるためにローダウン化が図られた足回りは、どうしてもストロークが不足気味になるが、そこは樽型スプリングを採用するなど工夫がなされている。そのおかげで、操腕性的にもリアの落ち着いた、乗り心地的にも不満のないものに仕上がっているのだ。事実後席での突き上げなどはまったく気にならなかった。

また、ハンドリングの利きをしっかりしたものとするため、全車フロントにスタビライザーが採用されているので、背の高さからくるフラつき感を感じることもないと、うまくまとめられている。

人と荷物のことをしっかり考えた新型パレット

試乗イメージ

パレットはあくまでも乗員メインとして開発されたクルマではあるのだが、ラゲッジ開口部の低さを見てみると、かなり荷物も積みやすいクルマに仕上がっている。これは自転車を積みたいというユーザーの声を反映させたもので、夜遅い塾帰りや突然降りだした雨の日に、自転車で出かけたお子様を迎えに行くというシチュエーションを想定したものだ。

ワゴンRと比べると100mm、マルチワゴンの中ではトップレベルで開口部が低いので、自転車はもちろんのこと、広い空間に荷物を積み込むというときにも、非常に使い勝手よく仕上がっている。またこの低さは後席のフロア高にも恩恵をもたらしている。リアステップ地上高は340mmなのだが、この乗降性の良さを生かすため、デザイン的にも工夫がなされているのだ。それは後席ドア下部のライン。デザイナーは当初反対したというが、あえてラインを一段下げるなどして、見た目よりも乗降性のよさが優先されているのだ。

人も荷物も何とも欲張りなパレットではあるが、こうなったらクールなスティングレーバージョンや、スポーティなRRバージョンなどに期待が高まるところ。パレットという名の通り、様々な色合いの展開が登場してくるに違いない。

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竹岡 圭
筆者竹岡 圭

OLを経て、自動車専門誌を皮切りに、モータージャーナリスト活動を開始。国内外のレース、ラリーなど自らモータースポーツ活動に関わりながら、海外のモーターショーを精力的に回るなど、なにごとにも積極的に取り組んできた結果、近年は一般誌、女性誌、Web媒体、新聞、TV、ラジオなど、その活動はとても多彩なジャンルに広がっている。記事一覧を見る

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